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新春特集~アーティストがみる世界
初回放送 1月10日(水) 21:00~22:10
「ベルカントの新女王」の名をほしいままに、スター街道をばく進中の美貌のソプ ラノ、オルガ・ペレチャツコ=マリオッティ。2017年春の新国立劇場『ルチア』でも、 超絶技巧を要するスリリングな「狂乱の場」のアリアを、自在なコントロールで 歌ってみせたのが記憶に新しいところ。その彼女が最も得意とするのが、声の華や かな装飾技術を駆使するロッシーニの作品。番組は、2014年にボローニャで ロッシーニ・アルバム(ソニークラシカル)を録音した直後の彼女が、公開収録の 形で行なったトークショー仕立てのコンサートを用いて制作されたドキュメンタリー。 ペレチャツコの軽やかで美しいロッシーニと共に、見どころは2017年3月に89歳で他界したロッシーニの最高権威アルベルト・ゼッダとの共演。二人は互いに寄せる信頼を熱く語っている。ペレチャッコの国際的なキャリアのスタートが、2006年にペーザロのロッシーニ・アカデミーへの参加だったことはよく知られているが、そのきっかけを作ったのが、アカデミーの学長でもあったゼッダその人だった。ゼッダは、ドイツでオーディションを受けに来た彼女をひと声聴いて涙し、すぐにペーザロへ招いたのだと述べている。ゼッダによるオーケストラ・リハーサルのシーンも紹介され、巨匠最晩年の音楽作りやロッシーニ観の一端を垣間見ることができ、たいへん貴重。ペレチャツコは1980年サンクトペテルブルク生まれ。幼い頃からマリインスキー劇場の児童合唱団で歌っていたものの、本格的に声楽を学んだのは、22歳でベルリンのハンス・アイスラー音楽大学に入学してから。2005年から3年間ハンブルク州立歌劇場オペラ・スタジオに所属。2007年にプラシド・ドミンゴが主宰する「オペラリア」コンクールで第2位を受賞し注目された。ロッシーニ、ドニゼッティ、ベッリーニらのベルカント・オペラは彼女の十八番。さらに、ヘンデル、モーツァルトからワーグナー、R.シュトラウスまで幅広いレパートリーで活躍している。
[出演]オルガ・ペレチャツコ=マリオッティ(ソプラノ)アルベルト・ゼッダ(指揮)ボローニャ歌劇場管弦楽団及び同合唱団、ニコレッタ・メッツィーニ(ピアノ)
[演目]ロッシーニ:歌劇『セミラーミデ』~セミラーミデのアリア「麗しき光が」/歌劇『セビリアの理髪師』~ロジーナのアリア「今の歌声は」/歌劇『タンクレディ』~アメナイーデのアリア「わが不幸な人生よ」
/歌劇『イタリアのトルコ人』~フィオリッラのアリア「このわびしく質素な服が」
[収録]2014年11月マンゾーニ劇場(ボローニャ)
初回放送 1月12日(金) 21:00~22:00
カティア・ブニアティシヴィリは現在最も注目される人気女性ピアニスト。この番組 は、2015年10月、クリミア危機に揺れるウクライナの首都キエフを訪れた彼女が、 モデスト・ムソルグスキー作曲の『展覧会の絵』を弾いたコンサートを中心にしたド キュメンタリー。自分の裡(うち)へ向かって深く沈潜するような繊細なタッチは、 ムソルグスキーが友人の遺作展で見た絵の印象をもとにこの作品を作曲したことを、 あらためて思い出させる。それだけではなく、当地キエフに関わる終曲「キエフの大 門」のブニアティシヴィリの演奏は、希望の光が強く差し込むような解釈だが、彼女 はこの曲について、「民主主義の象徴であり、善の勝利だ」と述べている(『レコード芸術』2016年6月号)。 番組は、まさにそのような発言を追うかのように、キエフの中央軍用病院を訪問した様子や、キエフのストリートで建物に壁画を描くウォール・アーティストとの対話、 2014年のウクライナの反政府デモのヒーローだった現キエフ市長のヴィタリ・クリチコ(元プロ・ボクシングのヘビー級世界チャンピオン!)へのインタビューも交えて、 彼女の社会派の一面も描き出す。ブニアティシヴィリは1987年ジョージア生まれの30歳。フォトジェニックな妖艶さゆえに男性陣の人気が先行している観もあったが、 2017年11月の来日公演では、男性以上に女性ファンの熱狂的な反響もうかがわれ、彼女の音楽の真価に対する共感は確実に広がっているよう。
[出演] カティア・ブニアティシヴィリ(ピアニスト)オレクサンドル・コルバン(ウォール・アーティスト) ヴィタリ・クリチコ(キエフ市長)
[演目]ムソルグスキー:組曲『展覧会の絵』(「プロムナード」「グノーム」「古城」「テュイルリーの庭」「ビドロ(牛車)」「卵の殻をつけた雛の踊り」「サムエル・ゴールデンベルクとシュムイレ」
「リモージュの市場」「カタコンベ~ローマ時代の墓」「バーバ・ヤガー~鶏の足の上に建つ小屋」「キエフの大門」)
[収録]2015年10月キエフ国際芸術文化センター、キエフ中央軍用病院ほか(ウクライナ)
[監督]エルネスティーネ・ベッチャー
初回放送 1月17日(水) 21:00~22:00
快進撃を続けるユジャ・ワン。華やかな活躍の裏には、世界を飛び回る
トップ・アーティストならではの苦悩も。旅に明け暮れる日々のなか、彼女が見つめるものは?
情熱的に訴えかける音楽と聴く者を圧倒する超絶技巧。さらにはピアニ
ストとしては異例の極端に高いハイヒールにセクシーなタイトドレス。
ファンの耳と目を虜にする中国人ピアニスト、ユジャ・ワン。リサイタル、協
奏曲、室内楽と、年間に百数十回もの本番をこなす彼女の生活は、文
字どおり世界中を飛び回る旅の連続。カメラは、そんな彼女の旅を追っていく。
グスターボ・ドゥダメル&ロサンジェルス・フィルとラフマニノフのピアノ協奏曲第3番を弾いて、ニューヨークからカンザスシティへ。
チューリヒに飛んでリオネル・ブランギエ&トーンハレ管弦楽団とのプロコフィエフのピアノ協奏曲第2番。
パリでチェロのゴーティエ・カプソンとの室内楽リサイタル…。目的地に降り立つとすぐに、会場でのピアノ選びに始まり、リハーサル、本番、終演後のサイン会、
テレビ収録や雑誌のインタビューと、さまざまな仕事が彼女を待ち構えている。どれだけ経験を重ねてもけっして消えることのない本番前の不安。
日々の生活を客観視した時によぎる違和感。好奇の目への疑念。そして14歳から一人暮らしを続ける孤独。超人気ピアニストならではの苦悩と、
それを乗り越えてアーティストであり続けるユジャ・ワンの強さを描くドキュメンタリー。ユジャ・ワンは1987年北京生まれ。6歳からピアノを弾き始め、
北京の中央音楽学院で学んだのち、12歳の時に、カナダと中国の文化交流プログラムとして始まったカルガリーのモーニングサイド夏季プログラムに参加、
その後同地のマウント・ロイヤル・カレッジに、最年少の学生として入学した。2001年にはスタインウェイの契約アーティストとなり、
翌年フィラデルフィアのカーティス音楽院に移ってラン・ランの師でもあるゲイリー・グラフマンに師事。2008年までの同校在学中から本格的な演奏活動を開始している。
2009年にはドイツ・グラモフォンと専属契約を結び、リリースした6枚のソロ名義のアルバムはいずれも高い評価を獲得。日本とも早い時期から関わりがあり、
2001年の第1回仙台国際音楽コンクールでは第3位に入賞。いま最も輝いている女性ピアニストの一人。
[出演]ユジャ・ワン(ピアノ)、グスターボ・ドゥダメル(指揮)ロサンジェルス・フィルハーモニック、リオネル・ブランギエ(指揮)チューリヒ・トーンハレ管弦楽団、ゴーティエ・カプソン(チェロ) 他
[演目]セルゲイ・ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第3番Op.30、セルゲイ・プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第2番Op.16、セルゲイ・ラフマニノフ:チェロ・ソナタ ト短調Op.19 他
[監督]アナイス・スピロ&オリヴィエ・スピロ
[制作]2014年
初回放送 1月19日(金) 21:00~22:25
現代の伝説となったパーカッション協奏曲がついにクラシカ・ジャパン で! 鬼才マルティン・グルービンガーの圧巻のパフォーマンス。 マリン バ、ヴィブラフォン、グロッケンシュピール、カウベル、クロタル…。さまざ まな打楽器を周囲にぐるりと並べたコックピット状のスペース。1983年 ザルツブルク生まれの打楽器奏者マルティン・グルービンガーがまずド ラムを一撃、すぐに滑るようにマリンバを叩き始めるや、エキサイティン グなリズムの饗宴『フローズン・イン・タイム』が始まる。テル・アヴィヴ出 身の作曲家アヴネル・ドルマン(1975年生まれ)のパーカッション協奏 曲『フローズン・イン・タイム』は、2007年にグルービンガーとシモーネ・ヤング指揮ハンブルク・フィルハーモニー管弦楽団によって初演された。作曲者によれば、 『フローズン・イン・タイム』は、まだ陸がひと続きだった有史以前から現代までの地球の、それぞれの場所と時間のイメージを描いた作品です。 第1楽章「インドアフリカ」、第2楽章「ユーラシア」、第3楽章「南北アメリカ」。各楽章にはそれぞれの地域の民族の音楽のモティーフも採り入れられている。 初演だけで演奏されないまま塩漬けになってしまう現代曲も少なくないなか、この作品は2017年までに世界中で120回以上も再演されている人気曲。 そのほとんどでソロを叩いているのがグルービンガー。2011年には彼とジョナサン・ノット指揮NHK交響楽団で日本初演され、その痛快なパフォーマンスがファンの間で語り草になっていた伝説の注目曲が、 ついにクラシカ・ジャパン登場。名門チューリヒ・トーンハレ管弦楽団と若き首席指揮者リオネル・ブランギエの強力サポートを得て、グルービンガーのバチさばきが冴え渡る。アンコールの、 オーケストラの打楽器メンバーとのセッションもキレキレ!そんなリズムの奔流のあとで聴くプログラム後半の『春の祭典』も、もはや古典の名曲として整然と佇んでいるような、堂々とした風格を感じさせる好演。
[演目]ドルマン:パーカッション協奏曲『フローズン・イン・タイム』、イーゴル・ストラヴィンスキー:バレエ『春の祭典』
[指揮]リオネル・ブランギエ
[演奏]チューリヒ・トーンハレ管弦楽団、マルティン・グルービンガー(パーカッション)
[収録]2016年9月14日トーンハレ(チューリヒ)
初回放送 1月24日(水) 21:00~22:20
ヴァイオリン界の風雲児が挑んだバッハのヴァイオリン協奏曲全曲!エッジ の効いた、しかし気を衒わない新しいバッハに、シャンゼリゼ劇場は興奮の るつぼ!1985年セルビア生まれのヴァイオリン奏者ネマニャ・ラドゥロヴィチ は、ロングヘアをなびかせたロックスターのようないでたちと、自由奔放な 超絶技巧で聴く者を虜にする「現代のパガニーニ」。クラシック音楽界に新 風を吹き込むヴィヴィッドなアーティスト。この番組は、彼がパリのシャンゼリ ゼ劇場でヨハン・セバスティアン・バッハのヴァイオリン協奏曲全3曲を弾いたコンサート。 共演は、彼が組織した「アンサンブル・ドゥーブル・サンス」(フランス語で「ダブル・ミーニング」の意味)。 セルビアとフランス、2つの国の音楽家たちで構成された若いグループが、モダン楽器によるアンサンブルでバッハに挑んでいる。 ラドゥロヴィチの演奏スタイルはいつもどおりアグレッシブ。しかし解釈自体はけっして奇抜で先鋭的な思いつきの手すさびではなく、 エッジの効いたメリハリある新しいバッハを聴かせてくれる。演奏中の終始柔和な表情には音楽をプレイする喜びがあふれていて、 バッハの音楽の力が彼の本質を自然とすくい取っているのかもしれない。しかし、プログラム最後の『トッカータとフーガ』は別物。 バッハから自由に解き放たれたダイナミックな振る舞いは、(アンコールの『四季』や『チャールダーシュ』も併せて)「これぞネマニャ!」。彼らしいエネルギッシュな熱演が快哉を呼ぶ。
[演目]J・S・バッハ:ヴァイオリン協奏曲第2番ホ長調BWV.1042、アンリ・カサドシュ(伝ヨハン・クリスティアン・バッハ):ヴィオラ協奏曲ハ短調(アレクサンダー・セドラー編曲)、
J・S・バッハ:ヴァイオリン協奏曲第1番イ短調BWV.1041/2つのヴァイオリンのための協奏曲ニ短調BWV.1043/トッカータとフーガ ニ短調BWV.565(アレクサンダー・セドラー編曲)、
ヴィヴァルディ:ヴァイオリン協奏曲集『四季』より第2番ト短調「夏」RV.315~第3楽章、モンティ:チャールダーシュ
[演奏]ネマニャ・ラドゥロヴィチ(ヴァイオリン)ティヤナ・ミロシェヴィチ(ヴァイオリン)アンサンブル・ドゥーブル・サンス
[収録]2016年11月5日シャンゼリゼ劇場(パリ)
すでに現代を代表する名演奏家の風格を十分に感じさせる一方で、2017年はNHK大河ド ラマ「おんな城主直虎」テーマ曲で華麗なピアノ・ソロを披露するなど、大活躍のラン・ランは 2015年の5月末から6月初旬、パリのバスティーユ・オペラで、ショパンの『スケルツォ』全4曲と チャイコフスキーの組曲『四季』全曲をカップリングしたCDを録音。この番組は、その数週間後 にCDと同じプログラムで開かれた、世界遺産ヴェルサイユ宮殿「鏡の間」でのプライベート・リサ イタル。聴衆わずか100人ほどという、なんとも贅沢なリサイタルを特等席でお楽しみいただけ る。感じた音楽を鍵盤上の10本の指で思うままに表現できる才能は天与のもの。カメラが捉 える表情や手元のアップからは、その感性が彼の全身に宿っているものなのだということが如 実に伝わってくる。音楽の喜びに満ちた彼の表情を見ているだけでこちらも幸せになれる映像。
[演目]ショパン:スケルツォ全曲(第1番ロ短調Op.20/第2番変ロ短調Op.31/第3番嬰ハ短調Op. 39/第4番ホ長調Op.54)、チャイコフスキー:組曲『四季』Op.37b(1月「炉端にて」/2月「謝肉祭」 /3月「ひばりの歌」/4月「松雪草」/5月「白夜」/6月「舟歌」/7月「刈り入れの歌」/8月「収穫の歌」 /9月「狩りの歌」/10月「秋の歌」/11月「トロイカで」/12月「クリスマス週」)
[ピアノ]ラン・ラン
[収録]2015年6月22日ヴェルサイユ宮殿「鏡の間」(フランス)