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劇場の歴史を刻んできた衣裳や大道具・小道具を見ながら、舞台スタッフも体験できる「初台アート・ロフト」

 昨年開場20周年を迎えた東京・初台の新国立劇場で、劇場内の公共スペースを利用した入場無料のオープン・ギャラリー「初台アート・ロフト」が始まった。これは、これまで上演された舞台のアイテムを展示して、「劇場」のさまざまな顔を紹介するもの。7月4日の正式オープン初日に先立って公開された内覧会を見た。取材・文:宮本明(音楽ライター)   実際の舞台で使われた衣裳や大道具・小道具が展示  「初台アート・ロフト」の展示会場となっているのは、劇場1階から3階にかけてのオープン・スペース。各劇場での上演の有無にかかわらず、毎日10時から午後6時まで自由に見ることができる。  展示されているのは、実際の舞台で使われた衣裳や大道具・小道具、そして舞台美術模型。オペラ、バレエ、演劇の各部門の、劇場の歴史を刻んできたアイテムが並ぶ。  正面エントランスに入って最初に目を引くのは、開場記念公演として制作された1998年ヴェルディ『アイーダ』(演出・美術・衣裳:フランコ・ゼッフィレッリ)の巨大な神像だ。あの壮大なスケールの絢爛豪華な舞台を切り取って、その細部を目の前で見るのは面白い。説明パネルには、20年前の装置にはやはり経年の劣化が生じ、それを補修しながら再演に備えているとある。なるほど、ただ保管庫に放り込んで(それさえも民間ではなかなかできないことだが)取ってあるだけではないのだ。  順路に沿って進むと、演劇部門の開場記念公演だった『夜明け前』(1997年・舞台美術:妹尾河童)の舞台美術模型や、2008年のデヴィッド・ビントレー振付のバレエ『アラジン』の衣裳(衣裳:スー・ブレイン)など、過去20年間の舞台の記憶が次々に蘇る。 子供たちにもオススメ!バックステージ・コーナー  まちがいなく一番人気になりそうなのが「バックステージ・コーナー」だ。ステージの上で華やかなライトを浴びる歌手やダンサー、俳優だけが「舞台のお仕事」ではない。舞台監督、大道具、照明、音響、衣裳……。さまざまな裏方スタッフの共同作業によって、初めて舞台芸術が生まれるのだ。普段客席にいるのでは目で見ることができないそんなスタッフの存在を身近に感じ、彼らの仕事を知るためのユニークな試みがこれ。実際、オペラ『ホフマン物語』のゴンドラを動かしてみたり、フォローピン・ライトに触れてみたり、アナログからデジタルまで新旧の効果音を鳴らしてみたり。ベニヤ板に囲まれた、「いかにも舞台裏」な空間で、舞台スタッフになりきってさまざまな体験ができる。理屈抜きに楽しく、時間を忘れて没頭してしまうから、順番待ちで並んでいる人に注意が必要かも。これから夏休みを迎える子供たちにも絶対におすすめ。自由研究の宿題に悩んだら、ここで遊び尽くした感想をレポートにしてみるのもよさそうだ。 妹尾河童さんの監修!見るたびに新たな発見がありそう  今回の展示内容を監修したのは舞台美術家の妹尾河童さん。そうか。「体験コーナー」もだけれど、数多く展示されている舞台美術模型など、往年の名著『河童が語る舞台裏おもて』をそのまま3Dにしたような楽しさがある。さすが!  なお、web上に音声ガイド・ページが作成されており、会場のQRコードを読み込んでスマートフォン等で利用できるのもいい(もちろん無料)。来場の際はスマホとイヤフォンをお忘れなく。  「初台アート・ロフト」は特に期間を定めずに続く予定の常設展だが、展示内容は定期的に模様替えされるそうなので、見るたびに新たな発見がありそうだ。新しい形の劇場へのいざないの試み。大人も子供も、ぜひ一度は訪れてみる価値がある。 新国立劇場 初台アート・ロフト(HatsudaiArt Loft) 2019年7月4日(木)~ 開場時間:10:00~18:00 開場:新国立劇場1階~3階のオープンスペース   筆者紹介 宮本明 Akira Miyamoto 東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。『レコード芸術』『音楽の友』『GRAND OPERA』など音楽雑誌の編集部勤務を経て、2004年からフリーランスの音楽ライター、編集者として活動。雑誌、インターネット媒体への寄稿、音楽書籍の編集、CD録音の監修・制作など、形態を問わず音楽関連の仕事を手がけている。

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東京バレエ団「創立55周年記念シリーズ」記者会見レポート

 今年で創立55周年を迎える東京バレエ団。この節目の年を記念する公演ラインナップの紹介と、6~7月にかけて行われる第34次海外公演の詳細についての記者会見が行われた。登壇したのは、公益財団法人日本舞台芸術振興会専務理事の髙橋典夫、東京バレエ団芸術監督の斎藤友佳理、東京バレエ団プリンシパルの上野水香、川島麻実子、沖香菜子、柄本弾、秋元康臣、宮川新大の8名。取材・文:結城美穂子(エディター/音楽・舞踊ライター)   東京バレエ団創立55周年と来年のチャイコフスキー記念東京バレエ学校開校60周年に向けて  まずは髙橋専務理事が概要を説明した。  冒頭、髙橋氏は「東京バレエ団にとっては、50周年よりも、5年後の60周年よりも、この55周年のタイミングの方が実は重要。東京バレエ団が大きく変わらなければならないタイミングと思っている。ひとことでいえば、55周年のテーマは『東京バレエ団のブランディング』、竹の節目のように55周年シリーズを通じて成長の節目にしたい」と語った。  東京バレエ団の母体であるチャイコフスキー記念東京バレエ学校が来年で60周年を迎える。これからは東京バレエ学校と東京バレエ団との連携を強めたいという意識を持っており、具体的には来年8月の東京バレエ学校開校60周年の記念公演で、ジョン・ノイマイヤーがバレエ学校の生徒のために振り付けた『ヨンダーリング』を上演するとのこと。東京バレエ学校以外にも門戸を開き、出演者は広くオーディションで広募するほか、ノイマイヤー自身が来日して指導にあたる。  海外の一流バレエ・カンパニーのように、付属のバレエ学校で優秀な人材を育てバレエ団に引きあげる、という長期的視野に立った壮大な構想が語られた。 東京バレエ団第34次海外公演  注目は、第34次海外公演だ。バレエ団にとってのメモリアル・イヤーということで準備に時間をかけたとのこと。ポーランドのウッチ歌劇場、ローマのカラカラ野外劇場などのほか、ウィーン国立歌劇場3公演、ミラノ・スカラ座4公演が予定されており、「世界最高峰のオペラハウスに出演するのは他の団体ではできないことなのでは、と自負している」という高橋氏の言葉の通り、海外ツアーの経験が豊富で、海外での評価が高いカンパニーらしく圧巻と言えよう。  続いてプリンシパルたちが海外公演に向けての抱負を語った。コメントは以下の通り。 上野水香「代表的なオペラハウス、素敵な場所にたくさん行けると思うので、それぞれの場所のそれぞれの雰囲気、お客さまを感じながら、一つひとつ大切に踊りたいと思います」 川島麻実子「創立55周年という節目の年に参加できることを誇りに思いますし、身の引き締まる思いです。日本でやっている演目も、場所が変わればお客様の反応が違うと思いますし、それぞれの劇場の雰囲気や日常などで感じる空気が、自分にフレッシュに入ってくると思うので、また新しい気持ちで丁寧に一つずつ踊ってきたいと思います」 沖香菜子「私にとって1カ月間の海外ツアーは初めて、これだけの作品数を短い期間で踊るのも初めてです。ダンサーにとってたくさんの振付家の作品を踊らせていただくということは、それぞれの振付家のスタイルを身に着けなければいけないという難しさもあるのですが、挑戦できるのは東京バレエ団にいるからだと思います。そのありがたさを感じながら、無事成功できるように頑張って踊ってきたいと思います」 柄本弾「前回のミラノ・スカラ座での『ザ・カブキ』はコール・ドでの出演でしたが、今回は由良之助を踊らせていただきます。斜舞台であることは自分にとっての課題なので、しっかり調整しつつ、その場その場の舞台を楽しみながら演じたいです」 秋元康臣「『春の祭典』に初めて挑戦させていただきます。これほど長い期間ツアーに出るのは初めてですが、歴史ある劇場で踊れることはすごく幸せです。東京バレエ団でしかできない貴重な経験だと思います」 宮川新大「ヨーロッパで長く生活していたので、海外ツアーは一種の里帰りのような気持ちで毎回楽しみです。自分の舞台もそうですが、各地にいる友だちと連絡を取り再会できるのも楽しみです」 世界を視野に入れた戦略と斎藤芸術監督の心意気  10月の公演では、『セレナーデ』(バランシン振付)、『春の祭典』(ベジャール振付)とともに勅使川原三郎の新作を世界初演する。この勅使川原作品は将来、海外で上演することを視野に入れている「海外戦略用」とのこと。音楽は武満徹の作品を使用する。世界に向けて東京バレエ団の代表作として発信していけるような作品にしたいと期待する思いを聞くことができた。  続いて斎藤芸術監督からそれぞれの公演についての丁寧な説明があった。印象的だったのは、3月の『海賊』と12月の『くるみ割り人形』、そして来年3月の『ラ・シルフィード』についての説明だ。  昨年はプティパ生誕200周年だった。3月に行われた『海賊』全幕上演について、「日本のバレエ団の中で、唯一東京バレエ団だけがプティパのメモリアル・イヤーを意識した公演を実現できて誇りに思う」とコメント。  12月の『くるみ割り人形』では、東京バレエ団バージョンとしての演出の部分はそのまま残し、斎藤芸術監督が現役時代に踊っていた時から気になっていた部分を改定した「新制作」になる。衣裳と装置も新たに作るとのこと。  『ラ・シルフィード』については、斎藤芸術監督にとってすべてにおいての原点となる作品であり、創立55周年にふさわしいと考えた、とのこと。斎藤芸術監督の現役時代を知るファンにとっては納得のセレクトなのではないだろうか。   筆者紹介 結城美穂子 Mihoko Yuki 出版社勤務を経てフリーランスのエディター/ライターとして活動中。クラシック音楽、バレエ、ダンスを得意ジャンルとする。バレエ・ダンス情報誌『ダンツァ』元編集長。単行本・ウェブマガジン・公演パンフレットの編集と執筆、またオペラ、バレエの初心者向け鑑賞ガイドのレクチャー講師を務める。

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5年ぶりの上演に高まる期待~東京シティ・バレエ団『ロミオとジュリエット』

2幕構成で可動式の舞台美術が特徴  昨年創立50周年を迎え、新たな歴史を刻み始めている東京シティ・バレエ団の7月公演は待望の『ロミオとジュリエット』で、5年ぶりの上演となる。  中島伸欣の構成・演出・振付、石井清子の振付によるこの『ロミオとジュリエット』は、2幕構成で、舞台美術が可動式なのが特徴だ。華美な装飾を排し、可動式の壁面を活用した場面転換はとてもすっきりしており、最後のクライマックスへの緊張感の加速・高揚がとても美しく効果的に描かれる。 看板スターコンビと初役の若手コンビのキャスティング  今回5年ぶりということもあり、キャスティングに注目が集まっている。1日目の清水愛恵は初のジュリエット役、キム・セジョンは2012年以来のロミオ役、看板スターによる愛の物語が楽しみだ。2日目はジュリエットに庄田絢香、ロミオに吉留諒の二人が抜擢された。表現力を買われた庄田、王子役をこなし実力をつけてきた吉留、もちろんどちらも初役なので応援したい。さらに、2日目の濱本泰然(ティボルト)、内村和真(マキューシオ)、福田健太(ベンヴォーリオ)の3人の男性ダンサーにも期待が高まる。『ロミオとジュリエット』は、実は若い男性ダンサーが活躍できるバレエ作品なのだ。次の主役を狙っているであろうイキのいい男性ダンサーたちが、役の運命を踊りきるさまをしっかりと見届けたい。  最後に、演奏も大いに期待できることを記しておきたい。指揮は井田勝大、演奏は東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団。プロコフィエフのドラマティックな心震えるサウンドは約束されており、若いダンサーたちの紡ぐドラマをさらに盛り上げてくれることだろう。結城美穂子(エディター/音楽・舞踊ライター) 公演概要 『ロミオとジュリエット』~命を賭して求め合う、若い二人の悲しくも美しい恋~ https://www.tokyocityballet.org/schedule/schedule_000445.html 日時:2019年7月13日(土)17:00/14日(日)14:00 会場:ティアラこうとう大ホール 芸術監督:安達悦子 原作:ウィリアム・シェイクスピア 音楽:セルゲイ・プロコフィエフ 構成・演出・振付:中島伸欣 振付:石井清子 指揮:井田勝大 演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団 編曲:福田一雄 美術:江頭良年 衣裳:小栗菜代子 照明:足立恒(株式会社インプレッション) ジュリエット:清水愛恵(13日)庄田絢香(14日) ロミオ:キム・セジョン(13日)吉留諒(14日) キャピュレット:春野雅彦(両日) キャピュレット夫人:岡博美(13日)平田沙織(14日) ティボルト:李悦(13日)濱本泰然(14日) パリス:石黒善大(両日) マキューシオ:沖田貴士(13日)内村和真(14日) ベンヴォーリオ:中弥智博(13日)福田建太(14日) 乳母:加藤浩子(13日)草間華奈(14日) ロレンス修道士:堤淳(両日) モンタギュー:吉岡真輝人(両日) モンタギュー夫人:若林美和(両日) ヴェローナ大公:濱本泰然(13日)李悦(14日) ※出演者は変更となる場合がございます。それに伴うチケットの払い戻しは致しません。   筆者紹介 結城美穂子 Mihoko Yuki 出版社勤務を経てフリーランスのエディター/ライターとして活動中。クラシック音楽、バレエ、ダンスを得意ジャンルとする。バレエ・ダンス情報誌『ダンツァ』元編集長。単行本・ウェブマガジン・公演パンフレットの編集と執筆、またオペラ、バレエの初心者向け鑑賞ガイドのレクチャー講師を務める。

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【公演直前】森山開次の話題作『NINJA』がついに上演!新国立劇場の「こどもと大人向け」シリーズ上演を目前に控えた森山開次さんが見どころを語る

 2015年に大人も子どもも楽しめるダンス作品『サーカス』を発表し、新国立劇場・ダンス公演における観客動員数の記録を打ち立てた森山開次が、『サーカス』に続く第二弾公演として忍者をテーマにした新作『NINJA』を上演する。今作では、出演はもちろん、演出、振付、アートディレクションに至るまで担ったという森山に、劇場での仕込みの間を縫って新作について話を聞いた。取材・文:井手朋子(クラシカ・ジャパン編成部) ──今回、忍者を題材にした理由を教えてください。  新国立劇場から提案されたのがきっかけです。ただ、ちょうど僕の中でも「サーカスの第二弾をやるなら、和を感じさせるユーモアのあるものかな」と漠然と考えていて。小学生の頃にやっていた忍者ごっこを思い出しながら、そういうのも面白いかなと思っていたので、その提案には自然と頷きました。  でもいざ作ろうとすると、シンプルではあるけれど深い部分のある難しいテーマでもあって、子どもにも大人にも見せていくという視点の中で、どんな切り口にすべきかというのは相当悩みました。忍者屋敷や映画、漫画など、日本人はみんな忍者が好きですよね。そういういわゆる直球の忍者像を期待する部分もあるだろうし、一方でそうではない部分も作っていきたい。僕たちはダンサーなので身体能力は高いかもしれませんが、忍者のようにクルクルと宙返りができるかというとそうではないし。アクション系の人たちが演じる忍者とは違う忍者像を作りたくて、全体の構成についてはかなり熟考を重ねましたね。 ──公演のチラシのイラストは森山さんが描かれたそうですが、絵を描いた時点で全体像はある程度出来上がっていたのでしょうか。  絵を描く時に何となくのイメージは生まれていました。ただ、絵は簡単なんですよね。絵は自由に何でも出来てしまいますが、実際に具現化して踊りにしようとすると難しさがたくさんある。でも絵を描きながら、昔やっていた忍者ごっこが、植物や自然、昆虫や動物との出会いの場でもあった体験を思い出したんです。  当時、空き地に基地を作ったり修行の真似事をしていたときは、多くの動植物が目の前にいた。だから、自分の中では「忍び」というものが忍者屋敷というより「自然の中に潜んでいるもの」という感覚が強くて。『NINJA』も、人間だけでなくいろいろなものが自然の中に忍びながら生きている、そういう大きな枠組みの中で作っていきたいと思い、昆虫や植物を登場させることにしました。  ただ、動植物を取り上げながらも、最終的には人間を描きたいという想いがあり、その2つのビジョンをどう組み合わせるかが大きなテーマでした。実は今回、演出という立場ながら、共演するダンサーたちに結構悩みを打ち明けていたんです。ダンサーからしたら、演出家は自信満々に方向性を示してくれた方がいいとは思いますが、先が見えていないのに強がって引っ張っていくより、相談して共有した方がいいかなと。 ──どんなことを相談し合ったんですか?  創作する時は、新しい表現を求めるじゃないですか。でも持っているものは実はそれほど多くなかったりもする。そういう意味で、全体の構成だけでなく、ちょっとしたことが『サーカス』と同じになっているんじゃないかというやり取りは何度もありました。新体操出身のダンサーに対しては、「前回もリボンを多用したよね」「またリボンを使ってもいいかな?」というようにね。第二弾だから新しくしていきたいと思う一方で、第一弾と重なってしまう要素があるという葛藤がありました。ただ、途中からは同じ要素でも違う表現を届けられればいいという方向になっていきました。そういう意味では、2カ月という稽古期間はとてもいい時間を過ごせたと思っています。 ──『NINJA』は森山さん以外に7名の出演者がいて、皆さん実に多彩な経歴をお持ちです。『サーカス』からは引き続き4名のダンサーが出演しますが、森山さんから見た共演者について聞かせてください。  浅沼(圭)さんと引間(文佳)さんは新体操出身で、小さい頃からお互い知り合い。体育会系で、浅沼さんの方が先輩。でも、今はダンサーというフラットな立場で付き合っていて、新体操から見たダンスという表現にそれぞれがチャレンジしています。この2人との出会いは僕にとっても大きく、とても信頼している2人です。  中村里彩さんは僕が演出を手掛けた東京芸術劇場の歌劇『ドン・ジョヴァンニ』でもご一緒していて、今回は直感で抜擢しました。今回は新しい風を入れたくて、若い世代が中心メンバーになっています。  藤村港平くんは『サーカス』の時にアンダースタディで入ってもらっていて、当時は筑波大学の学生でした。今は大学院生ですが、とても真面目でクレバーで、野心がありながら俯瞰する能力も持ち合わせたダンサーです。今後ダンス界で期待される逸材だと思っているので、ぜひ一緒にやりたいとお誘いしました。  宝満(直也)くんは元新国立劇場バレエ団ダンサーで、僕が演出した『小金井薪能』の作品でご一緒させていただいたので以前から知っていて、今回題材が「忍者」ということもあり、ぜひ出演いただきたいなと。寡黙ながら内に熱いものを持っていて、しかもユーモアセンスもあるという、日本の武士のようなところがピッタリだと思いました。踊りに関してはとにかくプロフェッショナルで、ダンサーとしてやることをしっかりやっていく。多くは語らずに助けてくれますし、「例えばこういうのもあります」とボソっと提案してくれます。創作に対する興味もとても強いので、頼れる存在です。  美木マサオくんはダンスもしますが、どちらかと言うと彼だけ演劇畑の人間で、演出助手として助けてもらうことが多いんです。彼自身が演出家でもあるので、いつも客観視しながら僕のフォローをしてくれます。今回はダンサーとは違う見方ができる人を入れたくてお願いしました。視点が広がるので、とても助けられています。  水島晃太郎くんはマイペースなモダンダンサー。彼も静かなタイプですが、身体の柔軟性が高くユーモアもある子です。僕がこういう性格なので稽古場の空気はだいたい暗いんですけど(笑)、そんな中でもいつもニュートラルにいて馴染んでくれています。 ──観客の皆さんにはどういう楽しみ方をしてもらいたいですか?  お子さんたちには特に自由に思いを巡らせてもらえると嬉しいですね。ダンスは観る人の感覚に委ねていいものなので「なぜ?」「どうして?」ということがたくさんあった方がいいと思うんです。一部は楽しく割と分かりやすい構成ですが、二部になると「何をやっているんだろう、このお兄さんは」と思う瞬間があるかもしれません。でも「何をやっているんだろう」というところがダンスに興味を持つきっかけになればいいと思うので、ぜひ多くの疑問を持ってみてください。  それから、この作品は忍者が題材ではありますが、人間の性(さが)、死についても描いています。忍者が忍術をするように、動植物の世界にも身を守るための能力を持った生き物がたくさんいて、それはつまり死と隣り合わせで生きているということ。ですからダンサーたちはその動植物の生き様を表現することで、最終的にはダンサーたちの生き様、踊るという生き様を見せられたらと思っています。忍者の踊りざまを、ぜひ劇場に見にいらしてください。来てくださった皆さんがどう捉えてくださるか、自分たちも楽しみです。   『森山開次/NINJA』 演出・振付・アートディレクション:森山開次 音楽:川瀬浩介 照明:櫛田晃代 映像:ムーチョ村松 衣裳:武田久美子 音響:黒野 尚 キャスト:森山開次、浅沼 圭、中村里彩、引間文佳、藤村港平、宝満直也、美木マサオ、水島晃太郎 ■新国立劇場公演 日時:5月31日(金)19:00/6月1日(土)14:00/6月2日(日)12:00、16:00/6月5日(水)19:00/6月7日(金)19:00/6月8日(土)14:00/6月9日(日)12:00、16:00 会場:新国立劇場 小劇場 https://www.nntt.jac.go.jp/dance/ninja/ 問い合わせ:新国立劇場ボックスオフィス 03-5352-9999(10:00~18:00) ●いわき芸術文化交流館アリオス 中劇場(福島県) 6月15日(土)14:00 http://iwaki-alios.jp/ ●北上市文化交流センターさくらホール 中ホール(岩手県) 6月22日(土)15:00 http://www.sakurahall.jp/ ●水戸芸術館 ACM劇場(茨城県) 6月29日(土)13:00、17:00/6月30日(日)14:00 http://www.arttowermito.or.jp/index.html ●びわ湖ホール 中ホール(滋賀県) 7月6日(土)14:00 https://www.biwako-hall.or.jp/ ●鳥取市民会館 大ホール(鳥取県) 7月9日(火)18:00 http://www.tottori-shinkoukai.or.jp/shimin.html ●北九州芸術劇場 中劇場(福岡県) 7月13日(土)14:00 http://q-geki.jp/ ●まつもと市民芸術館 小ホール(長野県) 7月20日(土)18:00/7月21日(日)13:00 https://www.mpac.jp/

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