2019 / 12 / 16
ミラノ・スカラ座「クリスマス・コンサート」2018
≪おススメコンサート≫
クラシカ・ジャパンが自信をもっておすすめするコンサート。
2019年12月放送のラインナップから今回は、ミラノ・スカラ座「クリスマス・コンサート」2018をご紹介します。
ミラノの聖夜を彩るスカラ座のクリスマス・コンサート。古楽系指揮者とのレアな顔合わせで、王道の戴冠ミサ、そしてヴィヴァルディの宗教曲も聴きもの!
12月7日はミラノの守護聖人サンタンブロージョの日(聖アンブロジウスの日)。
オペラ・ファンにとっては、毎年この日はスカラ座の新シーズン開幕日ですが、それと同時にミラノの街はクリスマス・ムードに包まれます。街中が華やかなイルミネーションに彩られるミラノのクリスマスのロマンティックな美しさは格別です。
この季節のコンサート・シーンで恒例となっているのが、ミラノ・スカラ座管弦楽団と合唱団によるクリスマス・コンサートです。
番組では2018年のコンサートの模様をお届けします。
このコンサート、2017年、2018年と、プログラムに少し変化が見られます。というのは、これまでおおむね、世界のオーケストラや歌劇場で活躍する注目指揮者たちが合唱付きの大曲を演奏することが多く、たとえばクスターボ・ドゥダメルのマーラー『復活』(2011)、ダニエル・ハーディングのメンデルスゾーン『エリヤ』(2013)、フィリップ・ジョルダンのベートーヴェン『ミサ・ソレムニス』(2014)、クリストフ・フォン・ドホナーニの『第九』(2016)といった具合でした。
それが、2017年には古楽合奏団イル・ジャルディーノ・アルモニコの音楽監督として活躍するジョヴァンニ・アントニーニが『ミサ曲ハ短調K.427』をメインとするオール・モーツァルト・プログラムで登場。
そしてご覧いただく2018年も、同じく古楽集団イ・バロッキスティの指揮者でオルガニストのディエゴ・ファソリスが、イ・バロッキスティの十八番のレパートリーであるヴィヴァルディ、そしてモーツァルトを指揮しています。
ちなみに2019年はジョン・エリオット・ガーディナーが登場して、エクトル・ベルリオーズのオラトリオ『キリストの幼時』を指揮。今後もこの路線をつづけるのかどうかはわかりませんが、古楽の指揮者たちと、濃密で豊穣な響きが魅力のスカラ座のオーケストラ・合唱団の顔合わせというのは、かなり興味深いマッチングです。

photo Brescia and Amisano (c) Teatro alla Scala
古楽の味わいのあるアンコールの『きよしこの夜』を、客席がうっとりと聴き入っている姿も印象的
ヴィヴァルディといえば、まずは『四季』をはじめとするおびただしい数の協奏曲が思い浮かびます。
一方で近年は彼のオペラ作家としての功績も再評価されつつありますが、「赤毛の司祭」のニックネームがあるように、司祭職を務めていたヴィヴァルディには宗教曲の数も少なくありません。
しかし『グローリア』RV.589を除けば、録音以外でその演奏に触れる機会は滅多にないのが現状です。ここで演奏されている『マニフィカト』RV.610は1710年代の終わり、オペラ作家としての人気を確立していった40歳前後の作曲と作品です。
開始部の荘重な合唱に象徴されるように、華やかな曲調の部分にも堂々たる厳かな雰囲気がつねに横たわっていて、いつものヴィヴァルディとは異なる横顔を垣間見るようです。
そしてモーツァルト。ザルツブルク時代の最後に書かれた清廉な『ミサ曲ハ長調』K.317です。「アニュス・デイ」の有名な美しいソプラノ・ソロを歌っているローザ・フェオラはじめ、メゾ・ソプラノのエリーザベト・クールマンら実力派揃いのソリストたちを得て、充実の演奏を聴かせてくれます。
ディエゴ・ファソリスは、古楽的なアプローチをとりわけ強調して押し付けていないようです。スカラ座のオーケストラと合唱らしい濃厚な美しい響きのうえで、自然な音楽を作っているのが、彼の身ぶりからもじつによく伝わってきます。
スカラ座管弦楽団と合唱団による『アヴェ・ヴェルム・コルプス』というのも、なかなかレアな聴きものでしょう。古楽の味わいのあるアンコールの『きよしこの夜』を、客席がうっとりと聴き入っている姿も印象的です。
[演目]アントニオ・ヴィヴァルディ:弦楽のための協奏曲ト短調RV.157/モテット『おお、天においても地においても清きもの』RV.631/マニフィカトRV.610、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト:ミサ曲ハ長調K.317(戴冠ミサ)/モテット『アヴェ・ヴェルム・コルプス』K.618、フランツ・クサーヴァー・グルーバー:きよしこの夜
[指揮]ディエゴ・ファソリス [演奏]ミラノ・スカラ座管弦楽団及び同合唱団(合唱指揮=ブルーノ・カゾーニ)ローザ・フェオラ(ソプラノ)アンナ=ドリス・カピテッリ(ソプラノ)エリーザベト・クールマン(メゾ・ソプラノ)マウロ・ペーター(テノール)ジャンルカ・ブラット(バス)
[収録]2018年12月 ミラノ・スカラ座 [映像監督]ダニエラ・ヴィスマラ
初回放送日:12月17日