2018 / 07 / 26
戦下のロンドンでの愛の奇跡 ― マシュー・ボーンの『シンデレラ』がこの10月にやってくる

Photo by Johan Persson

シンデレラとハリー Photo by Johan Persson
古典バレエを大胆に読み換えることにより、作品に新たな命を吹き込む大人気の演出・振付家マシュー・ボーン。彼が1997年に発表した『シンデレラ』が日本で上演される。
なんといっても彼の名を一躍有名にしたのは、スワンが全員男性という『白鳥の湖』(1995年)。他の古典バレエ作品でも、孤児院を舞台にした『くるみ割り人形』(1992年)、目覚めたら現代──ゴシック・ロマンなダーク・ファンジー仕立ての『眠れる森の美女』、と見事に作品ごとに世界観をガラリと変えている。

天使がシンデレラを導く Photo by Johan Persson
『シンデレラ』では、舞台を第二次世界大戦中の1940年「ロンドン大空襲」に設定。「ロンドン大空襲」は1940年9月に始まる。この年の5月には映画『ダンケルク』(クリストファー・ノーラン監督)で描かれた「ダンケルクの戦い」があり、イギリスはナチス・ドイツの猛攻撃に耐える日々が続いていた。音楽を作ったプロコフィエフは1941年に『シンデレラ』の作曲を始める。ソ連でも独ソ戦が勃発し、プロコフィエフはオペラ『戦争と平和』、「戦時の三大ソナタ」(『ピアノ・ソナタ』第6番・第7番・第8番)と戦争を意識した作品を先に発表、『シンデレラ』は1944年に完成し、戦後間もない1945年11月にバレエ『シンデレラ』がボリショイ劇場で初演された。ボーンはプロコフィエフの作曲時期を意識して時代設定したという。

ニューアドヴェンチャーズのダイナミックなダンスも見どころ Photo by Johan Persson
大空襲の中で、物語がどう表現されるのかが見どころだろう。王子は負傷した空軍パイロット、宮廷の舞踏会は「カフェ・ド・パリ」というナイトクラブのパーティ(パーティの夜、空襲に遭い爆破される)、ガラスの靴は輝くハイヒールになっている。パリ・オペラ座の芸術監督であったルドルフ・ヌレエフは『シンデレラ』を1930年代のハリウッドを舞台に設定し、映画スターと、スターを夢見る少女の物語に仕上げた。ボーン版では、明日をも知れぬ戦時下だからこそ、シンデレラの物語は愛の奇跡としてより一層心に響く感動を呼ぶに違いない。
(結城美穂子)
【公演情報】
マシュー・ボーンの『シンデレラ』
<会場>
東急シアターオーブ
<日程>
2018年
10月3日(水)18:30開演
10月4日(木)13:30開演/18:30開演
10月5日(金)13:30開演
10月6日(土)12:30開演/17:30開演
10月7日(日)12:30開演/17:30開演
10月9日(火)13:30開演
10月10日(水)13:30開演/18:30開演
10月11日(木)13:30開演
10月12日(金)13:30開演
10月13日(土)12:30開演/17:30開演
10月14日(日)12:30開演
<主な出演予定キャスト>
シンデレラ:アシュリー・ショー/コーデリア・ブレイスウェイト
ハリー(パイロット):アンドリュー・マナガン/エドウィン・レイ
天使:リアム・ムーア/パリス・フィッツパトリック
継母:マドレーヌ・ブレナン/アンジャリ・メーラ
ニュー・アドベンチャーズ
<公式サイト>
http://mbcinderella.com/
【BS-TBSで特別番組が放送決定!】
10月に待望の初来日が決定! マシュー・ボーンの『シンデレラ』
その魅力を2回に渡りお届けする特別番組の放送が決定。ピアニスト清塚信也がナビゲーターを務め、8月に行われる中国公演に潜入!カンパニーの裏側や、作品の魅力を独自の視点でお届けします。
<番組出演>
ニュー・アドベンチャーズ、 清塚信也(ピアニスト)、 首藤康之(ダンサー)、平原綾香(歌手)、大貫勇輔(ダンサー・俳優) 他
<放送日時>(予定)
BS-TBS
8月26日(日)11:00~11:30
9月22日(土)13:30~14:00