2019 / 07 / 18
かがり火の前で繰り広げられる古典芸能と創作舞の競演「小金井薪能」が今年も8月25日に小金井公園で開催

前列左より、大前光市(ダンサー)、津村禮次郎(能楽師シテ方観世流)、山本則俊(狂言方大蔵流)、森山開次(ダンサー・振付家)、後列左より、澤村祐司(箏奏者)、渋谷牧人(作曲家)、藤崎コウイチ(衣装)、多井智紀(チェロ奏者)
昭和54年、東京・小金井市在住の能楽師・津村禮次郎と作家・林望の発案により、「小金井薪能」がスタートした。薪能と言えば、関西では平安神宮の京都薪能、関東では鎌倉宮の鎌倉薪能がよく知られているが、この小金井薪能は100%市民ボランティアによる運営で、会場は都立小金井公園という地域密着の薪能としても注目されている。また、本格的な能や狂言だけに留まらず、オリジナルの創作舞を楽しめることでも人気が高い。8月25日(日)に行われる公演に先駆け、セルリアンタワー能楽堂で記者会見が行われた。
取材・文:井手朋子(クラシカ・ジャパン編成部)
「第41回 小金井薪能」の見どころ

記者発表会場に置かれた歴代の公演ポスター
会見は、盲目の箏奏者・澤村祐司の厳かな箏の演奏からスタート。黒田百樹 小金井薪能会長からこれまでの経緯や概要が語られたのち、主宰者の1人である津村禮次郎が挨拶。「大がかりに行った昨年の第40回を経て、今年は令和元年ということもあり、気持ちも新たに第1回目という意気込みで取り組ませていただいている」と話した。
今年は牛若丸と弁慶の最初の出会いを描いた能「橋弁慶」、人間の心理の裏表を鋭く描く狂言「月見座頭」、宮沢賢治の作品集を原作とした創作舞「雨ニモマケズ」の3本立てで行われる。森山開次が演出・振付を担当する「雨ニモマケズ」には、森山のほか、義足のダンサー・大前光市と津村が出演するが、企画を発案したのは津村だという。もともと仙台や福島をはじめとした東北と縁があり、毎月のように訪れる中で宮沢賢治の作品を何かしら形にできないかという思いを長い間温めてきたという津村。今回その思いを形にすべく、賢治の作品集の中からいくつかの題材をピックアップし、現代に訴えかける作品に仕上げる。
演出を任された森山は「宮沢賢治の何を切り取るべきか、どの作品のどの言葉を切り取るか悩みどころだが、今というこの時代における自分の感覚と皆さんの感覚を合わせながら、宇宙に散らばったさまざまな事象の石を拾うように新しい作品を作りたい」と話した。「雨ニモマケズ」を主軸に持っていきながら、今回は東北の伝統芸能である鬼剣舞の要素も入れ、鬼剣舞と賢治を「雨ニモマケズ」につなげていく予定だという。共演する大前は、「尊敬するダンサーの1人である森山さんの世界観を表現できることはとても光栄」と話した。
狂言「月見座頭」に出演する山本則俊は、「月見座頭」について「私の家では非常に大切にしている作品。昔、祖父がNHKのラジオで演じて欲しいと依頼されたが、寝ているようなやつがいるかもしれないからと断った。すると天皇陛下もお聞きになっていらっしゃいますと言われ、そこで初めて出演を決めたほどの大切な演目」とコメント。趣の違う3つの舞が、かがり火の幻想的な雰囲気のもと、繰り広げられる。
出演者たちの熱い意気込みを、ぜひ動画でご確認いただきたい。
小金井薪能
https://ja-jp.facebook.com/koganeitakiginou/
日時:2019年8月25日(日)17:30
会場:東京都 都立小金井公園 江戸東京たてもの園前
※雨天時は中央大学附属高等学校講堂にて開催
能 「橋弁慶」
出演:津村禮次郎、青山昂生、川口晃平、山本則秀、山本則重
狂言 「月見座頭」
出演:山本東次郎、山本則俊
創作舞 「雨ニモマケズ」
原作:宮沢賢治
振付演出:森山開次
監修:津村禮次郎
舞人:森山開次、大前光市、津村禮次郎