2020 / 09 / 04
BBCプロムス2018「カネラキス&アリサ・ワイラースタイン」
≪おススメコンサート≫
クラシカ・ジャパンが自信をもっておすすめするコンサート。
2020年9月放送のラインナップから、今回はBBCプロムス2018「カネラキス&アリサ・ワイラースタイン」をご紹介します。

(C)Chris Christodoulou
ライジング・スター&BBC響のしなやかな演奏によってプロムスに映える、20世紀ロシアの代表曲&若き俊才の新曲!
ロンドンの夏の風物詩、BBCプロムスにおいて注目の女性ライジング・スター、カリーナ・カネラキスがBBC交響楽団を指揮した公演を当番組でお送りします。
前半はショスタコーヴィチ、後半はラフマニノフと、対照的な20世紀ロシアのオーケストラ作品を聴く醍醐味とともに、その前に1曲ずつ小品を置いてのプログラムです。
冒頭のベートーヴェンの序曲『コリオラン』では、気迫に満ちたフォルテの一撃から駆り立てられるパセティックなドラマを、緊張を途切らせないまま透明な響きでしなやかに表現。当コンビの長所が感じられます。
続くショスタコーヴィチのチェロ協奏曲第1番では、若手チェリストの中でも注目株で家族が皆演奏家というサラブレッド、アリサ・ワイラースタインの登場です。
シニカルな両端楽章ではおおらかな音楽性と無類の超絶技巧、そして精確に音を統御しようとする指揮&オーケストラとのやりとりが実にスリリング。
白眉は魂の淵を歩むような幽玄な第2楽章で、チェロの心に沁みる透徹した歌いっぷりと、それを包み込むオケの幻想的な響きが強い印象を残します。

(C)Chris Christodoulou
カネラキスの耳、知性的なコントロールの冴えとオケの機能性がマッチして細部まで美しい
後半1曲目は、カリフォルニア出身の若き作曲家アンドリュー・ノーマンの「スパイラル」。
大指揮者ラトルのベルリン・フィルとの告別コンサートのために、同フィルとBBCプロムスが共同委嘱した5分ほどの曲で、プロムスではこの日が初演です。
静寂から色々な楽器の音が次第に重なり合い、ラヴェル『ボレロ』のようにだんだんと強くなっていき、残像のように聴こえる音響が最高潮に達した後には再び静寂が……といった構成に、現代曲の得意なBBC響が冴えを見せます。
最後はラフマニノフが晩年のアメリカ時代、フィラデルフィア管のために書いた最後の作品「交響的舞曲」。
ここでは、野性的な荒々しさや原色的色彩よりも、引き締まった精緻な迫力のうちに、しなやかで優しい抒情が浮かび上がる洗練された演奏になっています。
カネラキスの耳、知性的なコントロールの冴えとオケの機能性がマッチして細部まで美しく、彼女が翌年のプロムス・ファーストナイトで再登場することに納得させられることでしょう。
[曲目]
ベートーヴェン:序曲『コリオラン』Op.62
ショスタコーヴィチ:チェロ協奏曲第1番 変ホ長調Op.107
J.S.バッハ: 無伴奏チェロ組曲第4番 変ホ長調BWV1010からサラバンド(ソリスト・アンコール)
アンドリュー・ノーマン:スパイラル (ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団/BBCプロムス共同委嘱作品)
ラフマニノフ:交響的舞曲Op.45
[指揮]カリーナ・カネラキス
[演奏]アリサ・ワイラースタイン(チェロ)、BBC交響楽団
[収録]2018年7月23日 ロンドン、ロイヤル・アルバートホール
[監督]ケリー・クラーク
放送日:9月6日 他