2018 / 07 / 10
リッカルド・ムーティ「イタリア・オペラ・アカデミーin東京」記者会見
2019年に15回目の開催を迎える「東京・春・音楽祭」に、新たなビッグ・プロジェクトが加わることになりました。巨匠リッカルド・ムーティによる「イタリア・オペラ・アカデミーin東京」。ムーティが2015年から毎夏にイタリアのラヴェンナで開催している若い音楽家のためのアカデミーが東京にやってきます。すでに速報的に開催が告知されていましたが、5月末に都内で、あらためて概要の発表会見が開かれました。
会見のためにイタリアから来日したのは、ムーティの次男ドメニコ・ムーティ。大学で法学を学び、現在はムーティの権利を管理するリッカルド・ムーティ・ミュージックの最高経営責任者(CEO)であり、「イタリア・オペラ・アカデミー」の総監督を務めています。
「リッカルド・ムーティはいま、若い音楽家を育てること、自分が偉大な芸術家から受け継いできたものを彼らに伝えることが義務だと考えています。それはトスカニーニの教えです。ムーティの師アントニーノ・ヴォットーは、長くアルトゥーロ・トスカニーニのアシスタントを務めていました。そしてトスカニーニは、ヴェルディから直接教えを受けた指揮者です。ヴェルディがどんな意図を持って作品を書いたか、オペラをどのように実現すべきかを知っていたのです。ムーティはそれをヴォットーから受け継ぎました。新しい世代の音楽家たちも、そうした古いメソードを持ってイタリア・オペラを継承していくべきであり、それが失われてしまうのは恐ろしいこと。ムーティはそう考えているのです」
ミラノ・スカラ座の音楽監督に史上最も長く君臨し(1986~2005年)、その輝かしい伝統の上にさらに現在の隆盛を上積みしたムーティ。まさにイタリア・オペラの正統を継承してきた彼ならではの使命感の表れが、このアカデミーだと言えそうです。
「イタリア・オペラ・アカデミーin東京」は2019年から2021年まで3年間にわたって開催されます。初年度の2019年は3~4月の約1週間。最終日4月4日に東京文化会館大ホールで行なわれるヴェルディ『リゴレット』の抜粋・演奏会形式上演(リカルド・ムーティ指揮)と、そのリハーサル期間を活用した、受講生へのレッスンで構成される短期アカデミーです。受講するのは書類とオーディションで選考される数名の若い指揮者たち。聴講生(おもに音楽学生が対象)も募集します。詳細は「東京・春・音楽祭」の公式ホームページへ(応募申込書類は2018年9月に掲載予定)。管弦楽は日本の若手奏者たちによる東京春祭特別オーケストラ、ソリストは海外からの招聘を前提に調整中。
先行して2015年から開催されているラヴェンナのアカデミーでは、歌手やコレペティートルも受講対象になっていますが、東京ではまずは指揮者に絞っての開講。またアカデミー会場のスペース・ファクターの都合もあって、残念ながらレッスンの一般公開については次年度以降の検討事項とのこと。しかしムーティ自身がピアノを弾きながらの作品解説の機会が設けられるそうなので、公演とともに、それを楽しみに待ちましょう。なお、2020年は『マクベス』、2021年は『仮面舞踏会』(ともにヴェルディ)が予定されています。
現在、ダニエーレ・ルスティオーニ、ミケーレ・マリオッティ、アンドレア・バッティストーニといった30歳代の若いイタリア人指揮者が活躍するオペラ界ですが、このアカデミーから、さらにその次の世代の指揮者たちが、ヴェルディやトスカニーニの、そしてムーティの、イタリア・オペラの正統を受け継いで羽ばたく日が来るに違いありません。
宮本明(音楽ライター)
記者会見の模様はこちらの動画よりご覧ください。
【Part1】「ドメニコ・ムーティご挨拶」
【Part2】「質疑応答(前編)」
【Part3】「質疑応答(後編)」
リッカルド・ムーティ「イタリア・オペラ・アカデミーin東京」2019年概要
<演目>ジュゼッペ・ヴェルディ:歌劇『リゴレット』
<指導>リッカルド・ムーティ
<日程/会場>
●リハーサル
2019年3月28日(木)~4月3日(水)東京藝術大学 第6ホール(音620楽学部構内)
●リッカルド・ムーティ指揮 歌劇『リゴレット』(演奏会形式/字幕付/抜粋上演)
2019年4月4日(木)東京文化会館大ホール ※ムーティ氏による作品解説の日程及び会場は調整中
<対象者/カリキュラム>
●指揮者(3~5名)
[対象者]2018年4月1日時点で、18歳以上35歳以下の方。国籍不問。指揮を学ぶ能力を有する方。音楽高校・大学・専門学校に在学または卒業しているか、それに準ずる能力を有し、プロの音楽家を志す方。2019年と2020年の2年連続で全てのリハーサル及び公演に参加できることが条件。
[カリキュラム]ムーティ氏の指導によるリハーサルへの参加。期間中開催のムーティ氏による作品解説の聴講、最終日のムーティ氏指揮コンサートの鑑賞はカリキュラムの一環として出席必須。全リハーサルは同時通訳付き。2020年以降は指揮受講生の指揮による公演も実施予定(有料)。
[オーディション]書類選考の後、ムーティ氏によるオーディションで選抜。
[経費]アカデミー受講生(合格者)は無料。ただし、オーディション受験にかかる経費及び参加期間中の宿泊費・交通費は本人の負担。
●聴講生(120名)※2019年単年受講
[対象者]2018年4月1日時点で、30歳以下の方。国籍不問。音楽高校・大学・専門学校に在学または卒業しているか、それに準ずる能力を有する方。全てのリハーサルを聴講できることが条件。
[カリキュラム]ムーティ氏の指導によるリハーサルへの聴講。期間中開催のムーティ氏による作品解説の聴講はカリキュラムの一環として出席必須。全リハーサルは同時通訳付き。
[聴講募集]お申し込みは先着順として、定員に達し次第、締切。
[聴講料]15,000円。料金には全てのリハーサル(ムーティ氏による作品解説を含む)の聴講料が含まれます。4月4日公演の入場料は含まれず、聴講生は聴講生特別料金でご購入いただけます。参加期間中の宿泊費・交通費は本人の負担。
<応募方法>
ホームページより申込書(2018年9月掲載予定)をダウンロードし、必要事項を記入の上、東京・春・音楽祭実行委員会「イタリア・オペラ・アカデミー」係宛に郵送にて応募。http://www.tokyo-harusai.com/
<応募期間>
●指揮者:2018年10月1日(月)~2018年11月12日(月)
●聴講生:2018年12月3日(月)~2019年2月12日(火)
概要詳細はこちら http://www.tokyo-harusai.com/program/page_5777.html