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3大オーケストラ他編
初回放送3月15日(日) 21:00~22:35
剛と柔が理想的にかみ合い、自然の息吹やドラマが生まれる……。逝去が惜しまれる大指揮者ヤンソンスとウィーン・フィルによる貴重な定期公演。2019年、マリス・ヤンソンスが逝去したことは多くのファンを悲しませました。名門ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(VPO)にとってもヤンソンスは信頼する常連客演指揮者で、本作は2017年に行われたVPO定期公演。1曲目はドヴォルザークの交響曲第8番。第3楽章の中間部をはじめ、弦のみずみずしく豊潤な響きはVPOならでは。第2楽章の木管の小技的な面白いアーティキュレーションも実に自然。R.シュトラウス『死と変容』ではピアニシモが聴き手の耳をそばだたせ、壮麗なフォルティシモまで指揮者と楽団が一丸となって広大なレンジを形成。この作曲家の本領であるオペラのような音楽は、演奏によっては表層的なドラマに陥ってしまうところですが、演奏は切実さが音楽に宿り深い感動を与えてくれます。ヤンソンスの十八番のひとつ、ストラヴィンスキー『火の鳥』でも、マエストロの‟剛“とVPOの‟柔”が一段と理想的にかみ合い、ロシアの天才作曲家の若き日の名作をダイナミックに、エキゾチックに、品のよい色彩感あふれる華麗なものに。この曲でも随所に聴かれるVPO木管奏者の妙技が冴え、静かなナンバーはもちろんのこと、全体としてもロシアのオーケストラとはひと味違う、VPO特有の豊かに歌う流儀に寄っているのが印象的。
初回放送3月22日(日) 21:00~22:20
2019年に生涯を閉じた現代の巨匠マリス・ヤンソンスが、その前年の大晦日にバイエルン放送交響楽団とともに開いたガラ・コンサート。亡くなる前年の2018年12月31日、オーケストラの本拠ヘラクレスザールでバイエルン放送交響楽団にとって初の試みとなる大晦日のジルヴェスター・コンサート。記念すべき第1回目の祝祭コンサートに首席指揮者ヤンソンスが選んだのは音楽の世界旅行。(アンコールを除く)全12曲は、ヨーロッパからアメリカ、アジアまで、すべて異なる国々の作曲家の作品で構成された楽しいプログラムを演奏。年が明けて2019年、ヤンソンスはこのバイエルン放送交響楽団とともにヨーロッパ7都市とニューヨークを巡る演奏旅行へ。しかし体調不良のため、ヨーロッパ公演のうち後半の3公演をダニエル・ハーディングが代演。アメリカに渡って2公演のうち、2日目は代役のヴァシリー・ペトレンコが指揮台に。そのあと11月後半に予定されていた日本公演を含むアジア・ツアーも降板。さらにウィーン・フィルへの客演もキャンセルし、代役としてヤクブ・フルシャがウィーン・フィル・デビューを果たしたのを見届けるように、ヤンソンスはサンクトペテルブルクの自宅で76歳の生涯を閉じたのでした。最後に指揮したのが現役の首席指揮者を務めるバイエルン放送交響楽団だったことには、不思議な絆も感じます。
初回放送3月1日(日) 21:00~22:50
1888年4月11日に落成したアムステルダムの名ホール「コンセルトヘボウ(コンサートホールの意味)」と、ホール完成とほぼ時を同じく設立された専属オーケストラ「ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団」。125周年を迎える2013年4月10日に、記念ガラ・コンサートを開催。指揮は、当時の首席指揮者マリス・ヤンソンス。プロコフィエフのピアノ協奏曲第3番はスーパーピアニスト、ラン・ランの超絶技巧で。注目は、チャイコフスキーの弦楽セレナーデより「エレジー」。コンセルトヘボウ125年の歴史や伝説的常任指揮者、ルイ・アームストロングやアレサ・フランクリンなどの記録映像は必見。
バイエルン放送交響楽団編
ドキュメンタリー編
2019年11月に亡くなったヤンソンス、2015年ベルリン・フィル定期での20世紀作品集でその温かい指揮ぶりを偲ぶ。本作はヤンソンスが2015年5月のベルリン・フィル定期演奏会に登壇したときのもの。ヤンソンスの幅広いレパートリーの中から、最初はハンガリーのバルトーク「弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽」。1936年作曲、バルトークの最高傑作のひとつで、現代のベルリン・フィルをもってしても手強い難曲。ヤンソンスは鋭さよりも、温かみや大きさを引き出します。次は、ソヴィエトのショスタコーヴィチ。演奏機会の少ないヴァイオリン協奏曲第2番を、世界最高のヴァイオリニストのひとり、ドイツのフランク・ペーター・ツィンマーマンの独奏で。持ち前の超絶技巧は冴えわたり、切れ味、歌心もすばらしく、暗いモノローグから熱狂の終結まで余裕すら感じさせて圧倒的。ショスタコーヴィチを重要レパートリーとしていたヤンソンスも万全の伴奏。ショスタコーヴィチのユニークな協奏曲の理想的な名演に。最後は、フランスのラヴェルの名作『ダフニスとクロエ』第2組曲。色彩的で温かく大きい、彼の人間味あふれる演奏と、演奏後の穏やかな表情に、ヤンソンスというマエストロの偉大さが象徴されています。