2020 / 12 / 08
第25回タワーレコード渋谷店 クラシック担当松下のイチオシ!
みなさまこんにちは。タワーレコード渋谷店の松下です。今月の当欄コラムはスメタナ弦楽四重奏団の『ベートーヴェン:後期弦楽四重奏団』のCDを取り上げたいと思います。録音は1961年から1971年にかけて。スメタナ四重奏団はベートーヴェンの弦楽四重奏曲全集を1976年から1985年にかけてデジタル録音しているので、これは旧録音にあたります。また第12番は1961年録音と1971年の再録音の両方が収録されています。
私が初めて弦楽四重奏曲のLPを購入したのがスメタナ四重奏団によるベートーヴェンの第2番と第4番のカップリングによるものでした。これは1976年にPCM録音されて発売されたLPです。当時小学生だった私は店員さんに薦められたこのLPを購入しました。おそらく発売されて間もない頃で、来日公演を重ねていたスメタナ四重奏団は日本での人気も高く、しかも同時期にリリースされたスメタナ作曲の弦楽四重奏曲のLPがレコード・アカデミー賞を受賞したということもあって、手の届きやすいものであったのかも知れません。
小学生の私は、弦楽四重奏曲というものについて、ましてやスメタナ四重奏団についてほとんど知識がないままこのLPを夢中になって聴きました。冒頭の流麗な装飾音が印象的な明るい第2番に対して、ハ短調のシリアスな雰囲気の第4番。私はすぐにこの2曲が大好きになりました。そしてスメタナ四重奏団が私の中で大切なクァルテットになっていったのです。
今回スメタナ四重奏団によるベートーヴェンの後期弦楽四重奏曲がSACDハイブリッド盤でリリースされました。そして2020年、メモリアルイヤーの最後にベートーヴェンの弦楽四重奏曲に向き合うことにしたのです。特に後期弦楽四重奏曲は、最晩年のベートーヴェンのすべてが映し出されているだけあって個人的には正直近寄り難いもの。つまり理解するためには真正面に向き合うべきもの、というふうに感じられて、ベートーヴェンの作品の中でも距離を置いているものでありました。今回スメタナ四重奏団の録音を聴き直すにあたりスコアを片手に聴きこみ、作品と演奏の素晴らしさを実感することができました。
スメタナ四重奏団の演奏は決して色褪せることなく、瑞々しさを失いません。演奏、録音に際しては自己研鑽の姿勢を崩さず、暗譜で演奏するほど作品への探求とアンサンブルを磨き上げていることが彼らの演奏から容易に感じ取ることができます。第13番は「大フーガ」を組み入れた原典版での録音で、ベートーヴェンが新たに作曲したフィナーレが最後に登場します。「大フーガ」は高音質になったこともあり、4つの楽器がまるで生き物が激しく蠢くかのように聴き手に迫ってきます。
近年才能豊かな若いアンサンブルが次々と出てきてCDのコーナーにも変化が表れてきていますが、スメタナ四重奏団の演奏はいつもでも1人でも多くのリスナーに聴き続かれていって欲しいと願っております。
『ベートーヴェン:後期弦楽四重奏曲集<タワーレコード限定>』
収録曲:ベートーヴェン弦楽四重奏曲第12番〜第16番(1965-71年アナログ録音)、弦楽四重奏曲第12番(1961年録音)
演奏:スメタナ四重奏団
規格品番:TWSA1085
レーベル:OLUMBIA X TOWER RECORDS/The Valued Collection Platinum
https://tower.jp/item/5117897
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タワーレコード渋谷店 クラシカルチーフ 松下健司
佼成学園高等学校、獨協大学外国語学部ドイツ語学科卒業。1998年タワーレコード入社。 渋谷店をはじめ複数の店舗でクラシック担当を歴任。大学時代はバッハ研究のゼミに所属、趣味でピアノも弾きます。好きな作曲家はバッハ、ベートーヴェン、ショパン。好きなピアニストはラザール・ベルマン。