サンフランシスコ・オペラ2009『ポーギーとベス』
San Francisco Opera: The Gershwins Porgy and Bess

『ラプソディ・イン・ブルー』『パリのアメリカ人』、そして『I Got Rhythm』『But Not For Me』『The Man I Love』など多くのスタンダードナンバーでも知られるアメリカの作曲家ジョージ・ガーシュウィン(1898-1937)が、死の2年前の1935年、ジャズや黒人音楽のイディオムを用いながら作曲したオペラ。現在では20世紀を代表するオペラとしての地位を確立していますが、オール黒人キャストのため、日本人にはなかなかお目にかかることが少ない作品でもあります。しかし、「サマータイム Summertime」「うちの人は逝ってしまった My Man's Gone Now」「くたびれもうけ I Got Plenty o' Nuttin'」「ベス、お前は俺のもの Bess, You Is My Woman Now」「アイ・ラブ・ユー、ポーギー I Loves You, Porgy」「そんなことはどうでもいいさ It Ain't Necessarily So」「おお主よ、出発します O Lawd, I'm On My Way」などジャンルを越えてカバーされている名曲の数々は、誰もが耳にしたことがあるはず。
舞台は1950年代のアメリカ合衆国サウス・カロライナ州チャールストン。貧しい黒人たちが住むキャットフィッシュ・ローで、クラウンが賭博中に人を殺して逃亡。彼の情婦ベスは足の不自由なポーギーと暮らし始めますが、ポーギーは彼女を取り戻しに来たクラウンを殺してしまいます。拘置所から戻ったポーギーは、留守中に麻薬密売人スポーティンライフと共にニューヨークへ旅立ったベスを見つけるため、不自由な足をおして数千キロ離れたニューヨークへと自らも旅立つのでした。
この番組は2009年6月サンフランシスコ歌劇場公演。メトロポリタン歌劇場でも活躍するバス・バリトン、エリック・オウェンズ演じるポーギーの絶唱は感動的。今注目のソプラノ、ラキタ・ミッチェルのベスは、声のみならず肉感的な見た目もぴったり。ションシー・パッカー演じるスポーティンライフやレスター・リンチ演じるクラウンなど悪役たちも魅力的。出演者全員がソウルフルで、ゴスペルのように歌い踊るパワフルな合唱は見もの。絶望と希望の涙のラストまで、ミュージカルファン、さらにはソウルミュージックファンにもたまらない。
指揮のジョン・デメインはヒューストン・オペラで経験を積み、ウィスコンシン州マディソンの歌劇場で芸術監督を務める実力派。人気女流演出家フランチェスカ・ザンベッロによる写実的な舞台は『ポーギーとベス』のイメージそのもの。会場は1951年サンフランシスコ講和条約が調印された由緒ある戦争記念オペラハウス。滅多にステージパフォーマンスを見ることができない『ポーギーとベス』の、まさに神髄を見る番組です。
[出演]エリック・オウェンズ(ポーギー/バス・バリトン)ラキタ・ミッチェル(ベス/ソプラノ)レスター・リンチ(クラウン/バリトン)ションシー・パッカー(スポーティンライフ/テノール)エンジェル・ブルー(クララ/ソプラノ)カレン・スラック(セリーナ/ソプラノ)アルテウィーズ・デヴォーン(マリア/アルト)エリック・グリーン(ジェイク/バリトン)マイケル・ブラッグ(ミンゴ/テノール)マイケル・オースティン(ロビンズ/テノール)カルヴィン・リー(ピーター/テノール)ケネス・オヴァートン(フレイジャー/バリトン)マレシャ・ジェシー(アニー/メゾ・ソプラノ)アンバー・マーカムズ(リリー/ソプラノ)サマンサ・マケルハニー(苺売り/メゾ・ソプラノ)アール・ヘイゼル(ジム/バリトン)ダレン・K・ストークス(葬儀屋/バリトン)フレデリック・マシューズ(ネルソン/テノール)アシュリー・ファートアリア(蟹売り/テノール)
[演目]ジョージ・ガーシュウィン:2幕のフォーク・オペラ『ポーギーとベス』[台本]エドワード・デュボーズ・ヘイワード&アイラ・ガーシュウィン[原作]エドワード・デュボーズ・ヘイワードの小説『ポーギー』を舞台化した作者自身と妻ドロシー・ヘイワードによる戯曲
[演出]フランチェスカ・ザンベッロ[装置]ピーター・J・デイヴィソン[衣裳]ポール・テイズウェル[照明]マーク・マッカロー[振付]デニ・セイヤーズ
[指揮]ジョン・デメイン[演奏]サンフランシスコ歌劇場管弦楽団及び同合唱団[合唱指揮]イアン・ロバートソン
[収録]2009年6月ウォー・メモリアル・オペラ・ハウス(サンフランシスコ)[映像監督]フランク・ザマコナ
■字幕/全2幕:約2時間41分
(c)Cory Weaver
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