2019 / 01 / 29
Kバレエ カンパニー『ベートーヴェン 第九』『アルルの女』公開リハーサル

『ベートーヴェン 第九』第4楽章より、中村祥子

『ベートーヴェン 第九』第4楽章より、中村祥子
1月31日にスタートする『ベートーヴェン 第九』『アルルの女』というダブルビル公演の一週間前である1月25日、Kバレエ カンパニーのスタジオにて公開リハーサルが行われました。
『ベートーヴェン 第九』は、カンパニー設立10周年にあたる2008年に芸術監督、熊川哲也が振り付けた作品で、壮大な「シンフォニック・バレエ」の誕生は大きな感動を巻き起こしました。この作品の第4楽章のソロを、熊川に加え、今回は中村祥子が初主演します。この日はこの中村が踊り、遅沢佑介と渡辺レイが指導する様子を見ることができました。
第4楽章、バリトンによる「O Freunde(おお、友よ)」と声楽が始まる最もドラマティックな部分の直前からスタート。歓喜へと高まっていく音楽のエネルギーとシンクロして、中村も徐々に力強く自信に満ちていきます。といっても世界のトップ・バレリーナ、中村はパワフルというよりはしなやかですべてが美しい! ポワントワークも圧巻で、この第4楽章部分は、誰でも簡単に踊れるものではないことを知らしめたのでした。

『アルルの女』より、フレデリの宮尾俊太郎、ヴィヴェットの荒井祐子
短い休憩を挟み、歓喜の雰囲気から一変、『アルルの女』のリハーサルが始まりました。フレデリの宮尾俊太郎、ヴィヴェットの荒井祐子が登場、指導はルイジ・ボニーノです。陽気なボニーノはその場を明るい雰囲気にしてくれる偉大なムードメーカー。けれどももう二人は仕上がっている状態で、ほとんど修正することはなく、限りなく本番に近い迫真のパフォーマンスが目の前で披露されました。
振付家ローラン・プティの作品にはどこかユーモアや洒脱な要素が盛り込まれているのですが、この作品は、男女の愛の形をピュアに描いています。ボニーノによれば「よくある男女の風景をバレエにしたもの」なのですが、普遍的なテーマゆえ心情をどう表現するかが見どころとなるプティの傑作です。特に男性ダンサーは、最後のファランドールで踊る、身を投げるまでの数分は大変なスタミナとテクニックが要される、ハードな作品です。

宮尾俊太郎、ルイジ・ボニーノ、荒井祐子
目の前にいる自分を慕ってくれているヴィヴェットと決して視線を合わすことはなく、夢見るように彼方を見つめるフレデリ。献身と悲しみが全身から溢れ出るヴィヴェット。すれ違う二人の姿は胸に迫るものがありました。最大の見せ場であるファランドール部分、取り憑かれたように破滅へと向かうフレデリを踊る宮尾の表現力は想像以上で、本番が楽しみです。
本番はもちろん生演奏。指揮は井田勝大、オーケストラはシアター オーケストラ トーキョー。『ベートーヴェン 第九』のソリストにはソプラノの幸田浩子、山口安紀子(ダブルキャスト)、アルトの諸田広美、テノールの山本耕平、バリトンの坂本伸司、とトップ・アーティストが名を連ねています。悲しくひたすら美しいビゼーの『アルルの女』も併せ、本番の演奏にも期待が高まります。
結城美穂子(エディター/音楽・舞踊ライター)
公開リハーサルの様子はこちらの動画よりご覧ください。
熊川哲也Kバレエ カンパニー Winter 2019『ベートーヴェン 第九』『アルルの女』
2019年1月31日(木)18:30/2月1日(金)14:00/2月2日(土)13:00/2月2日(土)17:30/2月3日(日)13:00
Bunkamura オーチャードホール(東京・渋谷)
芸術監督:熊川哲也
指揮:井田勝大
演奏:シアター オーケストラ トーキョー(管弦楽)、藤原歌劇団合唱部(合唱)、幸田浩子、山口安紀子(ソプラノ/ダブルキャスト)、諸田広美(アルト)、山本耕平(テノール)、坂本伸司(バリトン)
■「ベートーヴェン 第九」
演出・振付:熊川哲也
音楽:ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン「交響曲第9番ニ短調Op.125」
舞台美術・衣裳デザイン:ヨランダ・ソナベンド
舞台美術・衣裳デザイン補佐:マシュー・ディーリー
衣裳スーパーバイザー:アラン・ワトキンス
照明デザイン:足立 恒
<第1楽章>大地の叫び
<第2楽章>海からの創世
<第3楽章>生命の誕生
<第4楽章>母なる星
第4楽章主演
熊川哲也(1月31日(木)/2月2日(土)13:00/2月3日(日))
中村祥子(2月1日(金)/2月2日(土)17:30)
■「アルルの女」
振付:ローラン・プティ
振付指導:ルイジ・ボニーノ
音楽:ジョルジュ・ビゼー
台本:ローラン・プティ(アルフォンス・ドーデに基づく)
舞台美術デザイン:ルネ・アリオ
衣裳デザイン:クリスティーヌ・ローラン
照明デザイン:ジャン=ミシェル・デジレ
主演:
フレデリ:遅沢佑介(1月31日(木)/2月3日(日))
宮尾俊太郎(2月1日(金)/2月2日(土)17:30)
益子倭(2月2日(土)13:00)
ヴィヴェット:中村祥子(1月31日(木)/2月3日(日))
荒井祐子(2月1日(金)/2月2日(土)17:30)
毛利実沙子(2月2日(土)13:00)
お問い合わせ・ご予約 チケットスペース03-3234-9999 http://ints.co.jp/
公演に関する詳細 http://www.k-ballet.co.jp/
結城美穂子 Mihoko Yuki
出版社勤務を経てフリーランスのエディター/ライターとして活動中。クラシック音楽、バレエ、ダンスを得意ジャンルとする。バレエ・ダンス情報誌『ダンツァ』元編集長。単行本・ウェブマガジン・公演パンフレットの編集と執筆、またオペラ、バレエの初心者向け鑑賞ガイドのレクチャー講師を務める。