2019 / 03 / 29
リッカルド・ムーティ「イタリア・オペラ・アカデミー in 東京」が『リゴレット』作品解説でスタート

©東京・春・音楽祭実行委員会/青柳 聡
開催15年目の節目を迎えている「東京・春・音楽祭」(3月15日~4月14日)。今年新たに加わった注目企画、巨匠リッカルド・ムーティによる「イタリア・オペラ・アカデミー in 東京」が、3月28日の『リゴレット』作品解説でスタートした(東京文化会館大ホール)。
アカデミーは2015年からムーティがイタリア・ラヴェンナで開いている教育プロジェクトの日本版。次世代を担う若い指揮受講生たちに、イタリア・オペラ、特にジュゼッペ・ヴェルディの魂を伝えようというもの。ムーティによれば、それは彼に与えられた「ミッション」だ。今年は『リゴレット』を題材に、4月4日の公演(演奏会形式)に向けての1週間のリハーサルを通じて、受講生たちを指導してゆく。初日28日の作品解説は一般公開。翌週の公演の事前レクチャーも兼ねた格好だ。
解説の中でムーティが繰り返し熱く語ったのは、「悪しき伝統」に惑わされずに、ヴェルディの書いたとおりに演奏しなければならないのだということ。たとえば、効果的に聴衆受けすることを狙い、アリアの一部を高い音に置き変えて歌うことは、ヴェルディの意図に反する行為だ。それがあたかもイタリア・オペラの伝統であり、歓迎されるべき習慣として世界中に広まってしまっていることをムーティは嘆く。モーツァルトやワーグナーではそんなことをしないのに、なぜヴェルディだけ好き勝手に歌うのか?と。解説後半には公演の出演歌手も登場。ムーティ自らピアノを弾きながら、その「悪しき伝統」と「真のヴェルディ」の違いを実例として示した。
あらすじなどにはほとんど触れない。音楽家だから当たり前なのだけれど、オペラを「台本」でなく「音楽」で語る。ユーモアもたっぷり交えながらの解説に、大ホール1階席をほぼ満員に埋めた熱心なファンたちは大いに湧いた。レクチャーなのに。さすがだ。もしこれが毎月あったら、日本のオペラ・ファンは一気に10倍に増えるのではないだろうか。
29日の朝からは、いよいよアカデミーのレッスンが始まる。
宮本明(音楽ライター)
<リッカルド・ムーティ「イタリア・オペラ・アカデミー in 東京」今後の予定>
2019年 ジュゼッペ・ヴェルディ 歌劇《リゴレット》
●2019年3月29日(金)~4月3日(水)
リハーサル 東京藝術大学 第6ホール(音楽学部構内)
※全てのリハーサルに同時通訳が付きます。
※聴講生の申込みは締め切りました。
リッカルド・ムーティ指揮 歌劇《リゴレット》
(演奏会形式/抜粋上演/字幕付)
●2019年4月4日(木)19:00開演(18:00開場)東京文化会館 大ホール
指揮:リッカルド・ムーティ
管弦楽:東京春祭特別オーケストラ(今回の公演のために特別に編成された日本の若手奏者たちによるオーケストラ)
フランチェスコ・ランドルフィ(リゴレット/バリトン)
ジョルダーノ・ルカ(マントヴァ公爵/テノール)
ヴェネーラ・プロタソヴァ(ジルダ/ソプラノ)
アントニオ・ディ・マッテオ(スパラフチーレ/バス)
ダニエラ・ピーニ(マッダレーナ/メゾ・ソプラノ)
向野由美子(ジョヴァンナ/メゾ・ソプラノ)
望月一平(モンテローネ/バリトン)
氷見健一郎(牢番/バス)
※「アカデミー生」以外の方もご鑑賞いただけます。
http://www.tokyo-harusai.com/program/page_5970.html
<アカデミーに関する問い合わせ>
東京・春・音楽祭実行委員会
リッカルド・ムーティ「イタリア・オペラ・アカデミー in 東京」
academy@tokyo-harusai.com
<チケットのお申し込み>
東京・春・音楽祭チケットサービス 03-6743-1398
http://www.tokyo-harusai.com/
宮本明 Akira Miyamoto
東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。『レコード芸術』『音楽の友』『GRAND OPERA』など音楽雑誌の編集部勤務を経て、2004年からフリーランスの音楽ライター、編集者として活動。雑誌、インターネット媒体への寄稿、音楽書籍の編集、CD録音の監修・制作など、形態を問わず音楽関連の仕事を手がけている。