チェチーリア・バルトリ「カストラートの運命」
Opfer und Verf?hrer Das Schicksal der Kastraten
チェチーリア・バルトリの歌唱を交えながら、17世紀にヨーロッパを席巻したカストラートたちの運命とその栄華に、歴史的・医学的・社会学的に迫るドキュメンタリー。
17世紀に隆盛を誇ったカストラート(去勢高音男声歌手)は、ファリネッリやカファレッリといったスーパースターの出現によって一世を風靡し、多くの作曲家が彼らを想定したオペラを書き残しました。変声期前の少年を去勢し、少年期の高声域を維持させ、本来女声の音域であるソプラノやアルトのパートを歌うカストラートは、その後ソプラノやアルトなどの女声歌手が台頭したことによって次第に忘れ去られていきましたが、時代考証が盛んになった近年、彼らの存在が再び脚光を浴びています。
この番組は、現代最高のメゾ・ソプラノの一人、チェチーリア・バルトリがカストラートのためのアリアを世界遺産のカゼルタ宮殿で歌った番組「チェチーリア・バルトリ『カストラートの芸術』」のドキュメンタリー版。時代考証に基づく再現ドラマ風の映像を交えながら、カストラートについて歴史的・医学的・社会学的に詳説します。史上最も有名なカストラート、ファリネッリ(本名:カルロ・ブロスキ)が歌う場面にバルトリの歌唱が重ねられ、彼女や泌尿器科医のコメントもカストラートについての多角的な視点を提供します。
一世を風靡したカストラートは、ほんの一握り。もともと教会や修道院の収入増を目的に始められたボーイソプラノ歌手の養成が、やがて利権が絡むカストラートの増産に発展したといい、実際、中心地ナポリでは毎年4000人もの男児が去勢を強いられました。主な「犠牲者」は孤児や貧困家庭の子どもで、手術や術後の合併症で命を落とした者、絶望し自殺した者、結局は能力不足で演奏家になれなかった者が大多数。カストラートとして活動できた者でさえ、性的葛藤や社会からの疎外、身体的異変などの問題を抱えていたといいます。
時代の寵児だったスター・カストラートたちのために書かれた最高に美しい音楽の背後に、多大な犠牲が払われていた・・・そのように語るバルトリの言葉は、まさに番組の原題『犠牲者として誘惑者として~カストラートたちの運命(VICTIMS & SEDUCERS THE FATE OF THE CASTRATI)』に通じていると言えるでしょう。
[出演]チェチーリア・バルトリ(メゾ・ソプラノ)マーティン・ハッツィンガー(泌尿器科医)ジョヴァンニ・アントニーニ(指揮者)イル・ジャルディーノ・アルモニコ[演目]ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル:歌劇『セルセ』~オンブラ・マイ・フ、ニコラ・アントニオ・ポルポラ:歌劇『シファーチェ』~「波の直中の船のように」/歌劇『アデライーデ』~「気高い水は」/歌劇『身分の知れたセミラーミデ』~「幾多の激情の腕の中」、リッカルド・ブロスキ:歌劇『アルタセルセ』~「私は振り乱される船のようだ」 [監督]クリスティーナ・トレッビ、シュテファン・シュナイダー[制作]2010年
■字幕/50分(番組枠)
(c)Stefan Schneider
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