2018 / 11 / 09
最終回【タワーレコード渋谷店 クラシック担当・雨海のイチオシ!】
皆様こんにちは。タワーレコード渋谷店クラシック担当・雨海です。第11回目のイチオシ!へようこそ。
今回は、前橋汀子さんのヴァイオリン、クリストフ・エッシェンバッハのピアノによるベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ第9番「クロイツェル」と第5番「春」を紹介します。日本経済新聞の連載コラム「私の履歴書」の2018年10月は前橋さんが書かれていました。記事で演奏に興味を持った方がいらっしゃるかもしれないと思い、このCDを紹介します。
このCDの特徴は規模の大きな作品「クロイツェル」、そして「春」という順で収録されていることだと思います。この「春」は「クロイツェル」以上にドラマチックに奏でられます。前橋さんの、ヴィブラートをしっかりかけてロマンティックに歌う音楽は、スマートさが目立つ最近の演奏にはないものです。ベートーヴェンに真正面から対峙して潔さを感じます。そして、エッシェンバッハのピアノがヴァイオリンに寄り添い、時にヴァイオリン以上に主張する素晴らしい音楽です。時に立ち止まって、息苦しいくらいの緊張と解放を表現して、暗い情念を紡いでいきます。歓びに満ちているはずの「春」でさえも、前橋さんの芸術と合致した瞬間は、音楽の闇を見せつけるようです。
ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタは名ヴァイオリニストによる名盤が目白押しです。その中で、音楽への没入を一番深く感じたのはこの前橋さんの演奏でした。特に「クロイツェル」のアンダンテは、じっくり時間をかけて情感を表現しています。いつもBGM として聴けるようなCDではありません。聴く方も良い意味で覚悟が必要な緊張感が漂います。
このコラムは今回で最終回となります。これまで紹介したCDはタワーレコード店頭に限らず、オンラインショップでも入手できるものばかりです。CDを実際に手に取ってもらえたらこれ以上の喜びはありません。お読み下さった皆様、誠にありがとうございました!
【CD情報】
ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ 第9番「クロイツェル」&第5番「春」
アーティスト:前橋汀子、クリストフ・エッシェンバッハ
発売:2016/09/21
規格品番:SICC-2097
レーベル:Sony Classical
1,080円
https://tower.jp/item/4300653/ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ-第9番「クロイツェル」&第5番「春」<期間生産限定盤>
タワーレコード渋谷店 クラシック担当 雨海秀和
神奈川県立希望ヶ丘高校、青山学院大学経営学部卒業。2004年よりタワーレコード渋谷店で勤務。オペラ・映像コーナーを担当。指揮者クラウディオ・アバドの大ファン。今は指揮者アダム・フィッシャー、山田和樹に注目。好きな曲はメンデルスゾーン「スコットランド」。