2020 / 05 / 13
ヴェルビエ音楽祭2017「ジャニーヌ・ヤンセン&ミハイル・プレトニョフ」
≪おススメコンサート≫
クラシカ・ジャパンが自信をもっておすすめするコンサート。
2020年5月放送のラインナップから、今回はヴェルビエ音楽祭2017「ジャニーヌ・ヤンセン&ミハイル・プレトニョフ」 をご紹介します。

(c)Aline Paley
プレトニョフの指揮により濃厚な音になっていく!
熱いパッションと明晰な頭脳をもつロシアの名匠に率いられ、未来を拓く若者たちのオーケストラが響かせる濃厚なロマン。
スイスの風光明媚な高原リゾート地、ヴェルビエで1993年から毎夏行われているヴェルビエ音楽祭。
札幌のPMF同様、世界の若く優秀な演奏家たちが集う教育音楽祭でもあり、彼らは名演奏家たちからオーケストラ・プレイヤーとしても指導を受け、コンサートを開きます。当番組で紹介する、2017年公演の指揮者はミハイル・プレトニョフ。ロシアを代表する大ピアニストであり、今や大指揮者の一人です。
このヴェルビエ祝祭管弦楽団(VFO)はそうした若者の集まりゆえ、まずピカピカな上手さが際立ち、それがプレトニョフの指揮により濃厚な音になっていきます。
1曲目のグラズノフの組曲『中世より』では、初めこそ管楽器が青竹のような硬さを感じさせるものの、ロマンティシズムを湛えた弦楽は実に清々しく響きます。
2曲目は、真紅のドレスに身を包んだヤンセンがソロを弾くチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲。完全無比のヴァイオリンは、熱くエモーショナルな抒情と、滑らかなシルクのようなピアニシモで、聴き手の胸に迫ります。
今やこの曲にかけて世界屈指と謳われるヤンセンに感動することはもちろん、アイコンタクトをしながらVFOを冷静に統御して共に音楽を作るプレトニョフの手腕の見事さも光ります。
プレトニョフの中に溢れるロシアン・ロマンティシズム
このヴァイオリン協奏曲と同時期に書かれた、ドラマティックな交響曲第4番では、プレトニョフの中に溢れるロシアン・ロマンティシズムと彼の明晰な頭脳が、濃厚なロマンに彩られたサウンドとクリアなディテールを作り上げます。
第1楽章の華麗な幻想と激情、第2楽章の憂愁なメロディの中に明滅する木管の音、「夏の夜の夢」の妖精パックのように跳ね回る弦のピチカートによる第3楽章、そして情熱的でスリリングなフィナーレ……。
冒頭の金管群による?運命の動機“は多くのロシア人指揮者が振るときと同様、じっくり重く響き、それがフィナーレで再び鳴らされるとき、聴き手は曲全体にのしかかる運命の重みをいやが上にも実感します。
そして、それを超えて、未来を拓かんとするVFOの若者たちの覇気が伝わってくるようです。
[演目]アレクサンドル・グラズノフ:組曲『中世より』op.79から前奏曲、ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲ニ長調Op.35/なつかしい土地の思い出op.42からメロディ(ソリスト・アンコール)/交響曲第4番ヘ短調op.36
[指揮]ミハイル・プレトニョフ[演奏]ヴェルビエ祝祭管弦楽団、ジャニーヌ・ヤンセン(ヴァイオリン)
[収録]2017年8月6日、ヴェルビエ音楽祭(スイス)[映像監督]クリスティアン・ルブレ
放送日:5月14日 他