2021 / 01 / 07
第26回タワーレコード渋谷店 クラシック担当松下のイチオシ!
みなさまこんにちは。タワーレコード渋谷店の松下です。2021年もどうぞよろしくお願いいたします。今月の当欄コラムでは、ヘルベルト・ケーゲル指揮の『モーツァルト:ミサ曲集』のCDを取り上げたいと思います。これは1983年から1988年にかけてデジタル録音された3枚のCDをセット化したものです。もともと当時のPHILIPSレーベルが、1991年のモーツァルト没後200年に向けて進めていた作品全集録音のために行われたものでした。指揮者のヘルベルト・ケーゲルは、1973年から亡くなる2年前の1988年まで、PHILISでモーツァルトのミサの録音を行っていました。
1920年、ドレスデン生まれのケーゲルは、その活動のほとんどを旧東ドイツで行っていました。ケーゲルの真価が大きく評価されたのはむしろ亡くなった後からで、例えば1984年に録音された幻想交響曲は非常に重厚で個性的なアプローチで、ケーゲルの名盤としてよく知られています。ところが今回ご紹介するモーツァルトのミサの録音はほぼ同時期の録音ですが、オーケストラ、合唱、そして独唱が理想的なバランスで融合されていて、モーツァルトの百科全書を後世に伝えるという制作意図に見事に合致したものとなっているのです。幻想交響曲で見せたケーゲルの非凡な才能は表面的なところではなく、むしろ演奏の土台をはじめとした内面的なところで遺憾なく発揮されて、とても充実した演奏に仕上げられています。
モーツァルトのミサ曲はそのほとんどがザルツブルク時代に作曲されていて、このCDでは最も若い時のもので12歳の時に作曲されたミサを聴くことができます。今、こうして聴いてみるととても12歳の少年による作品とは思えないほどの見事さで、天才と呼ばれる所以を改めて感じずにはいられません。複雑な声部の絡み具合など、対位法好きの私も瞬く間にこの作品を大好きになりました。ケーゲルの演奏も作品の姿を理想的なフォルムで表していて、エディット・マティス(S)をはじめとする秀逸な独唱も見事です。若きモーツァルトの才能と、20世紀東ドイツの名指揮者の至芸を存分に堪能できる素晴らしいアルバムです。ぜひ1人でも多くの方に聴いていただきたいと思います。
『モーツァルト:ミサ曲集(7曲)<タワーレコード限定>』
ライプツィヒ放送合唱団(合唱指揮:イェルク=ペーター・ヴァイクル)
ドレスデン・フィルハーモニー管弦楽団(1、2)
ライプツィヒ放送交響楽団(3-6)
ヘルベルト・ケーゲル(指揮)
規格品番:PROC-2311
レーベル:TOWER RECORDS UNIVERSAL VINTAGE COLLECTION
https://tower.jp/item/5127172/
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タワーレコード渋谷店 クラシカルチーフ 松下健司
佼成学園高等学校、獨協大学外国語学部ドイツ語学科卒業。1998年タワーレコード入社。 渋谷店をはじめ複数の店舗でクラシック担当を歴任。大学時代はバッハ研究のゼミに所属、趣味でピアノも弾きます。好きな作曲家はバッハ、ベートーヴェン、ショパン。好きなピアニストはラザール・ベルマン。