2019 / 12 / 30
フェニーチェ歌劇場2017「ニューイヤー・コンサート」
≪おススメコンサート≫
クラシカ・ジャパンが自信をもっておすすめするコンサート。
2020年1月放送のラインナップから今回は、フェニーチェ歌劇場2017「ニューイヤー・コンサート」をご紹介します。
“ヴェネツィアの至宝”フェニーチェ歌劇場の恒例のニューイヤー・コンサート
イタリアの伝統に新たな力を添えて、2017年はファビオ・ルイージ指揮、ローザ・フェオーラ(ソプラノ)とジョン・オズボーン(テノール)の競演。
“ヴェネツィアの至宝”フェニーチェ歌劇場で2004年から続いているニューイヤー・コンサート。この番組は、イタリア・ジェノヴァ出身のファビオ・ルイージが指揮した2017年元日のコンサートです。
ヴェルディの『リゴレット』や『椿姫』などが初演された名門フェニーチェ歌劇場は、火災で失われたサン・ベネデット劇場の後継劇場として1792年に開場しました。
「フェニーチェ(不死鳥)」の名があるのはそのためですが、皮肉なことにこの劇場もまた、その後2度にわたって焼失し、そしてその都度蘇りました。1度目は1836年。
このときは約1年後に再建・再開されたのですが、今から約20年前、1996年の火災で全焼した際には、財政的な理由などもあり、再建そのものに着手するのにも数年を要し、2003年末になってようやく再開されました。
その翌年2004年の元日から、再開を祝して始まったのが、このニューイヤー・コンサートです。実際には年末から年をまたいで同じプログラムの数回の公演が行なわれ、現在は12月29日から1月1日まで、4回のコンサートが定着しています。
2007年には日本の大野和士も指揮したこのコンサート。イタリアの伝統的劇場ながら、これまでに登場した指揮者の中で、イタリア生まれの指揮者は、2008年のロベルト・アバドと、この番組のファビオ・ルイージの二人だけ。
また、プログラム前半には、オペラのナンバーではなく、特に2010年以降は古典派からロマン派に至る交響曲の名曲を演奏しているのも特徴です。
2017年はベートーヴェンの交響曲第7番。オペラを演奏することが日常のオーケストラにとっては、逆に新鮮なレパートリーと言えそうです。
しかし、そこはドイツとオーストリアで輝かしいキャリアを誇るルイージがきりりと締め、オーケストラの豊かな歌心を生かしながらも、古典派音楽の枠をきちんと形にしています。このようにして、老舗劇場の伝統に、またひとつ新しい力が加わってゆくのでしょう。
そしてプログラム後半はお待ちかねのオペラ・ガラ。劇場ゆかりの『リゴレット』『椿姫』を含む、おなじみの名曲をたっぷりと楽しませてくれます。

(c)Michele Crosera
ソプラノは1986年生まれのニュー・ヒロイン、巨匠リッカルド・ムーティによって見出された赤丸上昇中のローザ・フェオーラ
清楚で美しいハイ・ソプラノで魅せる『清教徒』の狂乱のアリアは圧巻です。テノールは、近年大活躍のアメリカのテノール歌手ジョン・オズボーン。
持ち前のリリックな声質にドラマティックな説得力も加わり、甘美さとエネルギーのバランスがうまくとれた歌を、さも気持ち良さそうに朗々と響かせています。
プログラムの中で毛色の変わった選曲なのが、管弦楽によるベンジャミン・ブリテンの『マチネ・ミュージカル』からの2曲でしょう。
これはブリテンが、ロッシーニの音楽にインスパイアされて1941年に書いた作品で、「行進曲」は歌劇『ウィリアム・テル』を、「ワルツ」は『音楽の夜会(ソワレ・ミュジカール)』の第4曲「饗宴」を素材にしています。
最後に、このニューイヤー・コンサートの定番「行け!わが想いよ、黄金の翼に乗って」と「乾杯の歌」が演奏されると、これでもかというぐらい大量の紙吹雪がステージに吹き付けられ、1年の始まりを華やかに祝います。
[演目]ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン:交響曲第7番イ長調Op.92、ジュゼッペ・ヴェルディ:歌劇『椿姫』~第2幕の合唱「おれたちはマドリードのマタドール」、ベンジャミン・ブリテン:ロッシーニの主題による組曲『マチネ・ミュージカル』Op.24~行進曲、ジュゼッペ・ヴェルディ:歌劇『リゴレット』~マントヴァ公爵のアリア「あれかこれか」/歌劇『オテロ』~火の合唱「喜びの炎よ」、ベンジャミン・ブリテン:ロッシーニの主題による組曲『マチネ・ミュージカル』Op.24~ワルツ、ヴィンチェンツォ・ベッリーニ:歌劇『清教徒』~エルヴィーラのアリア「やさしい声が私を呼んでいた…さあ、いらっしゃい愛しい人」(狂乱の場)、ジュゼッペ・ヴェルディ:歌劇『一日だけの王様』~シンフォニア、ガエターノ・ドニゼッティ:歌劇『連隊の娘』~トニオのアリア「わが友よ、なんと楽しい祝いの日」/歌劇『ドン・パスクヮーレ』~ノリーナのアリア「その騎士は熱い眼差しに」、ジュゼッペ・ヴェルディ:歌劇『ナブッコ』~ヘブライの捕虜たちの合唱「行け、わが想いよ、黄金の翼に乗って」/歌劇『椿姫』~乾杯の歌「友よ、さあ飲みあかそう」
[指揮]ファビオ・ルイージ[演奏]フェニーチェ歌劇場管弦楽団及び同合唱団、ローザ・フェオーラ(ソプラノ)ジョン・オズボーン(テノール)[合唱指揮]クラウディオ・マリーノ・モレッティ[出演]エマヌエラ・モンタナーリ、アントニーノ・ステラ、ミラノ・スカラ座バレエ団[振付]ジャンルカ・スキアヴォーニ[収録]2017年1月1日フェニーチェ歌劇場(ヴェネツィア)[映像監督]アルナルダ・カナーリ
■字幕/約1時間46分
初回放送日:1月1日