CLASSICA JAPAN

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インタビュー

2017 / 05 / 31

映画『ザ・ダンサー』の監督ステファニー・ディ・ジューストと主演のソーコにインタビュー

© 2016 LES PRODUCTIONS DU TRESOR – WILD BUNCH – ORANGE STUDIO – LES FILMS DU FLEUVE – SIRENA FILM

 モダン・ダンスの先駆者の一人、ロイ・フラー(1862~1928)は、幻想的な照明の中、透けて見える長いシルクのドレスで踊る「サーペンタイン・ダンス」で一世を風靡。19世紀末パリの多くの芸術家のミューズとして愛された伝説のダンサーです。
 モダン・ダンスの祖といえばイサドラ・ダンカンが知られますが、そのダンカンを援助したのもフラー。プロデューサーとしても活躍した彼女は、衣装や照明・装置など、舞台技術のその後の発展に多大な貢献をした人物として、ダンスの歴史に名を残します。
 『ザ・ダンサー』は、意外に知られていないロイ・フラーの半生を描いた映画。クラシカ・ジャパンは、この作品で長編デビューを果たしたステファニー・ディ・ジューストと、ロイ・フラーを演じた人気ミュージシャンのソーコ(マドンナのショートフィルム『Her Story』でも話題沸騰!)に、この映画についてお話を伺いました。
 

—なぜロイ・フラーの映画を作ろうと思ったのですか。

ステファニー・ディ・ジュースト(以下、SG):ある日、偶然に1枚の白黒写真と出会いました。写っていたのが、巨大な白い竜巻のような状況で踊る女性。“ベルエポックのイコン”と書いてありました。私は、このシルエットでしか見えない女性が何者なのかに興味を持ち、ロイ・フラーに出会ったのです。
 彼女を調べれば調べるほど、これだけ面白い人生を歩んだ女性がなぜ映画化されていないのかが不思議で、これは自分がやるしかない!と7年かけてこの映画を作りました。
 

—監督は、ロイ・フラーという人物をどのように捉えていますか。

SG:ロイはまず、とても個性的で自由な女性です。
 20世紀初頭まで、女性はまだコルセットをはめて生活していました。女性として生まれると、結婚して家庭を持つ、あるいは結婚できなければ娼婦になるなど、あまり選択肢がなかった。そういう時代にロイは、ダンサーになるような肉体もない、ダンサーになるような環境もない、まさにないものだらけのところから、努力と情熱だけで大西洋をわたり、ダンサーになるのです。
 私は、“ベルエポックのイコン”と讃えられる美の世界を作り上げた彼女の、類まれな力強さと、その反面に持つ繊細さの両面を描きたかった。
 また、彼女はダンサーのみならず、演出家でもあり、本も書き、多くの人間を雇って会社を作った起業家でもあった。当時からすると、かなりアバンギャルドな女性だったと思います。
 

Photo:Masato Seto
Hair&Make up: Naoki Hirayama (Wani)

—ソーコさんにとって「歌う」「演じる」「踊る」とは。

ソーコ(以下、S):私にとって歌は、呼吸する、食事する、寝ると同じくらい、生きていくのに不可欠なものです。音楽を作ることは自分の魂を解放するために絶対に必要なもの。ミュージックビデオも全て自分が作ります。なぜかというと、結局は私の物語なわけで、私がそれを一番わかっているから、私がやるのが一番。そういうマルチな意味では、ロイ・フラーと共通しているかも。
 演じることは、自分自身であることを忘れて誰かになりきる、誰かの人生を生きること。監督に仕えるというところも重要ですね。
 

—ソーコさんは、ロイ・フラーのどのようなところを演技に取り入れていきましたか。

S:いつも夢を持ち、誰もやったことがないことをやってみたい。それを具現化するためには、いかなる努力も厭わない。ロイも私も同じです。彼女はダンサーのみならず、コスチュームを作り、照明もやり、セットも作り、衣装を光らせるための化学の知識も身に付けた。そういう好奇心も私とよく似ています。
 もう一つ共通項があるとすれば、自己破壊的な側面。自分の中の繊細な部分をさらけ出すために、もしくは純粋なものを作り上げるために、アーティストとして、どうしてもなければいけない側面ではないかと思います。
 彼女を演じるまで私になかったところは、ダンサーの部分。今回は本当にダンサーにならなければならなかった。これは苦労しました。ロイが着ている大きな衣装、あれが第二の皮膚となるくらいに馴染まなければならない。あの生地をまとっった時、匂いとか触感とか全部あわせて、彼女がどのように感じたかを体に叩き込まなければなりませんでした。そのためにもの凄くトレーニングを重ねたんですよ。
 フラーは偽物を嫌いました。私も偽物を嫌います。だから踊りの場面は全部自分で踊りました。
 

—監督は、なぜソーコさんを起用したのですか。

SG:ソーコはとてもユニークな存在で、そこにいるだけで独特なフェミニンを醸し出します。長くLAに住んでいますから、フランス人女優というイメージもあまりありません。そういう匂いが全くしない。
 そして彼女のパンク的な要素が欲しかった。彼女は歌手だけではなく演技も確かだし、自分の映像も自分で作る。そういう多面的な部分はロイにも通じるし、ぴったりと思っていました。ソーコが衣装を着た時、やはり私の勘は間違っていなかった、この役を演じるのはもうソーコしかいない!と確信を持ちました。
 

—映画では、マックス・リヒターがリコンポーズした「ヴィヴァルディの四季」がとても威力を発揮していると思います。クラシカ・ジャパンでも、この作品の全曲映像を7月に放送予定です。映画は時代も異なるので、かなりチャレンジングだったのでは。

SG:実はロイ・フラーという人はあまり音楽に興味がない人で、そこが私の唯一、ロイのわからないところ。
 マックスを選んだのは、私自身、音楽が大好きで、父がイタリア人のせいかヴィヴァルディの『四季』は子供の頃から聞いていました。ただ古典的な『四季』では何か物足りないと感じていて、マックス編曲を聞いたときに、もうこれだ!と。ロイの持つエネルギッシュな力強さと4つのダンスに、この『四季』がぴったりハマったんです。その力強さとエネルギーは、まるでリングに向かっていくボクサーのようです。
 
S:ロイの情熱を表す、とても強烈で、しかも美しく詩的な音楽です。練習の間は寝ている時も聴き込みました。数ヶ月前にパリ・オペラ座で、あの曲を使ったバレエ演目(『シーズンズ・カノン』)を観たのですが、筋肉の記憶で、客席で今にも身体が動きそうになったんですよ。

取材・文:石川了(クラシカ・ジャパン編成部)
 

© 2016 LES PRODUCTIONS DU TRESOR – WILD BUNCH – ORANGE STUDIO – LES FILMS DU FLEUVE – SIRENA FILM

<あらすじ>
女優になることを夢見ていたロイは、あるとき偶然舞台で踊り、初めて喝采を浴びる。ロイは、彼女の才能を見抜いたドルセー伯爵の力を借り、パリ・オペラ座で踊る夢を叶えるために一人パリへ旅立つ。ロイのダンスを見たパリの観客は初めての体験に驚き、彼女は一夜にしてスターに。そして遂にパリ・オペラ座から出演オファーが舞い込む。無名だが輝く才能を放つイサドラを共演者に抜擢し、準備を進めるロイ。しかし、そんな彼女に思わぬ試練と裏切りが待っていた…。
 
「ザ・ダンサー」
第69回カンヌ国際映画祭ある視点部門正式出品
第42回セザール賞6部門ノミネート
監督:ステファニー・ディ・ジュースト
出演:ソーコ(「博士と私の危険な関係」)リリー=ローズ・デップ(「Mr.タスク」)ギャスパー・ウリエル(「たかが世界の終わり」)
原題:La Danseuse/2016年/フランス・ベルギー/仏語・英語/108分
配給:コムストック・グループ/配給協力:キノフィルムズ/
6月3日(土)新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座、Bunkamuraル・シネマほか全国公開
公式WEBサイトはコチラ

TEL:045-330-2178 月〜金 9:30〜18:30 祝日は除く
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NEWS
  • 2017.02.14
    2017年2月、3月の一部番組の放送時間変更のお知らせ
    2月19日に初放送を予定しております【ブロムシュテット&P・ゼルキン「ゲヴァントハウス定期演奏会2016」】の番組時間が想定より長いことが判明致しました。そのため、既にお知らせしております2月、3月の放送時間が下記の通り一部変更となります。詳しくはWEBサイトの日別番組表でご確認ください。

    2/19(日)
    ■変更前
    21:00~22:35 ブロムシュテット&P・ゼルキン「ゲヴァントハウス定期演奏会2016」
    22:35~23:05 クラシカ・音楽人〈びと〉「IIJ会長 鈴木幸一~音楽を愛し支える」
    23:05~24:00 ドキュメンタリー「ボリショイ・スタイルを求めて」

    ■変更後
    21:00~22:40 ブロムシュテット&P・ゼルキン「ゲヴァントハウス定期演奏会2016」
    22:40~23:10 クラシカ・音楽人〈びと〉「IIJ会長 鈴木幸一~音楽を愛し支える」
    23:10~24:00 ドキュメンタリー「ボリショイ・スタイルを求めて」

    2/20(月)
    ■変更前
    21:00~22:45 アレクサンダー・エクマンの『ある白鳥の湖』
    22:45~24:20 ブロムシュテット&P・ゼルキン「ゲヴァントハウス定期演奏会2016」
      ↓
    ■変更後
    21:00~22:40 アレクサンダー・エクマンの『ある白鳥の湖』
    22:40~24:20 ブロムシュテット&P・ゼルキン「ゲヴァントハウス定期演奏会2016」

    2/21(火)
    ■変更前
    17:00~18:45 アレクサンダー・エクマンの『ある白鳥の湖』
    18:45~20:20 ブロムシュテット&P・ゼルキン「ゲヴァントハウス定期演奏会2016」
      ↓
    ■変更後
    17:00~18:40 アレクサンダー・エクマンの『ある白鳥の湖』
    18:40~20:20 ブロムシュテット&P・ゼルキン「ゲヴァントハウス定期演奏会2016」

    2/22(水)
    ■変更前
    13:00~14:45 アレクサンダー・エクマンの『ある白鳥の湖』
    14:45~16:20 ブロムシュテット&P・ゼルキン「ゲヴァントハウス定期演奏会2016」
      ↓
    ■変更後
    13:00~14:40 アレクサンダー・エクマンの『ある白鳥の湖』
    14:40~16:20 ブロムシュテット&P・ゼルキン「ゲヴァントハウス定期演奏会2016」

    2/23(木)
    ■変更前
    10:00~11:45 アレクサンダー・エクマンの『ある白鳥の湖』
    11:45~13:20 ブロムシュテット&P・ゼルキン「ゲヴァントハウス定期演奏会2016」
      ↓
    ■変更後
    10:00~11:40 アレクサンダー・エクマンの『ある白鳥の湖』
    11:40~13:20 ブロムシュテット&P・ゼルキン「ゲヴァントハウス定期演奏会2016」

    2/24(金)
    ■変更前
    7:45~9:20 ブロムシュテット&P・ゼルキン「ゲヴァントハウス定期演奏会2016」
    9:20~10:00 ゲルギエフのショスタコーヴィチ「交響曲第9番」
      ↓
    ■変更後
    7:45~9:25 ブロムシュテット&P・ゼルキン「ゲヴァントハウス定期演奏会2016」
    9:25~10:00 ゲルギエフのショスタコーヴィチ「交響曲第9番」

    2/25(土)
    ■変更前
    15:55~17:30 ブロムシュテット&P・ゼルキン「ゲヴァントハウス定期演奏会2016」
    17:30~19:20 ラトル&ロンドン響2016「20世紀フランス音楽の夕べ」
      ↓
    ■変更後
    15:55~17:35 ブロムシュテット&P・ゼルキン「ゲヴァントハウス定期演奏会2016」
    17:35~19:20 ラトル&ロンドン響2016「20世紀フランス音楽の夕べ」

    3/5(日)
    ■変更前
    17:35~19:10 ブロムシュテット&P・ゼルキン「ゲヴァントハウス定期演奏会2016」
    19:10~21:00 ラトル&ロンドン響2016「20世紀フランス音楽の夕べ」
      ↓
    ■変更後
    17:35~19:15 ブロムシュテット&P・ゼルキン「ゲヴァントハウス定期演奏会2016」
    19:15~21:00 ラトル&ロンドン響2016「20世紀フランス音楽の夕べ」
  • 2017.02.14
    番組ガイド内容誤表記のお詫び
    2月号、3月号の番組ガイドの索引におきまして、下記タイトルの番組情報表記に誤りがございました。
    謹んでお詫び申し上げます。

    ラトル&ロンドン響2016「20世紀フランス音楽の夕べ」

    <誤>
    [演目]フランシス・プーランク:二重混声合唱のためのカンタータ『人間の顔』、シャルル・ケクラン:ラドヤード・キップリングの「ジャングル・ブック」を題材にした『レ・バンダール=ログ』(猿のスケルツォ)、ジェルジ・クルターク:厳かな小音楽~ピエール・ブーレーズの90歳の誕生日に(ドイツ初演)、モーリス・ラヴェル:バレエ『ダフニスとクロエ』[指揮]サー・サイモン・ラトル[演奏]ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、ベルリン放送合唱団[合唱指揮]ギース・レーンナールス[収録]2016年2月20日フィルハーモニー(ベルリン)
    ■字幕/約1時間41分

    <正>
    [演目]モーリス・ラヴェル:クープランの墓(プレリュード/フォルラーヌ/メヌエット/リゴドン)、アンリ・デュティユー:ヴァイオリン協奏曲『夢の樹』、モーリス・ドラージュ:4つのインドの詩、アンリ・デュティユー:メタボール、モーリス・ラヴェル:バレエ『ダフニスとクロエ』第2組曲[指揮]サー・サイモン・ラトル[演奏]ロンドン交響楽団、レオニダス・カヴァコス(ヴァイオリン)ジュリア・ブロック(ソプラノ)[収録]2016年1月13日バービカンホール(バービカンセンター内、ロンドン)[映像監督]フランソワ=ルネ・マルタン
    ■ 字幕/約1時間41分
  • 2016.11.10
    放送障害のお詫び
    2016年11月10日(木)10時07分頃、番組宣伝映像におきまして、映像が止まるなど、お見苦しい箇所が御座いましたことをお詫び申し上げます。

    今後ともクラシカ・ジャパンをよろしくお願い申し上げます。
  • 2016.09.30
    10月編成変更のお知らせ
    10月9日(日)21時~放送の BBCプロムス2016「バレンボイム&アルゲリッチ」 において、公演プログラムに変更があり、予定より長いコンサートとなりました。

    そのため、既にお知らせしております10月の編成内容が一部変更となります。

    10月9日(日)~15日(土)、23日(日)の放送スケジュールについては、各日別番組表のページをご確認ください。
  • 2016.04.04
    ザルツブルク・イースター音楽祭2016『オテロ』の公演収録日について
    ザルツブルク・イースター音楽祭2016『オテロ』につきまして、3月27日公演を放送予定でしたが、主催者側の都合により、3月27日には映像収録が行われませんでしたので、クラシカ・ジャパンでは、予定を変更して3月19日プレミエ公演を日本語字幕付きで放送いたします。
  • 2016.03.01
    『スカパー!プレミアムサービス 新規加入キャンペーン』
    3月中にスカパー!プレミアムサービスにて、クラシカ・ジャパンのご視聴をお申込みいただくと、4月、5月の2ヵ月間、各月の月額視聴料が1,000円(税込)になります!
    3月31日(木)のお手続き完了分まで対象となります。今が加入のチャンス!
    詳しくは、スカパー!0120-039-888(受付時間/10:00~20:00年中無休)までお電
    話ください。
  • 2015.10.30
    ホームページをリニューアルしました。
    ホームページをリニューアルし、10月30日に公開いたしました。コラムやアーティスト・インタビュー、クラシックの動画、放送情報などが楽しめるように内容をより分かりやすくし、デザインや構成を見直しております。今後、内容をさらに充実してまいりますので、引き続き、クラシカ・ジャパンをよろしくお願いします。
  • 2015.10.28
    スカパー!プレミアムサービス、プレミアムサービス光でクラシカ・ジャパンをご視聴頂いているお客様へ
    2015年10月26日(月)深夜3時より放送のシリーズ「明日のスターたち」#12はメンテナンスの為、スカパー!プレミアムサービスまたはスカパー!プレミアムサービス光にご加入のお客様はご視聴いただけません。一部の番組表に番組名の記載があり、ご迷惑をおかけしたことをお詫び申し上げます。
  • 2015.10.20
    11月の番組情報を公開いたしました。
    11月の番組表情報と番組表・番組ガイドのebookをUPしました。ぜひご覧ください。
  • 2015.10.07
    番組情報表記変更のお詫び
    2015年9月より放送している「ボリショイ・バレエ1991『ジゼル』」におきまして、番組情報表記に一部誤りがございました。下記の通り変更し、お詫び申し上げます。

    【変更前】
    ヴィクトール・バリキン(アルベルト)

    【変更後】
    アレクセイ・ファジェーチェフ(アルベルト)