2018 / 06 / 19
東京バレエ団 ブルメイステル版『白鳥の湖』公開リハーサル&記者懇親会 レポート

Photo:Mizuho Hasegawa
2年4カ月ぶりにブルメイステル版『白鳥の湖』を3キャスト(上野水香&柄本弾、川島麻実子&秋元康臣、沖香菜子&宮川新大)で再演する東京バレエ団。仕上げに入っているリハーサルを見学する機会に恵まれました。また、芸術監督の斎藤友佳理氏、主役の沖香菜子と宮川新大からお話をうかがう機会を得ました。

Photo:Mizuho Hasegawa
第3幕が特徴的なブルメイステル版
「ありのままをご覧ください」という斎藤芸術監督の挨拶でリハーサルは始まりました。オディールの沖香菜子とジークフリート王子の宮川新大のペアによる第3幕、スペイン、ナポリ、チャルダッシュ、マズルカとめくるめくキャラクター・ダンスが続き、圧倒されます。ブルメイステル版では、各国のキャラクター・ダンサーは悪魔ロットバルトが送り込んだ手下たちという設定なので、迫力満点。本番の舞台と異なり衣裳や照明がないために、舞台のあちこちでいろいろな人がいていろいろなことをしているのがわかります。特に通常だと中央で踊られるダンスに目が行くものですが、翻弄される王子やロットバルトの表情の豊かさに注目してしまいました。沖のオディールはコケティッシュな雰囲気、宮川のジークフリートからは清潔感が感じられました。
初役に挑む二人

Photo:Mizuho Hasegawa

Photo:Mizuho Hasegawa
リハーサル後は場所を移し、斎藤芸術監督、主役の沖と宮川が公演にかける意気込みを語ってくれました。
キャリアはすでに充分にある沖、宮川は今年プリンシパルとなり、『白鳥の湖』の主役は初めて踊ることになります。二人はコミュニケーションをよくとってパ・ド・ドゥを作り込んでいるそう。沖は「悪役を演じた経験がほとんどないので、黒鳥では大人っぽさを出して演技していきたい。自分の表現がどのように見えるのかを追い求めているところ」、宮川は「これまでは自分に近いキャラクターの役が多く、王子の経験は少ない。王子は振りのない部分、決められていない部分を自分で考えどう演じるかを作っていかなくてはならないところが難しい」と役作りについて語りました。
斎藤芸術監督は「ブルメイステル版は、物語がよく伝わるような演出で、特に第3幕は主役が引き立つようになっている。オデットが難しいと思うのは第2幕。沖は初々しく、宮川はオデットを大きく包み込んでくれるのではないか」とのこと。またプリンシパルという立場について「プリンシパルになったことで満足してほしくない。時間が立つほど苦しみが大きくなるもの。さまざまな役を踊るファースト・ソリストとは異なり、プリンシパルは舞台に立つ回数が減ってしまう。プリンシパルではあるけれどもいろいろな役を踊ってほしい。ハングリーでいてもらいたいし、謙虚であってほしい」と長い間プリンシパルとして踊り続けた斎藤芸術監督だからこその言葉を聞くことができました。
衣裳と小物、200点を新製作
再演にあたり、チュチュを除く200点もの衣裳と小物を新たに製作したそうです。登場人物の衣裳デザインをロシア人のデザイナー、アレクサンドル・シェシュノフに依頼、ボリショイ劇場で働いていたスタッフに製作を発注しました。衣裳はそれぞれ採寸、キャラクターダンスで使用するシューズは、ダンサー一人ひとりの足のサイズを測るオーダーメイド。調整のために衣裳と小物は何度もロシアと日本を行き来し、1年半以上かかってようやく全部揃ったとのこと。斎藤芸術監督がブルメイステルの本拠地であるモスクワ音楽劇場に招かれて『ラ・シルフィード』の指導を行った際、ブルメイステル版『白鳥の湖』の振付の詳細をまとめ、帰国後東京バレエ団に指導をして2016年の初演を成功に導きました。舞台装置は初演時に製作しましたが、衣裳は借りて上演したのでした。「衣裳と小物を作ってもらうのがこんなに大変だとは思わなかった。今回、将来につながるよう、いつでも上演したいときに上演できるようにしておきたかった」と斎藤芸術監督が述べたように、この版は芸術監督にとって思い入れのある版であると同時に、国内でレパートリーにしているのは東京バレエ団だけなので、バレエ団にとってもこれからも長く踊り続ける大切な版であることが感じられました。
ダンサーのみならずこの公演に関わるすべての人の熱い思いを乗せて、ツアーはスタートしました。(結城美穂子)
公演情報
6月29日(金)18:30 オデット/オディール:上野水香 ジークフリート王子:柄本弾
6月30日(土)14:00 オデット/オディール:川島麻実子 ジークフリート王子:秋元康臣
7月1日(日)14:00 オデット/オディール:沖香菜子 ジークフリート王子:宮川新大
指揮:ワレリー・オブジャニコフ
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
会場:東京文化会館
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