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神奈川県立音楽堂でアルディッティ弦楽四重奏団とダンサー小㞍健太がコラボレーション!小㞍健太にその意気込みを聞いた

 世界に誇る名手が登場し至高の音楽を紹介する、神奈川県立音楽堂の「音楽堂ヴィルトゥオーゾ・シリーズ」。このシリーズに、アルディッティ弦楽四重奏団と小㞍健太が登場するということで注目が集まっている。今年で開館65周年を迎える日本初の音楽専用ホールである神奈川県立音楽堂に、ダンサーが登場することは大変珍しい。  アルディッティ弦楽四重奏団は、難解と思われている20世紀以降の作品を類まれなテクニックと深い作品解釈で演奏し、聴く者にスリリングな体験と新たな発見をもたらしてくれるカルテットとして絶大な人気を誇る。結成から40年あまり、彼らのために作られた作品も多数ある。そんな他の追随を許さない孤高のカルテットと、ネザーランド・ダンス・シアター(NDT)で活躍し、現在はソロとして活動しているダンサー・振付家の小㞍健太がどのようなコラボレーションを展開するのか、小㞍健太に話をうかがった。取材・文:結城美穂子(エディター/音楽・舞踊ライター) 衝撃を受けた、現代作曲家リームの楽曲 「アルディッティ弦楽四重奏団は、以前白井剛さんが共演されていたこともあり知っていましたが、交流はありません。生演奏でのソロの共演は機会が少ないので、是非にとお受けしました。候補曲の中からリームの作品を選びました。一番引っかかったんです。踊るとなるとどうなるかということを考える以前に、すごい衝撃を受けました。向き合いたくないほど難題だけれど気になってしまって」  コンサートでの上演予定4作品のうち、小㞍が登場するのは後半の2曲。ヴォルフガング・リームの『Geste zu Vedova ~ヴェドヴァを讃えて~』(2016年)と『弦楽四重奏曲第3番〈胸裡〉』(1976年)。リームは1952年、ドイツのカールスーエ生まれ、多作で録音も多く、現在も活動を続けるまさに現代作曲家だ。2作品は作曲年代が離れていることもあるが作風が異なる。これらを関連づけた構成にするとのこと。 「リームの作品はこれまで聴いたことはありませんでした。音楽学者の沼野雄司さんにリームは後期ロマン主義に続く新ロマン主義の作曲家であり、なぜそう言われているのか、ということと、さらに楽譜を見ながらリームの音楽の特徴を教えてもらいました。『ユニゾンがバラバラになってここで第1、第2ヴァイオリンに引き継がれまた一緒になる』、とか『不協和から透き通った音に変わるここの部分は重要』というように。音楽を聴いているだけでは限界があると感じたので、教えを受けることで創造の材料となる情報を得ることができました。最初は楽譜を目で追っていくのすら大変だったのですが、アドヴァイスをいただきながら楽譜を読み解いていくことで違う視点を得ることができ、音楽の印象や解釈が変わってきました」 舞台外のパフォーマンスがポイントに 「最初の『Geste zu Vedova~ヴェドヴァを讃えて~』は、近年の楽曲ということもあり、プログラマーと組んで現代的な手法で振付アイディアを取り入れたインスタレーションにするつもりです。また観客はコンサートホールでダンスに触れるわけですから、初めてダンスを見る方もいらっしゃるかもしれない。二部で僕が踊る前に是非ダンスに触れていただけたらと思い、観客のみなさんに近いところで動いて、私たちの存在を共有したいと考えています。後半の『第3番<胸裡>』は、 人が胸に秘めている感情をテーマに舞台上で展開するので、そうすることで、舞台にいる僕の表現を身近に感じていただけるかなと思っています」 「アルディッティのメンバーとは同じ空間に響く音楽でコラボレーションを目指します。彼らの呼吸で僕は音を予感できるし、もしかしたら彼らは本番でリハーサルとは違うことをしているかもしれない。その場で起きたことに対応する余地は残してあります。そういう予定調和でないことは大好きです」  コンテンポラリー・ダンスを教える機会も多い小㞍。自身はクラシック・バレエの基礎を身につけ、キャリアの最初はクラシック・バレエのダンサーとして活動していた。その後、コンテンポラリー・ダンスの作品のみを上演する、20世紀を代表する振付家、イリ・キリアンが芸術監督を務めるNDTへと飛び込み、コンテンポラリー・ダンスを踊るようになった。 「コンテンポラリー・ダンスを踊るダンサーは、身につけた何かしらのメソッドやバックグラウンドに反発してコンテンポラリーへとやってきます。ヨーロッパでは、コンテンポラリー・ダンスの元は主としてバレエ・テクニックと捉えられています。コンテンポラリー・ダンスは、自身が持つ下地(僕の場合はクラシック・バレエ)とは異なる身体性や表現を求めて枝分かれして新たなメソッドを生み、それを確立したり壊したりして探求している過程の姿だと僕は思います」  現代音楽とコンテンポラリー・ダンスは、それぞれクラシック音楽とクラシック・バレエが辿りついた現在の姿、ということになる。それぞれのジャンルの最先端に立つ生身のアーティストの邂逅という貴重な瞬間、そこで何が生まれるのか期待せずにはいられない。 アルディッティ弦楽四重奏団×小㞍健太(ダンス) 出演:アルディッティ弦楽四重奏団、小㞍健太 音楽堂ヴィルトゥオーゾ・シリーズ25 日時:2019年11月30日(土)15:00 会場:神奈川県立音楽堂 https://www.kanagawa-ongakudo.com/detail?id=35999 他都市公演 日時:2019年12月1日(日) 17:00 会場:愛知県芸術劇場 小ホール https://www-stage.aac.pref.aichi.jp/event/detail/000172.html 筆者紹介 結城美穂子 Mihoko Yuki 出版社勤務を経てフリーランスのエディター/ライターとして活動中。クラシック音楽、バレエ、ダンスを得意ジャンルとする。バレエ・ダンス情報誌『ダンツァ』元編集長。単行本・ウェブマガジン・公演パンフレットの編集と執筆、またオペラ、バレエの初心者向け鑑賞ガイドのレクチャー講師を務める。

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映画『マシュー・ボーンIN CINEMA/白鳥の湖』が全国順次公開!公開を記念してバレエダンサー首藤康之のトークイベントが開催

 バレエ界の奇才、マシュー・ボーンが演出・振付を務めた『マシュー・ボーンIN CINEMA/白鳥の湖』が、10月25日(金)よりYEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開された。ローレンス・オリヴィエ賞を5回受賞、トニー賞の優秀振付賞と最優秀ミュージカル演出賞の両方を受賞した唯一のイギリス人、マシュー・ボーンの代表作『白鳥の湖』。数々の名作を独自の解釈で生まれ変わらせてきたマシュー・ボーンならではの“男性のスワン”というコンセプトは世界中の人々を魅了し、今年の7月に日本で公演された際にも完売が続出するほどの人気ぶりを見せた。そしてついに、その大傑作が映画館のスクリーンに舞い戻る。本作の公開を記念して、バレエダンサーの首藤康之とジャーナリストの佐藤友紀を迎えたトークイベントが行われた。 ダンスに重きを置いた新演出版  マシュー・ボーンの『白鳥の湖』に出演経験のある首藤が、初めて同作を観たのはレーザーディスクだったという。最初は到底踊れないと思ったそうだが、ある時から自分も出たいという思いが芽生え、実際に出演するきっかけとなったのが今回の対談相手の佐藤だった。首藤はその経緯について「佐藤さんのインタビューで仕事をしたい相手を聞かれてマシュー・ボーンと答えたら、その後、『ザ・カーマン』でマシュー・ボーンが来日したときに、佐藤さんがマシューに僕のことを話してくれて、対談をセッティングしてくれた。それがきっかけで『白鳥の湖』に出演することになった」と語った。また、『白鳥の湖』に何度も足を運んでいる佐藤は、マシュー・ボーンから「オフィシャル・ストーカー」と呼ばれたエピソードを語り、「この作品に携わる人たちは、自分が感動したからみんなに観せたいという熱意を原動力にやっている。これほど幸せな作品はない」と話した。  「多くの『白鳥の湖』があるが、これほど音楽で嗚咽が出る『白鳥の湖』はない。チャイコフスキーは本当はこういうものを表現したかったんじゃないかというものがそのまま形になっている」と2人が語るマシュー・ボーンの『白鳥の湖』。新演出版のみどころを聞かれた首藤は「毎回、マシューはダンサーに合わせて振り付けを変えているが、今回は大きく変わった印象。これまではアクトに重きを置いていたが、今回はダンスに重きを置いている」とコメント。  王子役のリアム・ムーアは12歳のときに『ビリー・エリオット』に出演してキャリアをスタートさせたが、当時、首藤も佐藤もその舞台を観ており、そのリアムが王子役として『白鳥の湖』に出演するようになったことに感慨深げ。  佐藤から『白鳥の湖』にまた出演する気はないかと聞かれた首藤は、「若い人に演じて欲しい」としながらも、執事役を演じるのはと聞かれると、「執事役ならいいかも」と笑って答え、世界で唯一、スワンと王子を演じた首藤が演じる執事が観られることに期待した客席からは拍手が巻き起こった。  奇才が創り上げた誰も観たことのない『白鳥の湖』を、是非この機会に映画館のスクリーンでご堪能いただきたい。 マシュー・ボーンIN CINEMA/白鳥の湖 https://matthewbournecinema.com/ 演出・振付:マシュー・ボーン 舞台・衣装デザイン:レズ・ブラザーストン 照明:ポール・コンスタンブル 音響:ケン・ハンプトン 音楽:ピョートル・チャイコフスキー 出演: スワン、ストレンジャー:ウィル・ボジアー 王子:リアム・ムーア 女王:ニコル・カベラ ガールフレンド:カトリーナ・リンドン 執事:グレン・グラハム 撮影:2019年サドラーウェルズ劇場 上映時間:127分(インターバルなし) 提供:MORE2SCREEN 配給:東北新社 配給協力:dbi inc. 10月25日(金)よりYEBISU GARDEN CINEMA(恵比寿ガーデンプレイス内)をはじめ全国順次公開

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東京バレエ団 世界初演~勅使川原三郎振付新作『雲のなごり』公開リハーサル&記者懇親会レポート

 10月の東京バレエ団公演は、『雲のなごり』(勅使川原三郎振付)、『セレナーデ』(ジョージ・バランシン振付)、『春の祭典』(モーリス・ベジャール振付)の3作品。このうち『雲のなごり』は、東京バレエ団が勅使川原三郎に創立55周年記念作品として委嘱したもので、今回が世界初演となる。自身のカンパニー「KARAS」の公演では、彼は作品の振付だけでなく、演出・照明・美術も手掛ける。彼の創り出すストイックで唯一無二な空間、世界観は、海外で非常に評価が高く、世界各地に招聘されたりパリ・オペラ座バレエ団に3回作品を提供したりしている。そんな勅使川原の新作に挑戦する東京バレエ団が、『雲のなごり』の公開リハーサルと記者懇親会を行った。取材・文:結城美穂子(エディター/音楽・舞踊ライター) 武満徹の音楽で彩りを増す『雲のなごり』  最初にリハーサルの様子を見学。勅使川原によると、「出演者みなが共通の理解を持てるよう文法の練習をしているところ」だそう。演出助手も務める佐東利穂子(KARAS)がリードして、ひたすら音楽と向き合う時間が流れる。  続く記者懇親会には、勅使川原と佐東、斎藤友佳理東京バレエ団芸術監督、沖香菜子、柄本弾、秋元康臣が登壇した。  まず斎藤が、これまで行った東京バレエ団の創立55周年記念シリーズである今シーズンの公演と第34次海外公演(欧州3カ国5都市)について説明した。2015年の監督就任以来、「年に1回、今までにない新たなレパートリーを加えることを意識している」と話し、「ぜひ日本人の振付家に依頼したいと考えたとき、最初にお願いしたいと思った方が勅使川原さん」、と今回の作品委嘱の経緯を語った。  『雲のなごり』で使用される曲は、武満徹の『地平線のドーリア』(1966年)と『ノスタルジア ─アンドレイ・タルコフスキーの追憶に─』(1987年)の2作品で、ベンジャミン・ポープ指揮、東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団の生演奏で上演される。  「海外のアーティストから『日本のカンパニーになぜ振り付けないのか』と聞かれるが、それはこれまで依頼がなかったから。機会をいただきとても嬉しい」と語り始めた勅使川原は、「武満さんの音楽でやりたいとすぐに思い浮かんだ」、「『地平線のドーリア』には独特の直截的、直感的なものを感じる。痛みというか、人間のイメージを超えた感覚、身体的な感じを受けた」と話し、いつかこの曲で作品を作りたいと思っていたのだそう。この曲だけでなく、後半には彼によると「緩めるもの」として『ノスタルジア』をセレクトした。勅使川原は武満作品をかなり聴き込んできていると感じられた。畏敬の念ゆえにJ.S.バッハの曲も何十年も自らの作品には使用できなかったそうで、今回は生演奏であるということも喜んでおり、満を持して武満作品を使用するという思いが伝わってきた。 作品のテーマは「ないものとは何か」  「ないものとは何か」が作品のテーマ。「時間のような概念自体が自然との一体感の中では推移するものであり、そういう自然の移ろいの中にある区切りのつかないような観念から解放された何か、を提示したい」。そういう自然の移ろいを詠んだ藤原定家の歌(「夕暮れはいづれの雲の名残とて花橘に風の吹くらむ」『新古今和歌集』収録)から『雲のなごり』というタイトルがとられたとのこと。そして「なんとなしの雰囲気や印象記にはしたくない」とも語った。  出演するほか、演出助手でもある佐東は、勅使川原のメソッドが体に入っているものの、「関わる人、音楽によって作品は作られるもので、未知の世界と思っている」と謙虚ながら、日々のクリエーションを楽しんでいる様子。  沖は「正直まだどういう作品になるのかわからずにいる」、さらに上演3作品に全部出演することから「『沖はこの作品にも出ていた』と同じダンサーだと気づかれないよう、すべての作品に全力を注ぎたい」と、静かな語り口ながら熱意を感じるコメントを残した。  勅使川原作品に初めて挑む柄本は「日々苦戦、模索している。新しい作品ができる場に自分がいる、というのはいい経験」と語った。  秋元は「別の作品にも出るので、それを少しでも考えるとどこかブレーキをかけてしまったりすることが正直ある。でも勅使川原さんがレッスン中に言う言葉や、自分がその場に佇む空気になるようなそういう時間も好き。言われる言葉だけを素直に受け取ってそれが自然と作品になっている、というのを目指している」と心境を述べた。  ダンサーたちの言葉を受け、勅使川原は「一人ひとりが内在しているものを引き出すのが私のやること。それがこの作品の第一の目的」、「技術としてのコツは言っていない。問いかけだけ。きつい言い方をしている」、「和気あいあいではなく、どうしようと思いながら稽古しているが、いつもいい雰囲気で終わっている」とのこと。「あと2週間あるのでプランとしては普段は言わないが、うまくいくだろうと思っている」と今回の東京バレエ団とのコラボレーションが充実している様子がうかがえた。  勅使川原は、東京バレエ団がレベルの高いカンパニーであると評価し、今ある状況からダンサーたちが新たに学び、喜びを感じていろいろな踊り方ができるようになったら、ダンスの風景も変わってくると思うと述べた。東京バレエ団は強力な起爆剤である勅使川原を迎え入れ、どのような舞台を見せてくれるのか、世界初演の舞台に期待が高まる。 ~東京バレエ団創立55周年記念シリーズ④~ 日時:10月26日(土)14:00/27日(日)14:00 会場:東京文化会館 https://www.nbs.or.jp/stages/2019/teshigawara/ 東京バレエ団×勅使川原三郎 新作 世界初演 『雲のなごり』 演出・振付・照明・美術:勅使川原三郎 音楽:武満徹「地平線のドーリア」「ノスタルジア─アンドレイ・タルコフスキーの追憶に─」 演出助手:佐東利穂子 照明技術:清水裕樹(ハロ) 衣裳製作:武田園子(ヴェロニク) 装置協力:金井勇一郎(金井大道具) ジョージ・バランシン振付『セレナーデ』 音楽:ピョートル・チャイコフスキー モーリス・ベジャール振付『春の祭典』 音楽:イーゴリ・ストラヴィンスキー   筆者紹介 結城美穂子 Mihoko Yuki 出版社勤務を経てフリーランスのエディター/ライターとして活動中。クラシック音楽、バレエ、ダンスを得意ジャンルとする。バレエ・ダンス情報誌『ダンツァ』元編集長。単行本・ウェブマガジン・公演パンフレットの編集と執筆、またオペラ、バレエの初心者向け鑑賞ガイドのレクチャー講師を務める。

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11月にミハイロフスキー劇場バレエで来日する人気バレリーナ、オクサーナ・ボンダレワにインタビュー

 ミハイロフスキー劇場バレエが、今年11月に4年ぶりとなる来日公演を行う。今回は『パリの炎』(ワイノーネン原典版)と『眠りの森の美女』(ナチョ・ドゥアト版)の2作品を上演し、どちらも日本初演だ。『パリの炎』で主役を踊るオクサーナ・ボンダレワに、公演にかける意気込みをうかがった。文:結城美穂子(エディター/音楽・舞踊ライター) インタビュー:石川了(舞踊ナビゲーター) 「ミハイロフスキー劇場バレエ」の、『今』をお披露目  サンクト・ペテルブルクを本拠地とするミハイロフスキー劇場バレエ。日本では「レニングラード国立バレエ」の名称で知られており、1981年に初めて来日して以来、2012年までに毎年年末に来日していた。日本のバレエ・ファンにとって身近で親しみのあるバレエ・カンパニーだ。  ミハイロフスキー劇場バレエは、ロシア・バレエの伝統を受け継ぐ古典作品を得意とする名門バレエ・カンパニーであるが、2011年にスペインの世界的振付家、ナチョ・ドゥアトが芸術監督に就任。2014年にベルリン国立バレエの芸術監督になることが決まり、ドゥアトはミハイロフスキー劇場バレエを去ってしまうのだが、2019年秋に再び戻ることになった。  今回の来日は、ドゥアトを再び迎えてのお披露目公演の意味合いもあり、いつにも増して熱い注目を集めている。 ナチョ・ドゥアト版『眠りの森の美女』も、ワイノーネン原典版『パリの炎』も日本初演  上演するのは、『パリの炎』と『眠りの森の美女』、それぞれ全幕の2作品。『眠り』はドゥアトがミハイロフスキー劇場バレエのために新たに演出・振付をした古典作品ということで大変話題になった。今回、待望の日本初演、しかもカラボスに御大ファルフ・ルジマトフが全公演出演する。鬼才ドゥアトが絢爛豪華な古典中の古典、『眠り』をどう振り付けたのか、自分の目で確かめることができる。  一方、『パリの炎』はガラ公演などでパ・ド・ドゥを見ることはあるものの、日本での全幕上演は滅多にないレアな作品。ワイノーネン原典版に基づくドラマティックなメッセレル版で、輝かしいソヴィエト時代のバレエをみることができる。こちらもうれしい日本初演だ。 昨年、待望の初来日を果たした人気バレリーナ、オクサーナ・ボンダレワ  オクサーナ・ボンダレワは、今回『パリの炎』で主役のジャンヌを踊る。  ボンダレワは、ウクライナ出身、ロシア国立バレエ・ラドチェンコでソリストとして活躍したのちに2009年、ミハイロフスキー劇場バレエにソリストとして移籍した。2017年にはマリインスキー・バレエに移籍、ファースト・ソリストとして活動していたが、現在はフリーランスになりガラ公演などに出演するため世界中を忙しく飛び回っている。  ミハイロフスキー劇場バレエを去ってからもこのカンパニーとの関係は良好で、2014年のミハイロフスキー劇場バレエのニューヨーク公演での『パリの炎』アメリカ初演にイワン・ワシーリエフとともに主演し、大成功を収めた。このニューヨーク公演では、レオニード・サラファーノフとともに『ドン・キホーテ』にも主演し、喝采を浴びた。  人気者ゆえ、文字通り世界中をかけ巡っており、日本の初来日は2018年、ミハイロフスキー劇場への出演が3度目の来日となる。今が旬で、周りにいる人をハッピーにするオーラで輝いているボンダレワ。-『パリの炎』での明るく元気なジャンヌが楽しみだ。 <公演概要> ミハイロフスキー劇場バレエ2019 https://www.koransha.com/ballet/mikhailovsky_ballet2019/ 「パリの炎」(全3幕) 作曲:ボリス・アサフィエフ 振付:ワシリー・ワイノーネン/改定振付:ミハイル・メッセレル 管弦楽:シアター オーケストラ トーキョー ●11/21(木)15:30  東京文化会館 大ホール アンジェリーナ・ヴォロンツォーワ(ジャンヌ)、イワン・ザイツェフ(フィリップ)、イリーナ・ペレン(ミレイユ)、ヴィクトル・レベデフ(ミストラル)、 ●11/21(木)19:30  東京文化会館 大ホール オクサーナ・ボンダレワ(ジャンヌ)、ジュリアン・マッケイ(フィリップ)、イリーナ・ペレン(ミレイユ)、ヴィクトル・レベデフ(ミストラル) 「眠りの森の美女」(全3幕プロローグ付) 作曲:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー 振付:ナチョ・ドゥアト 管弦楽:シアター オーケストラ トーキョー ●11/23(土)17:00  東京文化会館 大ホール イリーナ・ペレン(オーロラ姫)、ヴィクトル・レベデフ(王子)、ファルフ・ルジマトフ(カラボス) ●11/24(日)11:30  東京文化会館 大ホール アナスタシア・ソボレワ(オーロラ姫)、ヴィクトル・レベデフ(王子)、ファルフ・ルジマトフ(カラボス) ●11/24(日)16:00  東京文化会館 大ホール アンジェリーナ・ヴォロンツォーワ(オーロラ姫)、イワン・ザイツェフ(王子)、ファルフ・ルジマトフ(カラボス)   筆者紹介 結城美穂子 Mihoko Yuki 出版社勤務を経てフリーランスのエディター/ライターとして活動中。クラシック音楽、バレエ、ダンスを得意ジャンルとする。バレエ・ダンス情報誌『ダンツァ』元編集長。単行本・ウェブマガジン・公演パンフレットの編集と執筆、またオペラ、バレエの初心者向け鑑賞ガイドのレクチャー講師を務める。

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オペラ『蝶々夫人』に着想を得て作られた熊川哲也&Kバレエ カンパニー『マダム・バタフライ』~世界初演の日を終えて感動の声続々!

 熊川哲也が演出・振付・台本を手掛けた世界初演となるKバレエ カンパニーの全幕バレエ『マダム・バタフライ』が、東京・渋谷のBunkamuraオーチャードホールでスタートした。9月27日の公演初日には、多くの文化人や女優らが来場。会場では、「これまでにない和と洋を融合させた素晴らしい舞台」「海外の方にぜひ観ていただきたい革新的な作品」という声が多数聞かれた。10月10日からは、東京文化会館に会場を移して全7公演が行われる。残りの公演を前に、初日のステージを観劇した著名人の感想をお届けする。取材・文:井手朋子(クラシカ・ジャパン編成部) 三田佳子さん(女優) 「バレエというよりも、一篇のドラマを観させていただいたような重みを感じています。美術も衣装も演奏も素晴らしく、大変勉強になりました。言葉がない作品にも関わらず、音のない世界でドラマを感じさせてくれたことに一番驚いています。私も過去に花魁を演じましたが、高下駄を履いて八の字を描くように歩く八文字は本当に難しいんです。それを今回トウシューズでやっていらして、実に見事でした。全体を通して日本の所作がよく取り入れられていて、バレエとはまた違った楽しみ方ができました。本舗初公開でしたが、今後この『マダム・バタフライ』がどんどん世界に向かっていくことで、Kバレエの20周年という良きタイミングで熊川さんの名声が世界に轟きますね」 コシノジュンコさん(デザイナー) 「蝶々夫人は大好きな作品で音楽も口ずさめるほどですが、今回は新たな演出が加わったということで、始まってすぐに思ってもみないステージが繰り広げられてビックリしました。第1幕のあの水平さんたちが出てくるシーンは、振付がとてもチャーミングで可愛くて、熊川さんはポップで面白い演出をされましたね。バレエの良さが全面に出ていて、人数も多くてすごく華やか。ですがしっかり作品に馴染んでいて、これを世界に持って行ったら日本はすごいと思われるでしょうね。オペラと違って動きは美しいですし、雰囲気でジーンとしました」 斉藤由貴さん(女優) 「震えました……!バレエという枠を超え、総合芸術という感じがいたしました。熊川さんは起承転結を大事にされる方だとお伺いしていましたが、言葉がなくとも分かりやすかったですし、和と洋の融合は本当に素晴らしかった。お着物をバレエの衣装にするということでたくさん工夫されたと思いますが、繊細なお衣装は振付と相まって得も言われぬ美しさでした。印象に残っているのは、バタフライが悲嘆にくれながら1人で踊る最後のシーンです。とても切ない踊りでしたが、悲しみなどの演劇表現も感じられる素晴らしい振付で……。バレエはセリフがないので踊りと振付の絶妙なニュアンスで感情表現をされているわけですが、その感じ方を観客に委ねているような感じがいたしました。ただ単に素晴らしいものを見せられたのではなく、あなただったらどんな風に感じるか、そんな風に自分の感じ方を提示されているようで、どんどん想像が膨らむ感じといいましょうか。熊川さんは私の斜め前でご覧になっていましたが、背中からも厳しい眼差しを感じました」 デヴィ・スカルノさん(タレント) 「振付、演出、構成、どれを取っても本当に見事で、感動いたしました。まったく新しいコンセプトの『マダム・バタフライ』という作品がこの世に誕生したということは、本当に偉大なことです。オペラと違ってセリフはありませんが、ピンカートンやバタフライの心の描写が分かりやすく、外国人に伝わりやすいと思いました。オリジナルの第1幕をつけたことで起承転結が生まれ、とてもドラマチックになったのではないでしょうか。海外の方にも素直に受け入れられる作品だと思います。熊川さんとKバレエのこの20年を振り返ると、本当にすべての功績が素晴らしい。熊川さんは革命児ですよ」 トリンドル玲奈さん(モデル・女優) 「何から何まで美しい舞台で、感動いたしました。印象に残っているのは最後の方のシーンです。気持ち的には悲しいシーンですが、美しさや繊細さに包まれていて、なんとも言えない気持ちになりました。踊りと音楽と照明がどれも素晴らしく、心が洗われたような気がします。歌舞伎が好きでよく観ますが、それとはまた違った表現の仕方でした。バレエの繊細で控えめな部分が和のイメージを引き立てていて、まさに新時代にふさわしい和と洋の融合だと思います。熊川さんがこれほどまでに繊細で美しい物を作られる方だということに感動し、同じ日本人であることに誇りを感じました」 瀧川鯉斗さん(落語家) 「これぞ芸術!という一言しかありません。これまで観てきたバレエとは別格の凄さが伝わってきました。自分のやっている落語は話芸ですが、一言も発しないという芸を目の当たりにさせていただいて、体で表現するだけでお客様にすごいと思わせる今日の舞台は非常に勉強になりました。高座では座布団に座っていますが、膝の先まで表現者としてお客さんに伝えたい。そう思わせてくれる舞台でした」 <公演概要> http://www.k-ballet.co.jp/performances/2019madame-butterfly.html 熊川哲也Kバレエカンパニー Autumn2019 『マダム・バタフライ』 《全幕バレエ》 芸術監督:熊川哲也 演出・振付・台本:熊川哲也 原作:ジョン・ルーサー・ロング 音楽:ジャコモ・プッチーニ(オペラ『蝶々夫人』)ほか 舞台美術デザイン:ダニエル・オストリング 衣裳デザイン:前田文子 照明デザイン:足立恒 指揮:井田勝大 管弦楽:シアター オーケストラ トーキョー 日時会場:9月27日(金)18:30/28日(土)12:30、16:30/29日(日)13:00 Bunkamuraオーチャードホール ※公演終了 10月10日(木)14:00/11日(金)14:00/12日(土)12:30、16:30/13日(日)12:30、16:30/14日(月・祝)13:00 東京文化会館 大ホール マダム・バタフライ:矢内千夏/成田紗弥/中村祥子 ピンカートン:堀内將平/山本雅也/宮尾俊太郎 スズキ:荒井祐子/前田真由子/山田蘭 ボンゾウ:遅沢佑介/杉野慧 ゴロー:石橋奨也/伊坂文月 花魁:中村祥子/山田蘭/杉山桃子 ケイト:小林美奈/浅野真由香/戸田梨紗子 ヤマドリ:山本雅也/高橋裕哉 シャープレス:スチュアート・キャシディ お問合せ・お申込:チケットスペース 03-3234-9999 (月~土10:00~12:00/13:00~18:00※日・祝は休) あわせて読みたい 「日本人としてのスピリット」をバレエで描く~熊川哲也 Kバレエ カンパニー『マダム・バタフライ』制作記者発表 熊川版新作「カルミナ・ブラーナ」 オーチャードホール芸術監督 熊川哲也 記者懇談会レポート アンドレア・バッティストーニ 独占インタビュー! Kバレエ カンパニー『ベートーヴェン 第九』『アルルの女』公開リハーサル Kバレエ カンパニー『シンデレラ』公開リハーサルレポート 東京二期会『蝶々夫人』制作発表会

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「スタジオアーキタンツ」20周年記念事業記者発表

 アーキタンツとは、Architecture(建築)とTanz(ダンス)の造語。バレエスタジオと建築設計の2つの顔を持つスタジオアーキタンツは、2001年の設立以来、世界の第一線で活躍する招聘講師によるクラシックバレエを中心としたオープンクラスや、コンテンポラリーダンスのワークショップ等を行ってきた。  2020年はアーキタンツ設立20周年記念事業として、「ブライト・ステップ×ATP」「ARCHITANZ 2020」という2つの劇場公演を開催。組織の垣根を越え、国内外のアーティストとのネットワークを築いてきたアーキタンツならではの内容に注目したい。  8月20日にスタジオアーキタンツ(港区芝浦1丁目)で行われた記者発表では、酒井はな、菅井円加、西島勇人という20周年記念事業に出演するダンサー3名と、振付指導のジョヴァンニ・ディ・パルマが登壇。彼らは各々アーキタンツとの関わりや出演作品への抱負を語った。  冒頭に披露された菅井のラフマニノフ作品のリハーサルも含め、記者発表の模様は下記動画でぜひご覧いただきたい。取材・文:石川了(バレエナビゲーター) 公演概要 http://a-tanz.com/event/10534 Vol.1 菅井円加のリハーサル(ジョヴァンニ・ディ・パルマの振付指導) Vol.2 スタジオアーキタンツ20周年記念事業について Vol.3 ブライト・ステップについて Vol.4 ジョヴァンニ・ディ・パルマが語る作品の見どころ Vol.5 酒井はなと菅井円加が語る作品への想い <スタジオアーキタンツ20周年記念事業 概要> ■アーキタンツ・トレーニング・プログラム(ATP)開講記念公演「ブライト・ステップ×ATP」 [日時会場] 2020年8月6日(木)19:00 新宿文化センター 大ホール [出演(予定)] 西島勇人、奥村彩、菅井円加、他 ■アーキタンツ20周年記念公演「ARCHITANZ 2020」 [日時会場] 2020年8月8日(土)18:00/9日(日)14:00 新宿文化センター 大ホール ①『ラフマニノフ ピアノコンチェルト第3番』 [振付] ウヴェ・ショルツ [音楽] セルゲイ・ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第3番ニ短調Op.30 [振付指導] ジョヴァンニ・ディ・パルマ [出演(予定)] 奥村康祐 酒井はな 菅井円加 根岸清宜 八幡顕光 金子稔、近藤美緒、中村春奈、西島勇人、盆子原美奈、他 ②『薔薇の精』(日本初演) [振付] マルコ・ゲッケ [音楽] カール・マリア・フォン・ウェーバー:舞踏への勧誘変ニ長調Op.65/Le maître des esprits [振付指導] ジョヴァンニ・ディ・パルマ [出演(予定)] 酒井はな(少女) 小㞍健太(薔薇の精) 金子稔、玉川貴博、西島勇人、根岸清宜、他 ③『ボレロ』(新作) [振付] 森優貴 [音楽] モーリス・ラヴェル:ボレロ/ジョン・アダムズ:ザ・チェアマンダンス [出演] 中川賢、竹内春美、他 ④『翁』 古典能 [出演] 津村禮次郎(シテ方)、他

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