2019 / 09 / 27
ジャルスキーが歌うバロック・オペラの世界
≪おススメコンサート≫
クラシカ・ジャパンが自信をもっておすすめするコンサート。
2019年9月放送のラインナップから、今回は「ジャルスキーが歌うバロック・オペラの世界 」をご紹介します。
イタリア・バロックの知られざる巨匠カルダーラのアリアが現代に甦る!
目の覚めるような技巧で聴衆を唸らせるカウンターテナーのスーパースター。
人気・実力ともに世界のトップを疾走するカウンターテナーのフィリップ・ジャルスキー。確かな歌唱技術と豊かな音楽性は、古楽の枠を超えて世界中の聴衆を魅了しています。
声やテクニックだけでなく、失われたレパートリーや知られざる名曲を発掘・紹介する熱心な姿勢も彼の大きな魅力。
この番組は、ジャルスキーがイタリア・バロックの作曲家アントニオ・カルダーラ(1670頃~1736)のオペラ・アリアを歌ったコンサートです。
カルダーラは、アントニオ・ヴィヴァルディ(1678年生まれ)やヨハン・セバスティアン・バッハ(1685年生まれ)より少し年長のイタリア・バロックの作曲家です。
ヴェネツィアのサン・マルコ聖堂の聖歌隊員として少年時代を過ごした後、マントヴァやローマの貴族の楽長として活動し、40歳代半ば頃から終生、ウィーンのカール6世の宮廷の副楽長を務めました。約80曲のオペラや、300曲のカンタータ、100曲以上のミサ曲など、声楽曲だけでも3,400曲もの膨大な作品を残したと言われています。
ここでジャルスキーが歌っているのは、現代には存在しないカストラートたちが歌っていたオペラ・アリアの数々。
少年時代に去勢して声帯の成長を止めるカストラートたちは、言ってみれば十代そこそこで人生を声楽家としての成功に賭けるわけですから、そのトレーニングは想像を絶するものだったと伝えられています。
成人男性の体躯に少年の声帯という特殊な身体的特徴から得られる強く高い声だけではなく、そうした鍛錬の積み重ねによって、常人では考えられない超絶技巧を身につけて、聴衆を熱狂させていたのです。

(c)Simon Fowler licensed to Virgin Classics
当時のカストラートもかくやと思わせるのが、ジャルスキーの圧巻の歌唱
自在なブレスコントロールと目の覚めるようなアジリタ(コロラトゥーラ)の技巧で、カストラートの至芸のために書かれた超絶技巧アリアを甦らせます。
ジャルスキーは1978年フランスのメゾン=ラフィット出身。ヴェルサイユ地方国立音楽院でヴァイオリンを専攻しましたが、1996年に声楽に転向するとすぐに頭角をあらわし、音楽院在学中の1999年にはジェラーヌ・レーヌの指揮で鮮烈なオペラ・デビューを飾りました。
2004年には優れた新人歌手としてヴィクトワール・ドゥ・ラ・ミュージック音楽賞受賞、2009年にはフランス芸術文化勲章シュヴァリエを受章するなど、瞬く間にスターダムに駆け上がっています。
透明で伸びやかなメゾ・ソプラノの高音と驚異的な技巧を併せ持つ、これまでにいなかった新しい魅力を放つカウンターテナーです。
[演目]アントニオ・カルダーラ:アリア「Contrasto assai pi? degno」(歌劇『テミストークレ』より)/レチタティーヴォ「私はファビオ?」アリア「Troppo ? insoffribile」(歌劇『独裁官ルーチョ・パピリオ』より』、ジョヴァンニ・バッティスタ・サンマルティーニ:シンフォニア イ長調第3楽章「プレスト・アッサイ」、アントニオ・カルダーラ:アリア「Non tremar vassallo indegno」(歌劇『テミストークレ』より)/アリア「Tutto fa nocchiero」(歌劇『オーリードのイフィゲニア』より)、アントニオ・ヴィヴァルディ:チェロ協奏曲ニ短調RV.407~第3楽章「アレグロ」、アントニオ・カルダーラ:アリア「Misero pargoletto」(歌劇『デモフォーンテ』より)/アリア「Lo seguitai felice」(歌劇『オリンピアーデ』より)/アリア「Vado, o sposa」(歌劇『エノーネ』より)/アリア「O mi rendi il mio bel ch’io spero」(歌劇『スペインのシピオーネ』より)ニコラ・ポルポラ:アリア「いと高きジョーヴェ」(歌劇『ポリフェーモ』より)、アントニオ・カルダーラ:アリア「Se un core annodi」(歌劇『シーロのアキレス』より)[カウンターテナー]フィリップ・ジャルスキー
[演奏]コンチェルト・ケルン、ヴェルナー・マツケ(チェロ)[収録]2010年プリンツレーゲンテン劇場(ミュンヘン)[映像監督]クラウス・ヴィシュマン
■字幕/1時間5分
初回放送日:9月29日