2020 / 11 / 13
ルイ14世による『夜のバレ・ロワイヤル』
≪おススメオペラ≫
クラシカ・ジャパンが自信をもっておすすめするオペラ。
2020年11月放送のラインナップから、今回はルイ14世による『夜のバレ・ロワイヤル』
をご紹介します。

(c)delval.philippe
ルイ14世が「太陽王」と呼ばれる所以となった、1653年2月23日に王自らも踊った「夜のバレ」を再構築
奇抜な衣裳やモダンなツールで、17世紀の舞台スペクタクルが甦る!
フランス・ブルボン王朝の最盛期を築いたルイ14世(在位1643~1715年)が「太陽王」と呼ばれるのは、バレエ好きの王が太陽神アポロンに扮して踊ったことによるものだというのは有名なエピソードです。
その由来となったのが、1653年2月23日にパリのプチ・ブルボン宮の広間で開かれた宮廷バレエ『夜のバレ』でした。
この歴史的なイベントを、気鋭の女性振付師フランチェスカ・ラットゥアーダと、古楽の雄セバスティアン・ドセ率いるアンサンブル・コレスポンダンスが再構築。
この番組は、2017年11月フランス・ノルマンディー地方のカーン劇場での上演です。
宮廷バレエ(バレ・ド・クール)はルイ13世の時代から14世の時代にかけて全盛をきわめた、今日の劇場バレエのルーツのひとつで、舞踊だけでなく朗読や声楽などが一体となり、豪華な衣裳や機械仕掛けの舞台装置なども用いた総合エンターテイメントでした。
そして、それは単なる娯楽ではありませんでした。
『夜のバレ』が開かれたとき、ルイ14世は14歳。4歳で即位した王でしたが、国政の実権は、摂政の母アンヌ・ドートリッシュと、その愛人とも言われるジュール・マザラン枢機卿が握っていました。
1648年、彼らと対立する貴族たちによる「フロンドの乱」が勃発、王たちは一時パリを逃れます。
反乱が鎮圧され、王がパリに戻ったのが1652年10月のこと。
翌年2月に催された『夜のバレ』は、その祝賀の場であり、若き国王の存在をあらためて高らかに知らしめる政治的プロパガンダでもあったのです。

(c)delval.philippe
演出・振付を担当したのは鬼才フランチェスカ・ラットゥアーダ
何度も催された宮廷バレエの中で、『夜のバレ』は筋書きや美術、舞踊譜など、充実した記録が残されているほとんど唯一の演目なのですが、音楽に関しては資料が乏しく、誰が作曲したのかを特定することは困難です。
それを再構築したのが、フランスの指揮者・音楽学者のセバスティアン・ドセです。
リヨン国立高等音楽院の卒業生たちによる古楽集団アンサンブル・コレスポンダンスを率いて、作曲者の一人として判明しているジャン・ド・カンブフォール(1605頃~1661)の音楽を軸に、ルイ・コンスタンタン(1585頃~1657)、ミシェル・ランベール(1610~1696)、フランチェスコ・カヴァッリ(1602~1676)、ルイージ・ロッシ(1597~1653)らの音楽を用いて、17世紀の王室スペクタクルを再現しています。
それは、現在の私たちが想像する「バレエ」のイメージよりも、ずっと声楽を多用した、「オペラ」に近いものです。
事実、自らが優れた踊り手であったルイ14世の関心も、やがてバレエからオペラに移ってゆくのですが、そのオペラの発展の中心となった国王の寵臣の作曲家ジャン・バプティスト・リュリ(1632~87)もまた、この『夜のバレ』に、ダンサーとして参加していました。
演出・振付を担当した鬼才フランチェスカ・ラットゥアーダは、当時の資料を元に、新たな創造を試みています。
奇抜な衣裳、ジャグリングやアクロバットなど、現代のさまざまなツールを使って、17世紀のプロダクションの「形」を再現するのではなく、当時の人々が受けた驚きやインパクトを蘇らせているのです。
『夜のバレ』は、タイトルのとおり、夕方から夜明けまでの「夜」の時間を4つに分け、それぞれの時間に起こる幻想的な出来事を描く大作です。
第1部「夜」が18~21時、第2部「ヴィーナスと三美神」が21~24時、第3部「恋するヘラクレス」が0~3時、第4部「オルフェウス」が3~6時という構成です。
これに、当時の決まりごとで、序曲とフィナーレ(グラン・バレ)「太陽」がついています。登場するのは「夜」「時」「月」「眠り」「沈黙」など寓意的な役柄たちで、最後に金色に輝く「太陽」(=ルイ14世)がまばゆく登場します。
[出演]ショーン・パトリック・モンブルノ(太陽神/ダンサー)ルシール・リシャルド(夜、イタリアのヴィーナス/メゾ・ソプラノ)ヴィオレーヌ・ル・シュナデク(時、シンシア、フランスの美神/ソプラノ)カロリーヌ・ウェイナン(エウリディーチェ、フランスの美神/ソプラノ)イレクトラ・プラティオプル(ジュノ/メゾ・ソプラノ)カロリーヌ・ダンジャン・バルド(ヴィーナス、沈黙/ソプラノ)ユディト・ファ(パーシテアー、ムネモシュネ/ソプラノ)デボラ・カシェ(月、デジャニール、フランスの美神、ベレーザ/ソプラノ)ダヴィド・トリク(アポロ、オーロラ/テノール)ダヴィ・コルニロ(エンデュミオン/テノール)エティエンヌ・バゾラ(眠り/バス)ルノー・ブレ(ヘラクレス/バス)ニコラ・ブルイマン(偉大な生贄/バス)アクロバット、ジャグラー、子供たち 他
[演目]イザーク・ド・ベンセラーデの『夜のバレ・ロワイヤル』に基づく若き太陽王のためのディヴェルティスマン
[音楽]ジャン・ド・カンブフォール/ルイ・コンスタンタン/ルイージ・ロッシ/フランチェスコ・カヴァッリ/アントワーヌ・ボエセ/ミシェル・ランベール
[演出・装置・衣裳・振付]フランチェスカ・ラットゥアーダ[照明]クリスチャン・デュベ
[指揮]セバスティアン・ドセ
[演奏]アンサンブル・コレスポンダンス
[収録]2017年11月11日&12日カーン劇場(フランス)[映像監督]フランソワ=ルネ・マルタン
放送日:11月14日 他