2019 / 03 / 15
ラ・フォル・ジュルネ TOKYO 2019の有料公演プログラムが発表&チケットの一般発売が3月16日(土)よりスタート

会見で見どころを語るアーティスティック・ディレクターのルネ・マルタン ©YuriManabe
ゴールデンウィークの風物詩としてすっかり定着したラ・フォル・ジュルネTOKYO(以下LFJ)が、今年も5月3、4、5日の3日間で開催される。開催に先立って行われた記者会見には、アーティスティック・ディレクターのルネ・マルタンやアンバサダー就任&出演が決まった俳優の別所哲也らが登壇。有料公演プログラムなどの詳細が発表された。期間中は、約324公演(うち有料公演は124公演)が東京国際フォーラムとその周辺で行なわれる予定で、約42万人の動員が見込まれる。

今年のメインビジュアル
15回目となる2019年のテーマは「Carnets de voyage ― ボヤージュ 旅から生まれた音楽(ものがたり)」。主役となるのは旅先で名曲を生み出したさまざまな作曲家たちで、総勢50人あまりの音楽家を取り上げる。その顔ぶれは、モーツァルト、ハイドン、リスト、ベルリオーズ、メンデルスゾーン、グリンカ、チャイコフスキー、リムスキー=コルサコフ、サン=サーンス、ラヴェルと実に豪華だ。
全6会場中、800席強を有するホールB7では、テーマにちなんだ公演を多数用意している。まず注目したいのは、ナントの公演でも好評を博した地中海沿岸の伝統楽器アンサンブル、カンティクム・ノーヴムと日本・中国のアーティストによるコラボレーション「シルクロード」。尺八、箏、津軽三味線、二胡などのオリエンタルなサウンドが、シルクロードを巡る旅へと誘う。また、クレズマー音楽を土台としたレパートリーを持つ八重奏団シルバ・オクテットによる「さすらいの音楽:ロマ&クレズマー×バラライカ!」も興味深い。こちらはロシア音楽の象徴とも言えるバラライカの奏者を迎えた新プロジェクトで、東ヨーロッパを巡る音楽の旅を堪能することができる。他にも、エスニックな中東のサウンドが特徴的な「オリエントのリスト」や合唱アンサンブルのミクロコスモスと世界的太鼓奏者・林英哲のコラボレーション「Jumala ユマラ」、アコーディオニストのフェリシアン・ブリュが独創的な演奏を繰り広げる「La Pari des brestlles~アコーディオンが紡ぐ旅物語~」など、民族豊かなプログラムが満載だ。

アンバサダーに就任した俳優の別所哲也 ©YuriManabe
ちなみに今年のホールB7は、客席配置にもこだわった。B7は会場が細長く、音響的にも苦戦してきたが、これを逆手にとって今年はステージをコの字で囲むようにサイドにも座席(サイドビュー席)を設置。アーティストを囲むという新しい試みで、これにより「臨場感あふれる演奏を楽しんでいただけるのでは」と主催者側は話す。
今年のLFJには、8歳から18歳までクラシック・ピアノをやっていたという俳優の別所哲也がアンバサダーに就任したが、別所は朗読という形で5月3日と4日に行われる「グランド・ツアー:ヨーロッパをめぐる旅」に出演することが決まっている。18世紀、英国貴族の若者たちの間では見聞を広げるために欧州各地を旅するグランド・ツアーが流行したが、LFJでは当時の書簡に着想を得たという語りと共に、バロック音楽でヨーロッパの旅路を巡る。
テーマから少し外れたところでは、2006年以来、久し振りの復活となる「ディーヴァ・オペラ」公演もお勧めだ。演目はオペラ「後宮からの誘惑」で、オーケストラの代わりにピアノを使ってモーツァルト中期の傑作を再現する。ホールB7で毎夜行われ、初めてオペラを聴くには最適な公演と言えるだろう。

フォル盆が行われるホールEのキオスク ©teamMiura
LFJ2019には、他にも新たな企画が続々登場。最終日の5月5日には、オリジナル盆踊り「フォル盆」の開催が決定した。日本を代表するニューオーリンズ・ジャズのブラック・ボトム・ブラス・バンドが演奏を担当し、多くの来場者で賑わうキオスクステージを盛り上げる。参加型のプログラムとしては、一般客も演奏に参加できる「みんなで宝島企画」もユニークだ。5月4日に行われるシエナ・ウインド・オーケストラの公演の最後に、観客も一緒に「宝島」を演奏できるという企画で、楽器を持参すれば誰でも参加が可能となっている。
また、LFJではこれまで「0歳からのコンサート」やワークショップといった子供向けプログラムも充実させてきたが、今年はさらに「キッズのためのオーケストラ・コンサート」も行う。3歳以上の幼児を対象にしたお話付きのコンサートで、映画『八十日間世界一周』のテーマ「Around the World」やホルスト作曲の組曲「惑星」より「木星」などが演奏曲目に挙がっている。
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メイン会場となる東京国際フォーラム
会見で発表された「2019年注目のアーティスト」は、昨年のロン=ティボー国際コンクールで優勝したディアナ・ティシチェンコ(ヴァイオリン)、将来を嘱望される弱冠20歳のマリー=アンジュ・グッチ(ピアノ)、アナスタシア・コベキナ(チェロ)、平均年齢22歳のウラル・フィルハーモニー・ユース管弦楽団、タタルスタン国立交響楽団、コルシカから参加する男性声楽アンサンブル・タヴァーニャなど。他にも、LFJのオフィシャル・オーケストラ的存在であるシンフォニア・ヴァルソヴィアや2018年浜松国際コンクールの覇者アレクサンダー・ガジェヴ(ピアノ)、世界を舞台に活躍する神尾真由子(ヴァイオリン)など、多くの注目アーティストが出演する。

過去の開催風景 ©teamMiura
来場者にとっては、チケットの残席表示が分かりやすくなった点も嬉しい変更点の1つだろう。今回から公式ホームページのタイムスケジュール上に各公演の残席が表示されるようになるため、どのようにスケジューリングするかを考えた上で、チケットのハシゴ買いが可能となっている。さらに一部チケットでは、昨年から導入した電子チケット「Quick Ticket」の採用も引き続き行う。窓口に並ばなくても発券できるQuick Ticketは、昨年当日券売り場の混雑緩和にもつながった。
これまで有料公演プログラムを中心に見てきたが、実はLFJ全体としては有料公演より無料コンサートの数の方が多い。丸の内の商業ビル内の特設ステージでは、三菱地所が主催となって一流アーティストによる「丸の内エリアコンサート」が行われているし、大手町・丸の内・有楽町、京橋、銀座、日本橋、日比谷エリアでは、若手演奏家による「LFJエリアコンサート」が開催されている。これらも事前にタイムテーブルが発表されるので、ぜひ街を挙げての一大音楽イベントを、さまざまな角度から楽しみたい。チケットの一般発売は3月16日10時~(東京国際フォーラム地上広場ボックスオフィスは11時~)。詳細は、LFJの公式ホームページでチェックしよう。
クラシカ・ジャパン編成部 井手朋子
ラ・フォル・ジュルネTOKYO 2019
日時:2019年5月3日(金・祝)~5日(日・祝)
会場:東京国際フォーラム、大手町・丸の内・有楽町、京橋、銀座、日本橋、日比谷
公演数:約324公演/有料公演 124公演、無料公演 約200公演
https://www.lfj.jp/