2018 / 06 / 05
ウィーン国立バレエ団『ヌレエフ・ガラ』『海賊』
(2018年5月9日、12日 オーチャードホール)
【レビュー】
バレエ団の実力、魅力を余すところなく披露した2演目
マニュエル・ルグリが芸術監督を務めるウィーン国立バレエ団、日本上演が待ち望まれていたルグリ振付の『海賊』とカンパニー最強の演目『ヌレエフ・ガラ』を引っさげ待望の来日公演を行った。

『ヌレエフ・ガラ』より「シルヴィア」。左からイリーナ・ツィンバル、マニュエル・ルグリ
©Wiener Staatsballett/ Ashley Taylor
『ヌレエフ・ガラ』では、前半がモダン・バレエ、コンテンポラリーをなんと12作品、後半は「ヌレエフ・セレブレーション」と題し、ヌレエフ振付の『くるみ割り人形』『ライモンダ』『白鳥の湖』からパ・ド・ドゥ、ヴァリエーション、ディヴェルティスマンをたっぷりと上演。前半は、全幕で見てみたいと思わせるファン・マーネン、エイフマンなど個性ある振付家の作品が光った。また木本全優、オルガ・エシナ、マリヤ・ヤコヴレワといったダンサーの輝きが際立っていた。なによりもルグリが『ランデヴー』『シルヴィア』の2作品に出演し、圧倒的な存在感を示した。

『海賊』よりキミン・キム
©Hidemi Seto
ルグリ版『海賊』ではソロ、群舞ともにダンス・シーンが多く、冒険活劇というよりはファンタジックな物語に仕上がっていた。2日の公演では今回唯一のゲスト・ダンサー、マリインスキー・バレエのプリンシパル、キミン・キムがコンラッド役で登場した。彼のダイナミックなジャンプに会場はどよめきが起こり、女性のサポートも完璧で旬の勢いを感じさせた。ビルバント役の木本全優が大健闘、キム相手の戦闘シーンほか、多くの見せ場を作り、物語を盛り上げた。(結城美穂子)