2019 / 02 / 13
「大原永子芸術監督の集大成」として…新国立劇場2019/2020シーズン・ラインアップ記者会見<バレエ&ダンス>レポート(1月17日新国立劇場)
新国立劇場新シーズン2019/2020のオペラ、バレエ&ダンス、演劇三部門の芸術監督によるラインップ説明会が行われた。オペラ芸術監督の大野和士氏よりロシア・オペラをレパートリーに加えるというプランや三部門連携にも取り組みたいとの発言があり、これはバレエにも大いに関係のある部分。今後、いい形でその連携ができたらと期待したいところである。
バレエは、今期が芸術監督最終のシーズンとなる大原永子氏より、1999年のバレエ・ミストレス時代からの、自身の「集大成」と語るプログラム。演劇的な性格の強い英国版の作品が並ぶ。好きだと語っているマクミラン版の『ロメオとジュリエット』や『マノン』はドラマティック・バレエとして魅力的な作品なので、ダンサーの表現力をより高めて仕上げたいとのこと。日本でも定着しているクリスマス・シーズンの『くるみ割り人形』は引き続きイーグリング版が3年目の上演となる。

会見で概要を語る大原永子芸術監督
ニューイヤー・バレエでは、バランシンのシンプルで美しい作品『セレナーデ』が久し振りの再演、ニューイヤーらしい舞台になりそうだ。また、昨年の『不思議の国のアリス』(新国立劇場初演)や現在開幕中の劇団四季『パリのアメリカ人』を振付けたクリストファー・ウィールドンの2006年初演作品『DGV Dance á Grande Vitesse』は当劇場初演。この作品は元々TGVのパリ・リール区間開通を記念して委嘱された音楽に振付けたもので、旅をテーマとしたもの。バレエ・リュスの『青列車』から始まる旅をテーマとしたバレエに連なる作品とも言えるかもしれない。
ウィールドン作品では、昨シーズン最大の話題を呼んだ『不思議の国のアリス』の再演も発表された。メインキャストに若手の起用も考えているようだ。新たな才能のきらめきを期待したいところ。その他、人気演目『ドン・キホーテ』も再演される。
ダンスは、2019年ニューイヤー・バレエで衝撃的な『火の鳥』を振付けた中村恩恵の再演作『ベートーヴェン・ソナタ』、そしてDance to the Future2020が喜ばしいことに復活。遠藤康行をアドヴァイザーに迎え、内容発表が待たれる。小野寺修二『ふしぎの国のアリス』も再演。『アリス』繋がりでバレエの観客がダンスに触れるきっかけになったらと切に願う。
続いて開催された個別記者懇談会では、大原氏が考える新国立劇場バレエ団の日本人ならではの魅力についてにも話が及んだ。そうしたバレエ団の魅力や新たな才能を見出す事のできる実りの多いシーズンを期待したい。
芳賀直子(舞踊史研究家)
会見の模様はこちらよりご覧ください。
<バレエラインアップ>会場は全てオペラパレス
■ロメオとジュリエット(ケネス・マクミラン振付)
2019年10月19日(土)14:00/20日(日)13:00/20日(日)18:30/24日(木)13:00/26日(土)13:00/26日(土)18:30/27日(日)14:00
■くるみ割り人形(ウエイン・イーグリング版)
2019年12月14日(土)13:00/14日(土)18:00/15日(日)13:00/15日(日)18:00/17日(火)13:00/21日(土)13:00/21日(土)18:00/22日(日)13:00/22日(日)18:00
■ニューイヤー・バレエ~『セレナーデ』(ジョージ・バランシン振付)『ライモンダ』よりパ・ド・ドゥ(マリウス・プティパ振付/牧阿佐美改訂振付・演出)『海賊』よりパ・ド・ドゥ(マリウス・プティパ振付)『DGV Dance á Grande Vitesse』(クリストファー・ウィールドン振付)
2020年1月11日(土)14:00/12日(日)14:00/13日(月・祝)14:00
■マノン(ケネス・マクミラン振付)
2020年2月22日(土)14:00/23日(日)14:00/26日(水)19:00/29日(土)14:00/3月1日(日)14:00
■ドン・キホーテ(マリウス・プティパ、アレクサンドル・ゴルスキー振付/アレクセイ・ファジェーチェフ改訂振付)
2020年5月2日(土)14:00/3日(日・祝)14:00/4日(月・祝)14:00/5日(火・祝)14:00/9日(土)14:00/10日(日)14:00
■不思議の国のアリス(クリストファー・ウィールドン振付)
2020年6月5日(金)19:00/6日(土)13:00/6日(土)18:30/7日(日)14:00(貸切)/10日(水)~12日(金)のうち1日程/13日(土)13:00/13日(土)18:30/14日(日)14:00
<ダンスラインアップ>
■中村恩恵×新国立劇場バレエ団『ベートーヴェン・ソナタ』(中村恩恵振付) 会場は中劇場
2019年11月30日(土)14:00/12月14日(土)18:00/15日(日)13:00/15日(日)18:00/17日(火)13:00/21日(土)13:00/21日(土)18:00/22日(日)13:00/22日(日)18:00
■新国立劇場バレエ団『Dance to the Future2020』 会場は小劇場
2020年3月27日(金)19:00/28日(土)13:00/28日(土)18:00/29日(日)14:00
■小野寺修二×カンパニーデラシネラ『ふしぎの国のアリス』 会場は小劇場
2020年6月20日(土)14:00/21日(日)14:00/26日(金)19:00/27日(土)14:00/28日(日)14:00
芳賀直子 Naoko Haga
舞踊史研究家。舞踊、中でもバレエ史を中心に研究を行っている。専門はバレエ・リュス、バレエ・スエドワ。明治大学大学院文学部演劇学専攻博士課程前期修了(文学修士取得)。1998年のセゾン美術館における『バレエ・リュス』展での仕事を皮切りに、舞踊史研究家として執筆、講演、展覧会監修等を行うようになる。雑誌、新聞、プログラム、各種媒体への執筆活動と共に、そのエレガントでアグレッシブな独特の語り口による講演の人気も高い。大正大学客員准教授も務めている。著書は『バレエ・リュス~その魅力のすべて~』(国書刊行会)、『バレエ・ヒストリー~バレエの誕生からバレエ・リュスまで~』(世界文化社)他。最新刊は『祇園祭の愉しみ~山鉾と御神輿の悦楽~』(PHP出版)。