2019 / 10 / 31
第31回高松宮殿下記念世界文化賞 音楽部門はアンネ=ゾフィー・ムターが受賞~記者懇談会にて抱負を語る

ズービン・メータと サントリーホール30周年記念ガラ・コンサート 2016年
提供:サントリーホール
With Zubin Mehta for the 30th anniversary gala concert of Suntory Hall, 2016
Courtesy of Suntory Hall
世界の優れた芸術家に贈られる「高松宮殿下記念世界文化賞」の第31回受賞者が決定した。音楽部門を受賞したのは、これまでに1,000万枚以上のCDを売り上げ、グラミー賞に4度輝いた“ヴァイオリンの女王”ことアンネ=ゾフィー・ムター。デビューから40年以上経った今もレパートリーを開拓し続ける姿勢、そして自身の名を冠したアンネ=ゾフィー・ムター財団での慈善活動も評価されての受賞となった。受賞を記念して、10月16日にムター本人が来日。授賞式典を前に記者懇談会が行われた。
取材・文:井手朋子(クラシカ・ジャパン編成部)
レパートリーの充実とムター財団の取り組み
芸術の中でもこれだけ多くのカテゴリに賞が与えられるのは稀で、世界文化賞に対して非常に素晴らしい賞であるという認識を持っていたというムター。懇談会の冒頭で「他界されたバーンスタインをはじめ、アルゲリッチなどと名を連ねられるということは非常に光栄でもあり、ワクワクすること」と受賞の喜びを語った。80年代にカラヤンとともに来日して以来、日本という国に恋をしてしまったというムターは、その理由を「聴衆の皆さんがクラシック音楽に対して抱く愛情と理解、それが本当に素晴らしい」と話す。最後に来日したのは昨年2018年の12月。サントリーホールで行われた「ドイツ・グラモフォン創立120周年 Special Gala Concert」で気心の知れた小澤征爾と共演したが、またすぐ来年2020年2月にもサントリーホールでのベートーヴェン生誕250周年記念コンサートが控えている。

懇談会で記者の質問に答えるムター

『アクロス・ザ・スターズ ~ジョン・ウィリアムズ傑作選』
アンネ=ゾフィー・ムター(ヴァイオリン)、ジョン・ウィリアムズ(指揮)
発売日:2019年8月30日
品番:UCCG-1854
懇談会では、彼女自身のレパートリーのこと、ムター財団のことについても話が及んだ。ムターは以前から、積極的にジョン・ウィリアムズをはじめとしたクラシック以外の楽曲も演奏しているが、それについて「70年代の終わりから、個人的にずっとジョン・ウィリアムズのファンでした。彼の代表作である16の作品をヴァイオリン用に編曲してもらったことは、私にとって人生の大きなギフトです。彼の音楽を演奏するということは、ヴァイオリンという楽器がいかにエキサイティングであるかを知っていただくチャンスであり、普段とは異なる分野の聴衆の方たちとお会いするとても貴重なチャンスでもあります」とコメント。将来的には、ジャズ・クラブのように客席と近い距離で演奏したり、野外コンサートなども考えていると話した。
ムター財団については「必要な方たちのために楽器を購入するほか、財団が最も重要としているサポートの1つに、現代の作曲家に音楽を委嘱し、その現代音楽を若い世代の音楽家たちが弾くということを挙げています」と話した。また、現在はアーティストが自立して音楽活動をするための支援を行っているが、ゆくゆくは世界中のエージェントやレコードレーベルの前でオーディションができるようにしていくことも目標に掲げた。ムター本人に教わりたければ、財団のホームページから自分の演奏音源を送り、オーディションを受けることも可能だという。
今回は約24時間というわずかな日本滞在となったムターだが、会の終わりには「ヴァイオリン以外では、自然に触れることや読書、映画観賞が好き。ステージを離れれば普通の女性と何ひとつ変わりません。明日の朝はホテルの周りでも散歩して帰りたいわ」とリラックスした表情で語った。
クラシカ・ジャパンでは、この秋アンネ=ゾフィー・ムターのドキュメンタリー番組を放送いたします。ぜひご覧ください。
ドキュメンタリー「アンネ=ゾフィー・ムターという生き方」
https://www.classica-jp.com/program/detail.php?classica_id=CU1714
初回放送: 11月19日(火)21:00~
リピート: 11月20日(水)17:00~
11月21日(木)14:00~
11月22日(金)10:00~
11月23日(土・祝) 06:00~
11月24日(日)22:40~
11月25日(月)25:00~
11月26日(火)29:00~
【アンネ=ゾフィー・ムター出演公演情報】
サントリーホール スペシャルステージ2020 アンネ=ゾフィー・ムター ~ベートーヴェン生誕250周年記念~
日時:2020年2月20日(木)19:00/22日(土)16:00/24日(月・祝)14:00
会場:サントリーホール 大ホール
第37回名古屋クラシックフェスティバル
日時:2020年2月23日(日・祝)17:00
会場:愛知県芸術劇場 コンサートホール
【第31回高松宮殿下記念世界文化賞 受賞者概要】
■絵画部門=ウィリアム・ケントリッジ(南アフリカ)
■彫刻部門=モナ・ハトゥム(レバノン)
■建築部門=トッド・ウィリアムズ&ビリー・ツィン(アメリカ)
■音楽部門=アンネ=ゾフィー・ムター(ドイツ)
■演劇・映像部門=坂東玉三郎(日本)
■若手芸術家奨励制度対象団体=デモス(フィルハーモニー・ド・パリ)