2020 / 03 / 13
ヤンソンス&ウィーン・フィル定期公演2017
≪おススメコンサート≫
クラシカ・ジャパンが自信をもっておすすめするコンサート。
2020年3月放送のラインナップから、今回は「ヤンソンス&ウィーン・フィル定期公演2017」をご紹介します。

(c)Terry Linke
逝去が惜しまれる大指揮者ヤンソンスとウィーン・フィルによる貴重な定期公演ライヴ
2019年、ラトヴィア出身の大指揮者マリス・ヤンソンスが逝去したことは多くのファンを悲しませました。天下の名門ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(VPO)にとってもヤンソンスは信頼する常連客演指揮者で、当番組は2017年に行われたVPO定期公演におけるこのコンビの演奏です。
名匠の強力な統率力によって剛・柔、豪快・繊細、重厚・軽妙のコントラストがくっきりとられ、VPOはそれを難なく音にして音楽の海を自在に泳ぎます。ヤンソンスから受け取る剛や優しさを滲ませながら。
1曲目はドヴォルザークの交響曲第8番。なんという自然の息吹と情にあふれる曲でしょうか。ボヘミアの風の音、鳥の声が聴こえ、草木の香りが立ちのぼり、またそこで素朴に生きる人の心を感じさせます。第3楽章の中間部をはじめ、弦のみずみずしく豊潤な響きはVPOならではで、第2楽章の木管の小技的な面白いアーティキュレーションも嫌味にならず実に自然。
ヤンソンスの十八番のひとつ、ストラヴィンスキー『火の鳥』
次のR.シュトラウス『死と変容』では、針の穴を通すような緊張感の強いピアニシモが聴き手の耳をそばだたせ、壮麗なフォルティシモまで指揮者と楽団が一丸となって広大なレンジを形成します。病の床にいる者がひとときの夢を見るも、苦痛との壮絶な闘いののち最後は浄化する……というストーリーで、この作曲家の本領であるオペラのような音楽は、演奏によっては表層的なドラマに陥ってしまうところですが、この演奏は切実さが音楽に宿り深い感動を与えてくれます。コンサートマスターのライナー・ホーネック、また木管のソロは胸にしみ入る聴きもの。
ヤンソンスの十八番のひとつ、ストラヴィンスキー『火の鳥』でも、マエストロの?剛“とVPOの?柔”が一段と理想的にかみ合い、ロシアの天才作曲家の若き日の名作をダイナミックに、エキゾチックに、品のよい色彩感あふれる華麗なものにしています。この曲でも随所に聴かれるVPO木管奏者の妙技が冴え、静かなナンバーはもちろんのこと、全体としてもロシアのオーケストラとはひと味違う、VPO特有の豊かに歌う流儀に寄っているのが印象的です。
[指揮]マリス・ヤンソンス
[演奏]ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
[曲目]
アントニーン・ドヴォルザーク:交響曲第8番ト長調Op.88
リヒャルト・シュトラウス:交響詩『死と変容』Op.24
イーゴリ・ストラヴィンスキー:バレエ『火の鳥』組曲(1919年版)
[収録]2017年6月 ウィーン楽友協会大ホール
[映像監督]ディック・カイス
初回放送日:3月15日
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