feature

「チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲」に振付を施した『WIND GAMES』東京シティ・バレエ団が2020年7月に上演~気鋭の振付家、パトリック・ド・バナにインタビュー

事実上世界初演となる『WIND GAMES』  東京シティ・バレエ団は、2020年7月にチャイコフスキーの『ヴァイオリン協奏曲』に振り付けた作品を上演する。気鋭の振付家、パトリック・ド・バナによる振付で、すでに第1楽章は2013年2月にウィーン国立バレエ団、第2楽章は2017年5月に上海国立バレエ団により上演されているが、第3楽章を新たに東京シティ・バレエ団のために振り付け、全楽章を上演するという。ゲストにはボリショイ・バレエ団のプリンシパル、オルガ・スミルノワとセミョーン・チュージンを迎え、ヴァイオリニストの三浦文彰、東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団が演奏する。この公演では他に、『レ・シルフィード』、『バレエ・コンサート』も上演される。  東京シティ・バレエ団のリハーサルのために来日していたバナからコメントをもらうことができた。 「この画期的な作品が東京シティ・バレエ団によって上演されることになった発端は、2019年3月にマニュエル・ルグリたちのガラ公演のために新作を作り、来日した時です。そこで出演されていたヴァイオリニストの三浦文彰さんとお会いしました。三浦さんは私の作品を気に入ってくださったのです。三浦さんとなにかできないかと考え、すでに第2楽章まで発表していたけれども未完成だったバレエ作品、チャイコフスキーの『ヴァイオリン協奏曲』の第3楽章を日本で作って上演してはどうだろう、ということになったのです。東京シティ・バレエ団が上演してくださることになり、こうして音楽作品、ヴァイオリニスト、バレエ団とすべて揃い、プロジェクトがスタートしたのです」 「東京シティ・バレエ団のパフォーマンスをこれまで見たことはありませんでした。けれども今回、オーディションをして出演ダンサーが決まり彼らと共に作っていく中で、非常に満足感を得ることができました。一緒に仕事ができて幸せですし光栄だと思っています。このバレエ団をとても愛しています。規模の大きいプロジェクトですが、やりきることができると確信しています」  作品タイトルは『Wind Games』という。この『ヴァイオリン協奏曲』を聴いて感じたイメージからつけたのだそう。 「チャイコフスキーの『ヴァイオリン協奏曲』からは、チャイコフスキーの祖国、ロシアの広大な大地を吹き抜けていく風を感じました。そこには遊牧生活をしている騎馬民族が勇壮に駆け巡っていて、馬がいて狩をするための鷹がいる。鷹は、空を飛んでいる時に風を使って翼を大きく広げたり滑降したりしている。そういう鷹の目を通して大地を見ているような感じがしたのです。ロシアの国章に描かれている双頭の鷲も思い浮かびましたね。そんな崇高な鳥が風とともに舞っているイメージから『Wind Games』とタイトルをつけたのです。すでに第2楽章までは上演してはいるのですが、第2楽章は、オルガとセミョーンのソリスト2人によるパ・ド・ドゥにするなど、今回ほぼすべて作り直しより良い内容にしました。ですから、全曲通して上演する東京シティ・バレエ団による公演が、事実上『Wind Games』の世界初演となります」  東京シティ・バレエ団は、音楽を大切に考えるカンパニーであり、それはウヴェ・ショルツ振付の『ベートーヴェン交響曲第7番』や同じくショルツ振付でメンデルスゾーンの『弦楽八重奏曲変ホ長調作品20』を使用した『オクテット』を日本初演し、大成功を収め大事なレパートリーとしていることからもわかる。さらに2018年の創立50周年記念『白鳥の湖』(藤田嗣治の美術)公演では、指揮に大野和士、オーケストラに東京都交響楽団を迎えて3日間上演した実績もある。ちなみにこれまたビッグ・ニュースだが、今回のソリストであるスミルノワ&チュージンのペアで、この創立記念で上演した藤田嗣治の美術による『白鳥の湖』が同じく2020年7月に上演されることが決定している。  2020年はベートーヴェン生誕250年であると同時に、チャイコフスキー生誕180年というメモリアル・イヤーでもある。バレエ・カンパニーとしてはむしろチャイコフスキーの記念の年であることを意識したいところ。偶然かもしれないがメモリアル・イヤーにチャイコフスキーの『ヴァイオリン協奏曲』が使われていることも話題性が高い。小品ではなく、ヴァイオリンのヴィルトゥオーゾを存分に堪能できる「ヴァイオリン・コンチェルト」に挑むのだから、しかも三浦文彰がソリストを務めるのだから、音楽ファンとしても非常に気になるところだ。  シンフォニック・バレエのレパートリーをこうして増やしていく東京シティ・バレエ団のチャレンジ精神がどのようなパフォーマンスとして結実するのか、まだ見たことのない新しいバレエ、新しいチャイコフスキーがとても楽しみだ。取材・文:結城美穂子(エディター/音楽・舞踊ライター)   東京シティ・バレエ団『トリプル・ビル2020(仮)』 日時:2020年7月11日(土)/12日(日)開演時間未定 会場:ティアラこうとう大ホール 上演演目: 『WIND GAMES』振付:パトリック・ド・バナ 『レ・シルフィード』演出:石井清子(ミハイル・フォーキン振付による) 『バレエ・コンサート』 出演: オルガ・スミルノワ(ボリショイ・バレエ団プリンシパル) セミヨン・チュージン(ボリショイ・バレエ団プリンシパル) 三浦文彰(ヴァイオリニスト ※『WIND GAMES』のみ) 芸術監督:安逹悦子 指揮:井田勝大 演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団 筆者紹介 結城美穂子 Mihoko Yuki 出版社勤務を経てフリーランスのエディター/ライターとして活動中。クラシック音楽、バレエ、ダンスを得意ジャンルとする。バレエ・ダンス情報誌『ダンツァ』元編集長。単行本・ウェブマガジン・公演パンフレットの編集と執筆、またオペラ、バレエの初心者向け鑑賞ガイドのレクチャー講師を務める。

詳細はこちら

東京バレエ団の『くるみ割り人形』が37年ぶりに新制作!12月13日の初演を前に公開リハーサル&記者懇親会が開催

 東京バレエ団の『くるみ割り人形』が37年ぶりに新制作されることになり、12月13日より3キャストで上演される。同作は東京バレエ団にとってゆかりのある作品。母体であるチャイコフスキー記念東京バレエ学校が開校2年目に上演した演目が『くるみ割り人形』だった。そのバレエ学校は来年開校60周年、東京バレエ団は今年が創立55周年という大事な節目の年にあたり、メモリアル・イヤーの最後を飾る作品として新制作の『くるみ割り人形』を披露するという。  これまで東京バレエ団が上演してきた版は、当初はワイノーネン版だったようだが、長い年月を経て振付や演出も変わってきてしまったという。そのため、作品のクレジットの問題を解決する必要があるとともに、「現行の版の良い部分を残しつつ、より良い『くるみ割り人形』にしなければならないと思い、今回の新制作に踏み切った」(斎藤友佳理)  新制作では衣裳も舞台装置も一新。初演もまだだが、すでに来年の12月に再演することも決まっている。公演に先立ち、公開リハーサルと記者懇親会が行われた。取材・文:結城美穂子(エディター/音楽・舞踊ライター)   新演出のキーワードはクリスマスツリー  公開リハーサルでは、第2幕のディヴェルティスマンが披露された。続いて行われた記者懇親会には、斎藤友佳理芸術監督、初日の主役を務める川島麻実子、柄本弾が登壇。まず斎藤監督が新制作の大変さについて語った。 「時間が経つのは早くて、初日が近づくにつれ苦しいです。いいところは残しつつ、自分が踊っていた時に“こうだったらいいな”“こうやったらもっと分かりやすいだろう”と考えていたことを思い出しながらアレンジしています」  「言い訳ですが」と前置きして斎藤監督が話すバレエ団の活動は、大変な過密スケジュールだった。秋からだけでも、10月に勅使川原三郎に振り付けてもらった新作を含むトリプル・ビル公演、11月に子どものための『ドン・キホーテの夢』公演を6回4キャストで上演、札幌で中学生に向けて『白鳥の湖 第2幕』と『ボレロ』を上演し、そしてようやく『くるみ割り人形』に集中できるようになった状況だという。そもそも舞台や衣裳を新しく作るグランド・バレエの新制作に、実質1年しか時間がない中で取り組むのは驚異的だ。 「実際に作業をしてみて、ゼロから全く違う『くるみ割り人形』を創ればもっと簡単だろうなとつくづく感じています。なぜなら良い部分は残しながら手を加える、ということほど難しいことはなかったからです。東京バレエ団の良い部分を残しながら、どうやったらオリジナリティを前面に出せるか悩みました。全く新しい何かがここで誕生しなければ意味がないと考えながら、大きなもみの木で作ったクリスマスツリーを見ていたら、ツリーの中に首を突っ込んでみたら、と家族に言われたのです。実際に中を見てみたら違う世界があって、心の中が豊かになったような素敵な世界が広がっていました。クリスマスツリーの中ですべての物事が起きているようで、上に登っていきたいと思いました」  これが新演出のコンセプトが生まれるきっかけとなった。キーワードはクリスマスツリー。第2幕はツリーの頂点の少し手前でみんながツリーの中に入っていき、ディヴェルティスマンが繰り広げられる。最後のグラン・パ・ド・ドゥは一番上にあるお菓子の国に登っていって踊られる。このグラン・パ・ド・ドゥは斎藤芸術監督曰く「これ以外の振付は考えられない、というくらい好き」だそうで、他にも花のワルツの主だった部分に手は加えていないそうだ。  主役の2人は、不安はあると言いつつも新制作の初演を務めるワクワク感がじんわり伝わってきた。  マーシャ役の川島は「楽しみな気持ちが大きいです。マーシャ役は今回が2回目。前回は、マーシャの年齢が幼い少女からグラン・パ・ド・ドゥの時はいきなり大人になっていましたので、演じる上で戸惑いもありました。友佳理さんはいつも一緒に解決方法を考えてくれています。そのため、今回はすんなり心の成長の段階を踏んでいけました。各国の踊りも舞台上にいて見ることができるので、私のために踊ってくれているという感覚がありますし、友人役の人形たちが一緒にいて心の変化に寄り添ってくれます。ドロッセルマイヤーは影で守ってくれています。このようなマーシャの成長の様子を見守るあたたかい雰囲気が、舞台からみなさんに伝われば」と語った。  王子役の柄本は「初演ならではのことですが、自分たちが表現しやすいことを取り入れてもらったり、とりあえずやってみるなど、みんなで創っている感じが好きです。3組の主役ペアの振付は、それぞれ違いが出ています。今まで以上に思い入れの強い『くるみ割り人形』になると思いますし、いいものができあがると確信しています」とのこと。  新制作を舞台にかけるにはさまざまな困難が伴うもの。観客にはその苦労は計り知れないが、“新制作”という言葉には心躍るものがある。これから長く踊り継がれていくであろう新版の初演を大いに期待したい。 東京バレエ団 新制作 「くるみ割り人形」 https://www.nbs.or.jp/stages/2019/nuts/ 日時:2019年12月13日(金)19:00、14日(土)14:00、15日(日)14:00 会場:東京文化会館 出演: 12月13日(金)マーシャ:川島 麻実子/くるみ割り王子:柄本 弾 12月14日(土)マーシャ:沖 香菜子/くるみ割り王子:秋元 康臣 12月15日(日)マーシャ:秋山 瑛/くるみ割り王子:宮川 新大 音楽:ピョートル・チャイコフスキー 台本:マリウス・プティパ(E.T.Aホフマンの童話に基づく) 改訂演出/振付:斎藤友佳理(レフ・イワーノフ及びワシーリー・ワイノーネンに基づく) 舞台美術 :アンドレイ・ボイテンコ 装置・衣裳コンセプト:ニコライ・フョードロフ 指揮:井田勝大 演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団 児童合唱:NHK東京児童合唱団 筆者紹介 結城美穂子 Mihoko Yuki 出版社勤務を経てフリーランスのエディター/ライターとして活動中。クラシック音楽、バレエ、ダンスを得意ジャンルとする。バレエ・ダンス情報誌『ダンツァ』元編集長。単行本・ウェブマガジン・公演パンフレットの編集と執筆、またオペラ、バレエの初心者向け鑑賞ガイドのレクチャー講師を務める。

詳細はこちら

神奈川県立音楽堂でアルディッティ弦楽四重奏団とダンサー小㞍健太がコラボレーション!小㞍健太にその意気込みを聞いた

 世界に誇る名手が登場し至高の音楽を紹介する、神奈川県立音楽堂の「音楽堂ヴィルトゥオーゾ・シリーズ」。このシリーズに、アルディッティ弦楽四重奏団と小㞍健太が登場するということで注目が集まっている。今年で開館65周年を迎える日本初の音楽専用ホールである神奈川県立音楽堂に、ダンサーが登場することは大変珍しい。  アルディッティ弦楽四重奏団は、難解と思われている20世紀以降の作品を類まれなテクニックと深い作品解釈で演奏し、聴く者にスリリングな体験と新たな発見をもたらしてくれるカルテットとして絶大な人気を誇る。結成から40年あまり、彼らのために作られた作品も多数ある。そんな他の追随を許さない孤高のカルテットと、ネザーランド・ダンス・シアター(NDT)で活躍し、現在はソロとして活動しているダンサー・振付家の小㞍健太がどのようなコラボレーションを展開するのか、小㞍健太に話をうかがった。取材・文:結城美穂子(エディター/音楽・舞踊ライター) 衝撃を受けた、現代作曲家リームの楽曲 「アルディッティ弦楽四重奏団は、以前白井剛さんが共演されていたこともあり知っていましたが、交流はありません。生演奏でのソロの共演は機会が少ないので、是非にとお受けしました。候補曲の中からリームの作品を選びました。一番引っかかったんです。踊るとなるとどうなるかということを考える以前に、すごい衝撃を受けました。向き合いたくないほど難題だけれど気になってしまって」  コンサートでの上演予定4作品のうち、小㞍が登場するのは後半の2曲。ヴォルフガング・リームの『Geste zu Vedova ~ヴェドヴァを讃えて~』(2016年)と『弦楽四重奏曲第3番〈胸裡〉』(1976年)。リームは1952年、ドイツのカールスーエ生まれ、多作で録音も多く、現在も活動を続けるまさに現代作曲家だ。2作品は作曲年代が離れていることもあるが作風が異なる。これらを関連づけた構成にするとのこと。 「リームの作品はこれまで聴いたことはありませんでした。音楽学者の沼野雄司さんにリームは後期ロマン主義に続く新ロマン主義の作曲家であり、なぜそう言われているのか、ということと、さらに楽譜を見ながらリームの音楽の特徴を教えてもらいました。『ユニゾンがバラバラになってここで第1、第2ヴァイオリンに引き継がれまた一緒になる』、とか『不協和から透き通った音に変わるここの部分は重要』というように。音楽を聴いているだけでは限界があると感じたので、教えを受けることで創造の材料となる情報を得ることができました。最初は楽譜を目で追っていくのすら大変だったのですが、アドヴァイスをいただきながら楽譜を読み解いていくことで違う視点を得ることができ、音楽の印象や解釈が変わってきました」 舞台外のパフォーマンスがポイントに 「最初の『Geste zu Vedova~ヴェドヴァを讃えて~』は、近年の楽曲ということもあり、プログラマーと組んで現代的な手法で振付アイディアを取り入れたインスタレーションにするつもりです。また観客はコンサートホールでダンスに触れるわけですから、初めてダンスを見る方もいらっしゃるかもしれない。二部で僕が踊る前に是非ダンスに触れていただけたらと思い、観客のみなさんに近いところで動いて、私たちの存在を共有したいと考えています。後半の『第3番<胸裡>』は、 人が胸に秘めている感情をテーマに舞台上で展開するので、そうすることで、舞台にいる僕の表現を身近に感じていただけるかなと思っています」 「アルディッティのメンバーとは同じ空間に響く音楽でコラボレーションを目指します。彼らの呼吸で僕は音を予感できるし、もしかしたら彼らは本番でリハーサルとは違うことをしているかもしれない。その場で起きたことに対応する余地は残してあります。そういう予定調和でないことは大好きです」  コンテンポラリー・ダンスを教える機会も多い小㞍。自身はクラシック・バレエの基礎を身につけ、キャリアの最初はクラシック・バレエのダンサーとして活動していた。その後、コンテンポラリー・ダンスの作品のみを上演する、20世紀を代表する振付家、イリ・キリアンが芸術監督を務めるNDTへと飛び込み、コンテンポラリー・ダンスを踊るようになった。 「コンテンポラリー・ダンスを踊るダンサーは、身につけた何かしらのメソッドやバックグラウンドに反発してコンテンポラリーへとやってきます。ヨーロッパでは、コンテンポラリー・ダンスの元は主としてバレエ・テクニックと捉えられています。コンテンポラリー・ダンスは、自身が持つ下地(僕の場合はクラシック・バレエ)とは異なる身体性や表現を求めて枝分かれして新たなメソッドを生み、それを確立したり壊したりして探求している過程の姿だと僕は思います」  現代音楽とコンテンポラリー・ダンスは、それぞれクラシック音楽とクラシック・バレエが辿りついた現在の姿、ということになる。それぞれのジャンルの最先端に立つ生身のアーティストの邂逅という貴重な瞬間、そこで何が生まれるのか期待せずにはいられない。 アルディッティ弦楽四重奏団×小㞍健太(ダンス) 出演:アルディッティ弦楽四重奏団、小㞍健太 音楽堂ヴィルトゥオーゾ・シリーズ25 日時:2019年11月30日(土)15:00 会場:神奈川県立音楽堂 https://www.kanagawa-ongakudo.com/detail?id=35999 他都市公演 日時:2019年12月1日(日) 17:00 会場:愛知県芸術劇場 小ホール https://www-stage.aac.pref.aichi.jp/event/detail/000172.html 筆者紹介 結城美穂子 Mihoko Yuki 出版社勤務を経てフリーランスのエディター/ライターとして活動中。クラシック音楽、バレエ、ダンスを得意ジャンルとする。バレエ・ダンス情報誌『ダンツァ』元編集長。単行本・ウェブマガジン・公演パンフレットの編集と執筆、またオペラ、バレエの初心者向け鑑賞ガイドのレクチャー講師を務める。

詳細はこちら

映画『マシュー・ボーンIN CINEMA/白鳥の湖』が全国順次公開!公開を記念してバレエダンサー首藤康之のトークイベントが開催

 バレエ界の奇才、マシュー・ボーンが演出・振付を務めた『マシュー・ボーンIN CINEMA/白鳥の湖』が、10月25日(金)よりYEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開された。ローレンス・オリヴィエ賞を5回受賞、トニー賞の優秀振付賞と最優秀ミュージカル演出賞の両方を受賞した唯一のイギリス人、マシュー・ボーンの代表作『白鳥の湖』。数々の名作を独自の解釈で生まれ変わらせてきたマシュー・ボーンならではの“男性のスワン”というコンセプトは世界中の人々を魅了し、今年の7月に日本で公演された際にも完売が続出するほどの人気ぶりを見せた。そしてついに、その大傑作が映画館のスクリーンに舞い戻る。本作の公開を記念して、バレエダンサーの首藤康之とジャーナリストの佐藤友紀を迎えたトークイベントが行われた。 ダンスに重きを置いた新演出版  マシュー・ボーンの『白鳥の湖』に出演経験のある首藤が、初めて同作を観たのはレーザーディスクだったという。最初は到底踊れないと思ったそうだが、ある時から自分も出たいという思いが芽生え、実際に出演するきっかけとなったのが今回の対談相手の佐藤だった。首藤はその経緯について「佐藤さんのインタビューで仕事をしたい相手を聞かれてマシュー・ボーンと答えたら、その後、『ザ・カーマン』でマシュー・ボーンが来日したときに、佐藤さんがマシューに僕のことを話してくれて、対談をセッティングしてくれた。それがきっかけで『白鳥の湖』に出演することになった」と語った。また、『白鳥の湖』に何度も足を運んでいる佐藤は、マシュー・ボーンから「オフィシャル・ストーカー」と呼ばれたエピソードを語り、「この作品に携わる人たちは、自分が感動したからみんなに観せたいという熱意を原動力にやっている。これほど幸せな作品はない」と話した。  「多くの『白鳥の湖』があるが、これほど音楽で嗚咽が出る『白鳥の湖』はない。チャイコフスキーは本当はこういうものを表現したかったんじゃないかというものがそのまま形になっている」と2人が語るマシュー・ボーンの『白鳥の湖』。新演出版のみどころを聞かれた首藤は「毎回、マシューはダンサーに合わせて振り付けを変えているが、今回は大きく変わった印象。これまではアクトに重きを置いていたが、今回はダンスに重きを置いている」とコメント。  王子役のリアム・ムーアは12歳のときに『ビリー・エリオット』に出演してキャリアをスタートさせたが、当時、首藤も佐藤もその舞台を観ており、そのリアムが王子役として『白鳥の湖』に出演するようになったことに感慨深げ。  佐藤から『白鳥の湖』にまた出演する気はないかと聞かれた首藤は、「若い人に演じて欲しい」としながらも、執事役を演じるのはと聞かれると、「執事役ならいいかも」と笑って答え、世界で唯一、スワンと王子を演じた首藤が演じる執事が観られることに期待した客席からは拍手が巻き起こった。  奇才が創り上げた誰も観たことのない『白鳥の湖』を、是非この機会に映画館のスクリーンでご堪能いただきたい。 マシュー・ボーンIN CINEMA/白鳥の湖 https://matthewbournecinema.com/ 演出・振付:マシュー・ボーン 舞台・衣装デザイン:レズ・ブラザーストン 照明:ポール・コンスタンブル 音響:ケン・ハンプトン 音楽:ピョートル・チャイコフスキー 出演: スワン、ストレンジャー:ウィル・ボジアー 王子:リアム・ムーア 女王:ニコル・カベラ ガールフレンド:カトリーナ・リンドン 執事:グレン・グラハム 撮影:2019年サドラーウェルズ劇場 上映時間:127分(インターバルなし) 提供:MORE2SCREEN 配給:東北新社 配給協力:dbi inc. 10月25日(金)よりYEBISU GARDEN CINEMA(恵比寿ガーデンプレイス内)をはじめ全国順次公開

詳細はこちら

11月にミハイロフスキー劇場バレエで来日する人気バレリーナ、オクサーナ・ボンダレワにインタビュー

 ミハイロフスキー劇場バレエが、今年11月に4年ぶりとなる来日公演を行う。今回は『パリの炎』(ワイノーネン原典版)と『眠りの森の美女』(ナチョ・ドゥアト版)の2作品を上演し、どちらも日本初演だ。『パリの炎』で主役を踊るオクサーナ・ボンダレワに、公演にかける意気込みをうかがった。文:結城美穂子(エディター/音楽・舞踊ライター) インタビュー:石川了(舞踊ナビゲーター) 「ミハイロフスキー劇場バレエ」の、『今』をお披露目  サンクト・ペテルブルクを本拠地とするミハイロフスキー劇場バレエ。日本では「レニングラード国立バレエ」の名称で知られており、1981年に初めて来日して以来、2012年までに毎年年末に来日していた。日本のバレエ・ファンにとって身近で親しみのあるバレエ・カンパニーだ。  ミハイロフスキー劇場バレエは、ロシア・バレエの伝統を受け継ぐ古典作品を得意とする名門バレエ・カンパニーであるが、2011年にスペインの世界的振付家、ナチョ・ドゥアトが芸術監督に就任。2014年にベルリン国立バレエの芸術監督になることが決まり、ドゥアトはミハイロフスキー劇場バレエを去ってしまうのだが、2019年秋に再び戻ることになった。  今回の来日は、ドゥアトを再び迎えてのお披露目公演の意味合いもあり、いつにも増して熱い注目を集めている。 ナチョ・ドゥアト版『眠りの森の美女』も、ワイノーネン原典版『パリの炎』も日本初演  上演するのは、『パリの炎』と『眠りの森の美女』、それぞれ全幕の2作品。『眠り』はドゥアトがミハイロフスキー劇場バレエのために新たに演出・振付をした古典作品ということで大変話題になった。今回、待望の日本初演、しかもカラボスに御大ファルフ・ルジマトフが全公演出演する。鬼才ドゥアトが絢爛豪華な古典中の古典、『眠り』をどう振り付けたのか、自分の目で確かめることができる。  一方、『パリの炎』はガラ公演などでパ・ド・ドゥを見ることはあるものの、日本での全幕上演は滅多にないレアな作品。ワイノーネン原典版に基づくドラマティックなメッセレル版で、輝かしいソヴィエト時代のバレエをみることができる。こちらもうれしい日本初演だ。 昨年、待望の初来日を果たした人気バレリーナ、オクサーナ・ボンダレワ  オクサーナ・ボンダレワは、今回『パリの炎』で主役のジャンヌを踊る。  ボンダレワは、ウクライナ出身、ロシア国立バレエ・ラドチェンコでソリストとして活躍したのちに2009年、ミハイロフスキー劇場バレエにソリストとして移籍した。2017年にはマリインスキー・バレエに移籍、ファースト・ソリストとして活動していたが、現在はフリーランスになりガラ公演などに出演するため世界中を忙しく飛び回っている。  ミハイロフスキー劇場バレエを去ってからもこのカンパニーとの関係は良好で、2014年のミハイロフスキー劇場バレエのニューヨーク公演での『パリの炎』アメリカ初演にイワン・ワシーリエフとともに主演し、大成功を収めた。このニューヨーク公演では、レオニード・サラファーノフとともに『ドン・キホーテ』にも主演し、喝采を浴びた。  人気者ゆえ、文字通り世界中をかけ巡っており、日本の初来日は2018年、ミハイロフスキー劇場への出演が3度目の来日となる。今が旬で、周りにいる人をハッピーにするオーラで輝いているボンダレワ。-『パリの炎』での明るく元気なジャンヌが楽しみだ。 <公演概要> ミハイロフスキー劇場バレエ2019 https://www.koransha.com/ballet/mikhailovsky_ballet2019/ 「パリの炎」(全3幕) 作曲:ボリス・アサフィエフ 振付:ワシリー・ワイノーネン/改定振付:ミハイル・メッセレル 管弦楽:シアター オーケストラ トーキョー ●11/21(木)15:30  東京文化会館 大ホール アンジェリーナ・ヴォロンツォーワ(ジャンヌ)、イワン・ザイツェフ(フィリップ)、イリーナ・ペレン(ミレイユ)、ヴィクトル・レベデフ(ミストラル)、 ●11/21(木)19:30  東京文化会館 大ホール オクサーナ・ボンダレワ(ジャンヌ)、ジュリアン・マッケイ(フィリップ)、イリーナ・ペレン(ミレイユ)、ヴィクトル・レベデフ(ミストラル) 「眠りの森の美女」(全3幕プロローグ付) 作曲:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー 振付:ナチョ・ドゥアト 管弦楽:シアター オーケストラ トーキョー ●11/23(土)17:00  東京文化会館 大ホール イリーナ・ペレン(オーロラ姫)、ヴィクトル・レベデフ(王子)、ファルフ・ルジマトフ(カラボス) ●11/24(日)11:30  東京文化会館 大ホール アナスタシア・ソボレワ(オーロラ姫)、ヴィクトル・レベデフ(王子)、ファルフ・ルジマトフ(カラボス) ●11/24(日)16:00  東京文化会館 大ホール アンジェリーナ・ヴォロンツォーワ(オーロラ姫)、イワン・ザイツェフ(王子)、ファルフ・ルジマトフ(カラボス)   筆者紹介 結城美穂子 Mihoko Yuki 出版社勤務を経てフリーランスのエディター/ライターとして活動中。クラシック音楽、バレエ、ダンスを得意ジャンルとする。バレエ・ダンス情報誌『ダンツァ』元編集長。単行本・ウェブマガジン・公演パンフレットの編集と執筆、またオペラ、バレエの初心者向け鑑賞ガイドのレクチャー講師を務める。

詳細はこちら

program

article