2019 / 04 / 25
『ショパン―200年の肖像』展-初来日の自筆譜2点にも注目!

左より、会見に登壇したマリア・ジュラフスカ(ポーランド広報文化センター所長)、梶村英樹(日本ショパン協会 事務局長)、ヤツェック・イズィドルチク閣下(駐日ポーランド共和国特命全権大使)、高士薫(『ショパン―200年の肖像』展実行委員会会長/神戸新聞社代表取締役会長)、高橋多佳子(ピアニスト)

明治期に輸入されたショパンの楽譜など
日本・ポーランド国交樹立100周年を記念して、『ショパン―200年の肖像』展が今秋から開催される。その記者発表が、4月9日に駐日ポーランド共和国大使館で行われた。
会期中は、ショパンが生まれ育ったワルシャワ、活躍したパリの風景や歴史的・文化的背景の解説とともに、自筆譜、直筆の書簡、肖像画、彫刻、書籍など約250点が展示される予定だ。中でも、自筆譜2点が日本初公開されることは特筆に値する(エチュードOp.10-8、ポロネーズOp.71-3、国立フリデリク・ショパン博物館所蔵)。エチュードOp.10-8は出版されたものよりテンポ指示が速く、左手伴奏や右手和音の音が変更されているなど、貴重な作曲過程が見られる。またその優美な筆致や、友人の画家アリ・シェフェールが描いた肖像画の眼差しから、珠玉の音を紡ぎ出した作曲家の魂が感じられるだろう。
さらに、ショパンが受容された歴史にも触れることができる。世界的ピアニストを数多く輩出してきたショパン国際ピアノコンクールの映像や歴代のポスター、ショパンや楽曲からインスピレーションを受けた彫刻や絵画などは、ショパンの美意識があらゆる芸術家たちを触発しきたことを物語る。またショパンが日本に初めて紹介された明治時代から昭和までの関連資料や楽譜、日本最初のショパン弾きとして活躍した澤田柳吉の演奏音源、現在人気を博している漫画『ピアノの森』の原画などから、日本でショパンが深く愛されてきた軌跡もたどってみたい。
内なる心の声、故郷への愛、人間としての誇りが刻まれたショパンの音楽は、ポーランドと日本両国だけでなく世界中の人々を繋いできた。繊細さと精神力の強さが共存する多面的な「人間、ショパン」が展示品からも感じ取れるだろう。本展は2019年10月兵庫県立美術館を皮切りに、1年かけて福岡・東京・静岡を巡回する。ショパンをテーマにした演奏会などの関連イベントも楽しみだ。
菅野恵理子(音楽ジャーナリスト)
『ショパン―200年の肖像』展
“Chopin – Portrayed in 200 Years of Images” Exhibition
2019年10月12日(土)~12月1日(日) 兵庫県立美術館
2020年2月1日(土)~3月22日(日) 久留米市立美術館
2020年4月~6月 練馬区立美術館
2020年8月~9月 静岡市美術館
菅野恵理子 Eriko Sugano
音楽ジャーナリストとして国際コンクール・海外音楽教育の取材や、音楽と社会をつなげることをテーマに調査研究・講演・雑誌寄稿などを行っている。著書に『ハーバード大学は「音楽」で人を育てる』『未来の人材は「音楽」で育てる』(共にアルテスパブリッシング)、インタビュー集『生徒を伸ばす!ピアノ教材大研究』(ヤマハミュージックメディア)、オンライン連載に『海外の音楽教育ライブリポート』(ピティナHP)などがある。上智大学外国語学部卒業。在学中に英ランカスター大学へ交換留学し、社会学を学ぶ。全日本ピアノ指導者協会研究会員。