2018 / 05 / 01
ウィーン少年合唱団 2018年 日本公演 記者会見レポート
今年も「天使の歌声」がやってきた!
「天使の歌声」ウィーン少年合唱団が今年も来日。4月26日、東京・赤坂のサントリーホールで、芸術監督のゲラルト・ヴィルト、カペルマイスター(楽長)のジミー・チャン、そして合唱団のメンバーたちが出席して記者会見が開かれました。
1498年に王宮礼拝堂の聖歌隊として創設されたウィーン少年合唱団。ちょうど100年前の1918年に第一次世界大戦が終わるまで、彼らの活動は宮廷内に限定されていました。敗戦によって皇帝が退位しオーストリアが共和国となったのに伴い、合唱団も改組され、その歌声を広く聴くことができるようになったのです。1926年以降は国外への演奏旅行も活発に行い、これまでに1,000回のツアーで、のべ2,500人のメンバーが97か国を訪れて、音楽大使として世界各国との文化交流にもひと役買っています。初来日は1955年でした。
世界中に出かける一方で、創立以来の役目である毎週日曜日の王宮礼拝堂でのミサや、オペラ、コンサートへの出演など、地元ウィーンでも常に必要とされる彼らは現在、「ブルックナー」「ハイドン」「モーツァルト」「シューベルト」の4つの組に分かれて活動しており、今回来日したのはハイドン組です。
40年前に、自身もハイドン組の団員の一人として初めて日本を訪れたというヴィルト芸術監督。
「オーストリアだけでなく、世界から集まっている団員が、ともに合唱し、生活しながら生み出すものが、いかに人と人を結びつけられるかを示せると考えています。聴衆の皆さまの心を動かすパワーをお届けできれば幸せです」
プログラムに込められた想い
来日公演のプログラムは2つ。プログラムA「ウィーン少年合唱団と動物の世界」では、シューベルト「ます」や日本の童謡「ほたるこい」などさまざまな生き物の歌が登場。プログラムB「ウィーン少年合唱団と世界の歴史・音楽」には、古い聖歌や世界各地の民謡、映画『タイタニック』の主題歌まで幅広い曲目が並びます。
プログラム構成について、ハイドン組の指揮者・指導者であるカペルマイスターのチャンはこう言います。
「プログラムAの動物の歌は、子供たちにとって魅力的なものであると同時に、自分たちの想像力を膨らませながら歌うことができます。また、7か国語の動物の歌を歌うことは、グローバルな世界を作り上げる、私たちにとってぴったりのプログラムだと思います。一方のプログラムBは、合唱団自身の伝統と歴史を歌い上げることでもあります。絶え間なく続く歴史の流れの中で、自分たちがどの地点にいるのかを理解することができる。それは、伝統や歴史だけでなく、現在、そして未来に対しても尊敬や希望を抱いているということです。つまり私たちが、全世界を抱きしめるような音楽を目指していることがご理解いただけると思います」
4年前にもハイドン組とともに来日した香港生まれのチャンは、この合唱団の指導者としてはやや異色の経歴の持ち主です。ヴィルト芸術監督がそうであるように、ウィーン少年合唱団の歴代カペルマイスターには同団出身者も多く、合唱指揮を中心に活動している場合がほとんどですが、彼はどちらかというとシンフォニーやオペラを軸に活動してきた指揮者。今回は彼のアイディアで、数曲を振付つきで歌うということなので注目です。
当時のまま受け継がれる伝統
多彩なプログラムの中で、コアな合唱ファンにとっても見逃せないのは、やはり500年を超える伝統です。たとえば歌の中のドイツ語やミサのラテン語を、モーツァルトやベートーヴェンの時代のウィーンではどのように発音していたのか。それが彼らの歌の中には、はるかな昔から、当時と同じ形のまま受け継がれているのです。
会見の最後には、公演プログラムの中から、団員たちも大好きだという「となりのトトロ」と「トリッチ・トラッチ・ポルカ」の2曲を歌って、無垢な歌声を披露してくれました。
ウィーン少年合唱団の2018年来日ツアーは、6月17日まで、全国18都市で29公演が行われます。
宮本明(音楽ライター)
記者会見の模様はこちらからご覧ください。
【Part1】2018年来日公演について
【Part2】質疑応答
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