2018 / 08 / 02
フィリップ・ドゥクフレ/ カンパニーDCA『新作短編集(2017)-Nouvelles Pièces Courtes』2018年6月29日~7月1日 彩の国さいたま芸術劇場 大ホール

©Arnold Groesche
期待以上、ドゥクフレ・マジック全開のワンダーランド

©Arnold Groesche
短編5作を休憩なしで一気に上演。それぞれテーマや音楽、衣裳は異なるが、唯一無二、誰にも真似できないドゥクフレのクリエイションゆえ、1つの作品を見たような気持ちになった。また、今回ドゥクフレ本人が踊るシーンがあり、鮮やかな印象を残した。
ステージ上で踊るダンサーが、ステージの上部に映像で映し出されることが多々あった。映像とステージ・パフォーマンスはシンクロではなく、少し時差があることで重層的な厚みが生じたり、今回も影が効果的に使われていたり、ワイヤーアクションも健在、と、めくるめくイリュージョンに幻惑されっぱなし。

©Arnold Groesche
3演目の『ヴィヴァルディ』は、コミカルなのかシリアスなのかわからない不思議な作品。振付は、初めはシンプル。フレーズを意識した振付は、バロック音楽のビジュアル化に成功していて楽しかった。衣裳があまりにも奇抜で面食らったが、それこそがドゥクフレなのだ。
最後となる5演目の『日本への旅』は、それまでとは趣が変わり、日本へのオマージュとなっていた。ドゥクフレの日本通はあまりにも有名だが、お土産に買ったものを延々と言い続けたり(さまざまな種類のマスキングテープなどステレオタイプでない物が出てきて興味深い)、山手線の発車音、テレビニュースの天気予報の日本地図の画面など、ドゥクフレが目にした「不思議の国日本」が散りばめられていた。とてもパーソナルな作品に仕上がっていて、最後はボサノヴァが流れ、軽やかに、あくまでおしゃれに幕を閉じたのもドゥクフレらしい。
現代の魔術師は、健在であることを証明。次作が待ち望まれる。
(結城美穂子)