2018 / 11 / 08
ダンス・アーカイヴ in JAPAN 2018

庄司裕作品「八月の庭」©スタッフ・テス

藤井公作品「砂漠のミイラ」©池上直哉
妻の藤井利子と東京創作舞踊団を結成した藤井公は、『癒えぬ川』『鐘』『鶏舎』『風市』など、社会派的作品から日本的なものまで幅広いテーマに取り組んできた。今回上演する『砂漠のミイラ』(1993年初演)は、詩人の秋谷豊がタクラマカン砂漠を旅した経験を基に書いた詩集「砂漠のミイラ」が原案で、砂嵐、らくだ、人間に扮した24名のダンサーたちが、砂漠を舞台に生命のエネルギーを力強く表現する。

若松美黄作品「獄舎の演芸」
日本のコンテンポラリーダンスの草分けとして知られ、前衛的な創作舞踊を数多く発表した若松美黄の作品からは、若松自身が踊った『獄舎の演芸』(1977年初演)を上演する。本作は10分ほどのソロで、獄舎に閉じ込められた囚人の心情をパントマイムやバレエを取り入れた振付で表現。伸縮する衣裳を着て、独り奇妙な踊りを繰り広げるシリアスな作品だが、所々に面白みも感じさせるのが本作の醍醐味だ。現代舞踊を学んだのちバレエを始め、中国や香港でキャリアを積んだ気鋭・高比良洋がこれに挑む。
藤井公と同時代に生き、『聖家族』『日本海』『鎮魂歌・夏の花』といった家族や戦争をテーマにした名作を生み出した庄司裕の作品からは、原爆投下前後の世界を描いた『八月の庭』(1994年初演)を取り上げる。主役は芯の通った表現力に定評がある船木こころ、振付家としても注目される宝満直也(NBAバレエ団、元新国立劇場バレエ団)で、米沢麻佑子、岡野友美子、玉田光子ら、現代舞踊界屈指の実力派が脇を固める。
本公演は、現代舞踊協会が毎年夏に開催してきた「夏期舞踊大学講座」の成果として結実したもの。講座では「現代舞踊のパイオニアに学び、クリエーションの世界を探る」と銘打ち、毎年1~2名のパイオニアを取り上げてきたが、こうして実際に三者三様の魅力に溢れた作品を目にすることで、次世代に受け継ぐべきものが見えてくるのではないだろうか。
クラシカ・ジャパン編成部 井手朋子
ダンス・アーカイヴ in JAPAN 2018
日時:2018年11月24日(土)14:00/25日(日)14:00
会場:新国立劇場 中劇場
『砂漠のミイラ』(1993年初演)
構成・演出・振付:藤井 公・利子
作品責任者:藤井利子
音楽構成:山本 直
出演:秋本里奈子、井上依里子、江尻美由紀、江積志織、江藤裕里亜、海保文江、上村有紀、北堀 希、桜井 陽、佐々木治子、清水フミヒト、髙橋純一、寺﨑ゆい子、田路紅瑠美、戸口未貴、中嶋野々子、林 敏秀、半澤 昇、藤井彩加、藤井友美、松元日奈子、梁田妃美子、横田安規、吉垣恵美
『獄舎の演芸』(1977年初演)
構成・振付:若松美黄
作品責任者:小柳出加代子、窪内絹子
音楽:クルト・ヴァイル「第2シンフォニー」ほか
出演:高比良洋
『八月の庭』(1994年初演)
構成・振付:庄司 裕
作品責任者:中井惠子
音楽:安良岡章夫「協奏的変容~ヴァイオリン、チェロとオーケストラのための」
出演:石井 武、江口香織、大槻沙絵、大野木純子、岡野友美子、片山葉子、小室眞由子、近藤みどり、佐藤樹理愛、杉原 萌、須﨑汐理、鷹栖歩莉、田中麻友美、玉田光子、冨田奈保子、名越晴奈、藤村港平、船木こころ、宝満直也、南帆乃佳、山西香澄、米沢麻佑子
制作協力:(一社)現代舞踊協会 ダンス・アーカイヴ in JAPAN企画運営委員会
問い合わせ:新国立劇場ボックスオフィス 03-5352-9999 https://www.nntt.jac.go.jp/dance/