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来日指揮者・演奏者
初回放送11月15日(金) 21:00~22:35
ティーレマンは2000年10月の定期演奏会でウィーン・フィルを初めて指揮。その後の両者の関係は良好で、2019年の「ニューイヤーコンサート」を指揮。また、ウィーン国立歌劇場でも、創建150周年当日の記念公演『影のない女』(R・シュトラウス)の指揮を任されるなど、いまやウィーン・フィルに欠かすことのできない指揮者の筆頭格となっている。この日のメイン・プログラムはチャイコフスキーの交響曲第6番『悲愴』。ウィーン・フィルの深い響きと、緩急自在にメリハリをつけたティーレマンの個性的なドライヴが、じつに陶然とした『悲愴』を作り上げている。イェフィム・ブロンフマンをソリストに迎えてのリストのピアノ協奏曲第2番では、ブロンフマンのゴージャスなサウンドの超絶技巧が圧巻。ティーレマンとブロンフマンは、2016年11月に「ザルツブルク・イースター音楽祭 in Japan」でシュターツカペレ・ドレスデンとベートーヴェンの協奏曲を演奏する予定だったが、ブロンフマンが健康上の理由でキャンセル。日本では幻となった両者の共演をお楽しみください。
[演目]ウェーバー:歌劇『オベロン』序曲、リスト:ピアノ協奏曲第2番イ長調 S.125、シューマン:『ウィーンの謝肉祭騒ぎ(幻想的絵画)』op. 26より第2曲「ロマンツェ」、チャイコフスキー:交響曲第6番ロ短調 op. 74『悲愴』
[指揮]クリスティアン・ティーレマン
[演奏]ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、イェフィム・ブロンフマン(ピアノ)
[収録]2015年12月12、13日ムジークフェラインザール(ウィーン)
初回放送11月22日(金) 21:00~22:40
ベネズエラ出身、世界のトップを走り続ける指揮者グスターボ・ドゥダメル。2017年6月のベルリン・フィルとの共演に用意した演目は、ジョン・アダムズとドヴォルザークの名作による、ひとひねりある「アメリカ・プロ」。興奮のステージが実現した。2009年10月にドゥダメルがLAフィル音楽監督就任コンサートで世界初演した、アダムズ「シティ・ノワール」。LAフィルの委嘱で作られた、古き佳きロサンゼルスがテーマとなった作品であり、ドゥダメルのための曲とも言える本作を引っ提げてのベルリン・フィル客演は注目を集めた。果たして、LAフィルの明るく輝かしい色彩とは好対照の、ベルリン・フィルらしい重心の低い渋めの力強いアダムズ演奏が実現した。全力で弾き切る弦にロータリートランペットの音色など、この楽団ならではの面白さを存分に楽しめる。大活躍するサクソフォンは、アメリカの代表的名手ティモシー・マカリスターが、立ち上がりながら圧巻のソロを聴かせる。後半は名作中の名作、ドヴォルザーク『新世界より』。多くの特殊楽器を含む大編成の前半と比べて、後半は通常の編成で人数が減るが、ドゥダメルとベルリン・フィルにかかればそのエネルギーは勝るとも劣らない。この日はドゥダメルのドライヴでオケの能力と表現意欲が全開、第4楽章はとにかくすさまじく、ドヴォルザークらしさとか指揮者の解釈が云々といったことは忘れて、スーパーオーケストラがリミッターを外した演奏ぶりに圧倒されるばかり。聴衆の歓声はブラボーどころか、ほとんど悲鳴のような叫び声と指笛に包まれ、異常な熱狂が生まれた。ベルリン・フィルの何たるかをこの上なく示す、圧巻のライヴ映像。
[演目]ジョン・アダムズ:シティ・ノワール、ドヴォルザーク:交響曲第9番ホ短調Op.95, B.178『新世界より』
[指揮]グスターボ・ドゥダメル
[演奏]ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、ティモシー・マカリスター(サクソフォン)
[収録]2017年6月9日フィルハーモニー(ベルリン)
初回放送11月1日(金) 21:00~22:30
2015年10月に本拠地フィルハーモニーで行われたサー・サイモン・ラトル指揮ベルリン・フィルのベートーヴェン交響曲全曲演奏会より、最初を飾った交響曲第1番と第3番『英雄』。このツィクルスはパリ、ウィーン、ニューヨーク、2016年5月には東京でも開催された。交響曲第1番はベートーヴェン29歳頃の作品。開始の和音から既に独創的で、ハイドンやモーツァルトなどの影響からの脱却を試みていた時期の意欲作。『英雄』と標題が付いた第3番は、巨大な第1楽章、第2楽章が葬送行進曲、第3楽章にはメヌエットの代わりにスケルツォ、最終楽章がロンド風のフィナーレの代わりに変奏曲という、それまでの交響曲の常識を逸脱した斬新な作品。ナポレオンの皇帝即位に激怒したベートーヴェンがナポレオンへの献辞の書かれた表紙を破り捨てたというエピソードで知られる傑作。ラトルの楽しそうな指揮姿とベルリン・フィルの超絶アンサンブル、そしてコンサートマスターを務める樫本大進などソリストとしても活躍する人気奏者たちの熱演は必見。
[演目]ベートーヴェン:交響曲第1番ハ長調Op.21/交響曲第3番変ホ長調Op.55『英雄』(ベーレンライター版/ジョナサン・デル・マー校訂版)
[指揮]サー・サイモン・ラトル
[演奏]ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
[収録]2015年10月12日フィルハーモニー(ベルリン)
ラン・ラン来日
初回放送11月29日(金) 21:00~22:50
1888年4月11日に落成したアムステルダムの名ホール「コンセルトヘボウ(コンサートホールの意味)」と、ホール完成とほぼ時を同じく設立された専属オーケストラ「ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団」。125周年を迎える2013年4月10日には、退位間近のベアトリクス女王と即位を目前に控えたオラニエ公ご夫妻のご臨席の下、華やかな記念ガラ・コンサートが開催された。指揮は、当時の首席指揮者マリス・ヤンソンス。プロコフィエフのピアノ協奏曲第3番はスーパーピアニスト、ラン・ランの超絶技巧で。注目は、チャイコフスキーの弦楽セレナーデより「エレジー」。演奏は、ウィーン・フィルとベルリン・フィル、バイエルン放送響、ロイヤル・コンセルトヘボウから集った「祝祭アンサンブル・ウィーン・ベルリン・ミュンヘン・アムステルダム」。ベルリン・フィルのオラフ・マニンガーやウィーン・フィルのライナー・ホーネック、バイエルン放送響コンサートマスター、アントン・バラコフスキーなど人気アーティストたちを見るのも楽しい。番組ではホールの舞台裏や出演アーティストのコメントの他に、コンセルトヘボウ125年の歴史も紹介。記録映像の数々は必見。
[演目]ワーグナー:楽劇『ニュルンベルクのマイスタージンガー』~第1幕前奏曲、マーラー:歌曲集『さすらう若人の歌』~第2曲「朝の野べを歩けば」/歌曲集『子供の不思議な角笛』~「ラインの伝説」「高い知性への賛美」、プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第3番ハ長調Op.26~第3楽章、チャイコフスキー:弦楽セレナード ハ長調Op.48~「エレジー」、サン=サーンス:序奏とロンド・カプリチオーソ イ短調Op.28、R・シュトラウス:楽劇『ばらの騎士』Op.59からの音楽
[指揮]マリス・ヤンソンス
[演奏]ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団、トーマス・ハンプソン(バリトン)ラン・ラン(ピアノ)ジャニーヌ・ヤンセン(ヴァイオリン)祝祭アンサンブル・ウィーン・ベルリン・ミュンヘン・アムステルダム
[出演]シモン・レイニンク(コンセルトヘボウ事務局長)ヤン・ラース(ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団事務局長)
[収録]2013年4月10日コンセルトヘボウ(アムステルダム)
<あわせてこちらも>ティーレマン&VPO 来日演目にちなんで
初回放送11月5日(火) 21:00~21:55
R・シュトラウスが生きた時代、指揮者・作曲家としての業績、一人の男性としての姿など、さまざまな角度から彼の生涯と作品に光を当て、シュターツカペレ・ドレスデン首席指揮者クリスティアン・ティーレマンのインタビューと『エレクトラ』『英雄の生涯』『ツァラトストラはかく語りき』『アルプス交響曲』『4つの最後の歌』といった彼のリハーサルやコンサートの抜粋で綴るドキュメンタリー。R・シュトラウスの貴重なプライベート映像や写真が満載。作曲家の指揮ぶりがわかる『ティルオイレンシュピーゲルの愉快ないたずら』『ばらの騎士』映像も必見。R・シュトラウスを祖父に持つクリスティアン・シュトラウスの身内ならではのコメントにも注目。
[出演]クリスティアン・ティーレマン(指揮者)クリスティアン・シュトラウス(R・シュトラウスの孫)ブライアン・ギリアム(R・シュトラウスの伝記作家)バルバラ・フレイ(演出家)
[監督]アンドレアス・モレル
[制作]2014年
ベルリン・フィルの来日公演の指揮者
初回放送11月12日(火) 21:00~22:40
50年以上にわたって世界の指揮者界を牽引し続けるズービン・メータの80歳の誕生日を祝って制作された、メータの半生を振り返るドキュメンタリー。盟友バレンボイムや少年時代の友人など多勢の関係者の証言を交えながら、過去の映像と共に巨匠の音楽と人生を辿る。番組の副題には「善き思い、善き言葉、善き行い」という、メータの出自であるパールシー(インドのゾロアスター教)の祈りの言葉が掲げられている。巨匠の人間性と思慮深さにあらためて感銘を受ける90分。
[出演]ズービン・メータ 他
[監督]ベッティナ・エールハルト
[制作]2016年
2017年1月に本拠地コンセルトヘボウで行なわれた定期演奏会の模様。当時の首席指揮者ダニエレ・ガッティによるドビュッシー&ストラヴィンスキー・プログラム。 曲目はクロード・ドビュッシーの『牧神の午後への前奏曲』と『海』、そしてイーゴリ・ストラヴィンスキーの『春の祭典』。1900年前後に書かれた同時代の3曲。美しくもどこかアンニュイで幻想的な主題で始まる『牧神の午後への前奏曲』。このオーケストラ特有の、色彩豊かで潤いのあるサウンドは、映像からもありありと伝わってくる。1914年にドビュッシー自身もこの曲を指揮している。メインの『春の祭典』は、1913年にパリでバレエ・リュスが初演して「音楽史上最大のスキャンダル」とまで呼ばれる大旋風を巻き起こした作品で、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の重要なレパートリーのひとつ。1924年に初演指揮者のピエール・モントゥーが指揮して以来、1926年の作曲者自作自演を含め、このガッティの演奏までおよそ100年間にのべ122回も演奏されている。なにより、楽団の自己紹介に、「ベルベットのような弦」「金管の黄金の響き」「個性的な木管」「国際的に評価される打楽器」と自賛するこのオーケストラの特質が、セクションごとに余すことなく発揮されるタイプの作品。客席からも盛大な拍手が途切れることなく贈られて、このコンビの輝かしい未来は約束されているかのように思われたのだが、周知のように、このコンサートが収録された翌年2018年8月、ガッティは首席指揮者を解任されることになる。この番組は、結果的にだが、解任前の同コンビでの素晴らしい演奏を収めた貴重な記録となっている。
[演目]ドビュッシー:『牧神の午後への前奏曲』/交響詩『海』~3つの交響的エスキス、ストラヴィンスキー:バレエ『春の祭典』
[指揮]ダニエレ・ガッティ
[演奏]ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
[収録]2017年1月コンセルトヘボウ(アムステルダム)