2020 / 09 / 03
ザルツブルク音楽祭2013『イェーダーマン』
≪おススメオペラ≫
クラシカ・ジャパンが自信をもっておすすめするオペラ公演。
2020年9月放送のラインナップから、今回はザルツブルク音楽祭2013『イェーダーマン』 をご紹介します。

(c)Salzburger FestspieleForster
1920年の第1回から、脈々と上演されてきた、ザルツブルク音楽祭の「原点」!
大聖堂前の野外特設ステージで上演される、ホーフマンスタールの道徳劇。
ザルツブルク音楽祭といえば、ヨーロッパの夏の音楽祭を代表するビッグ・イベントとして毎年世界中の注目を集めますが、そのスタートは、オペラでもコンサートでもなく、この演劇『イェーダーマン』でした。
1920年、演出家マックス・ラインハルトが、作家フーゴ・フォン・ホーフマンスタールや作曲家リヒャルト・シュトラウスらの協力を得て始めた第1回ザルツブルク音楽祭の演目は、ホーフマンスタール作、ラインハルト演出による、この『イェーダーマン』だけだったのです。
以降、ほぼ欠かさず上演され続けてきた、音楽祭の顔であり原点です。番組では、その2013年の上演の模様をお届けします。
ホーフマンスタールといえば、『ばらの騎士』をはじめとするR・シュトラウスのオペラの数々(『ナクソス島のアリアドネ』『エレクトラ』『影のない女』など)の台本作家として知られています。
『イェーダーマン』は1912年に、ベルリンのシューマン・サーカスで初演されました。イェーダーマン(Jedermann)は英語ならEveryman(エヴリマン)。
つまり山口瞳の創作した「江分利満氏」と同様、「どこにでもいる人間=つまりあなた」という意味です。人間はみな、いつ死が訪れるかわからないのだから、日頃から正しい行ないに努めなければならない、という道徳劇です。

(c)Salzburger FestspieleForster
ザルツブルク音楽祭での、雰囲気満点の野外劇
ザルツブルク音楽祭での上演は、毎年、大聖堂を背景にした特設ステージで行われます。
本物の教会の鐘や、広場を囲む建物を使ってどこからともなく聞こえてくる呼び声など、この会場ならではの演出効果が楽しめる、雰囲気満点の野外劇です。
イェーダーマンは大金持ちですが、施しを求める者たちには非情です。
ある日、友人たちと乱痴気騒ぎをしていると、突然鐘が鳴り渡り、イェーダーマンを呼ぶ声が響きます。「死」が、彼に今日死ぬことを告げに来たのです。
なんとか逃れたいイェーダーマンですが、誰も助けてはくれず、やがて、神に祈りを捧げ、清々しく静かに死を受け入れることを選びます……。
オリジナルのラインハルト演出以降、さまざまな演出家が手がけてきた『イェーダーマン』ですが、このジュリアン・クラウチとブライアン・メルテスによるプロダクションは、番組が収録された2013年に新制作初演された舞台です(2017年にはすでに新たなプロダクションに変わっています)。
かつてモーツァルトも奉職していた大聖堂を背景に演じられる舞台。道徳劇ではありますが、人が死と向き合い、それを潔く受け入れる姿に、深い感動をおぼえるにちがいありません。
[出演]コルネリウス・オボーニャ(イェーダーマン)ブリギッテ・ホブマイヤー(情婦)ペーター・ローマイヤー(死)サイモン・シュヴァルツ(悪魔)ユルゲン・タラッハ(マモン〈金の神〉)サラ・ヴィクトーリア・フリック(善行)ハンス・ペーター・ハルヴァクス(信仰)ユリア・グシュニツァー(イェーダーマンの母)パトリク・ギュルデンベルク(イェーダーマンの親友)ハンネス・フラシュベルガー(太った従兄弟)シュテファン・クライス(痩せた従兄弟)フリッツ・エッガー(債務者)カタリナ・シュテムベルガー(債務者の妻)ヨハネス・シルバーシュナイダー(貧しい隣人)ジクリット・マリア・シュニュッケル(料理人)フローレンティナ・ルッカー(神)
[演目]フーゴ・フォン・ホーフマンスタール『イェーダーマン~ある裕福な男の死』[演出]ジュリアン・クラウチ&ブライアン・メルテス[装置・仮面・人形]ジュリアン・クラウチ[衣裳]オリヴェーラ・ガイッチ[音楽監督&編曲]マルティン・ロウ[ドラマトゥルク]デイヴィッド・タッシンガム[振付]ジェシー・J・ペレス[照明]ダン・スカリー[音響]マット・マッケンジー
[収録]2013年7月ザルツブルク大聖堂広場特設ステージ[映像監督]アンドレ・トゥルンハイム
■字幕/約2時間7分
初回放送日:9月5日