2020 / 08 / 20
ロッシーニ・オペラ・フェスティバル2013『アルジェのイタリア女』
≪おススメオペラ≫
クラシカ・ジャパンが自信をもっておすすめするオペラ公演。
2020年8月放送のラインナップから、今回はロッシーニ・オペラ・フェスティバル2013『アルジェのイタリア女』をご紹介します。

©Studio Amati Bacciardi
ロッシーニの喜劇オペラが、60年代のロマンティック・スパイ・コメディに変身!
優れた歌唱力と美貌を誇るスター歌手ゴリャチョーワが、“イタリア女”を好演。
毎夏、ロッシーニの生地ペーザロで開かれる「ロッシーニ・オペラ・フェスティバル(ROF)」。
2013年に音楽祭の最大の目玉として上演されたのが、初演200周年を迎えた『アルジェのイタリア女』でした。ロッシーニ自身が指揮をした初演(1813年)は大評判を取ったものの、有名な序曲を除けば、今日まで滅多に取り上げられてこなかったレアな傑作。
おまけに、躍進中のアンナ・ゴリャチョーワが題名役を演じ、前年のROFで『バビロニアのチロ』を成功させたダヴィデ・リヴェルモーレが演出を手がけるとあって、上演は大きな注目を集めました。
リヴェルモーレは、物語の舞台を石油マネーで潤う1960年代のアルジェに再設定し、遊び心あふれるロマンティック・コメディに仕上げています。序曲に乗って流れる映像や、カラフルでド派手な衣裳や照明、出演者たちの振付や身振りは、60年代の漫画やトレンド、映画『ピンク・パンサー』シリーズ、さらにはパロディ映画『オースティン・パワーズ』等を彷彿させるもの。
オペラは、スパイ映画『007』へのオマージュで幕開け。ボンド風のリンドーロがアルジェで拘束され、イタリアにいる恋人イザベッラに電話でSOSを発信。すぐに救出に向かうイザベッラですが、彼女が乗る旅客機がアルジェで墜落します……。

©Studio Amati Bacciardi
見事な歌唱を聞かせるゴリャチョーワ
番組の何よりの魅力は、この特異な演出に器用に応えつつ、見事な歌唱を聞かせる歌手陣。
ゴリャチョーワは、ノーブルな声と確かな技術で作品の音楽的魅力を余すところなく伝えるいっぽう、恵まれた容姿を活かしたコメディエンヌとしての才能も天下一品です。
ロッシーニの歌唱スタイルを十二分に会得したシー・イージェ(リンドーロ)の明朗な声質と、体当たりの演技で際立つアレックス・エスポージト(ムスタファ)の頑強な声質の対比も、聞き心地抜群。
見せ場は少ないものの、マリオ・カッシ(タッデオ)とダヴィデ・ルチアーノ(ハリ)は声量・声質の両面で特大の存在感を放っています。
ホセ・ラモン・エンシナール指揮ボローニャ市立劇場管の歯切れのよい音楽の運びと明快なサウンドも、聞き所のひとつです。
[出演]アンナ・ゴリャチョーワ(イザベッラ/コントラルト)シー・イージェ(リンドーロ/テノール)アレックス・エスポージト(ムスタファ/バス)マリオ・カッシ(タッデオ/バス)マリアンジェラ・シチリア(エルヴィーラ/ソプラノ)ラッファエッラ・ルピナッチ(ズルマ/メゾ・ソプラノ)ダヴィデ・ルチアーノ(ハリ/バス)
[演目]ジョアキーノ・ロッシーニ:オペラ(ドラマ・ジョコーソ)『アルジェのイタリア女』(アツィオ・コルギ校訂によるクリティカル・エディション)
[台本]アンジェロ・アネッリ[演出]ダヴィデ・リヴェルモーレ[装置・照明]ニコラ・ボヴェイ[衣裳]ジャンルーカ・ファラスキ[ビデオ・デザイン]D-Wok
[指揮]ホセ・ラモン・エンシナール[演奏]ボローニャ市立劇場管弦楽団および同合唱団(合唱指揮:アンドレア・ファイドゥッティ)
[収録]2013年8月テアトロ・ロッシーニ(ペーザロ)
[映像監督]ティツィアーノ・マンチーニ
初回放送日:8月22日