ドキュメンタリー「ダニエル・バレンボイム~音楽の力」
Barenboim or The Power of Music

ベルリンで、ブエノスアイレスで、パレスチナ自治区で…。音楽を武器に戦い続ける75歳のバレンボイムの、60年以上におよぶ音楽人生を振り返る、価値あるドキュメンタリー。
ダニエル・バレンボイムは1942年アルゼンチン生まれのユダヤ人。天才ピアニストとして10代前半で世界デビュー。30代からは指揮活動にも幅を広げ、パリ、シカゴ、ミラノ、ベルリンのオーケストラや歌劇場などでトップのポストを歴任してきたスター音楽家です。一方で、少年期を過ごしたイスラエルの国籍を持つ彼は、パレスチナ問題でイスラエルの占領政策を厳しく批判してイスラエル政府と対立。自らの理想を音楽の世界で具現化すべく、イスラエルとパレスチナの若者たちの対話のための「バレンボイム=サイード・アカデミー」を創設するなど、真の平和を求め続ける偉大な音楽家でもあります。この番組では、2017年に75歳を迎えた彼の音楽人生を振り返り、真の平和のために闘う人間としての肖像を、さまざまな人々の証言を交えながら追ってゆきます。
番組は、2017年春にベルリンにオープンしたコンサートホール「ピエール・ブーレーズ・ザール」での、シューベルトのピアノ・ソナタ全曲演奏会のバレンボイムの姿から始まります。この新ホールを含む「バレンボイム=サイード・アカデミー」は、バレンボイムがパレスチナ系米国人文学研究家のエドワード・サイードとともに、イスラエルとパレスチナの若い演奏家たちをメンバーに創設した「ウェスト=イースタン・ディヴァン・オーケストラ」(ゲーテの『西東詩集』に由来する名称)が発展したもの。中東地域の共存の架け橋ともいうべき組織です。
ウェスト=イースタン・ディヴァン・オーケストラが1999年にドイツのワイマールで結成された際のベートーヴェンの交響曲第7番や、2005年に彼らが初めてパレスチナ自治区ラマッラーでコンサートを開いた際の様子が映し出されますが(厳戒態勢のなか、パトカーに先導されて集まるメンバーたち!)、同時に、彼らを取り巻く環境が、年々けっして楽観できなくなっていることも語られます。2017年には、オーケストラは呼ばれず、バレンボイムが一人でラマッラーを訪れ、現地の若者たちを指導せざるを得ませんでした。しかしバレンボイムはけっして諦めることはありません。
2014年以来、バレンボイムの故郷ブエノスアイレスでのウェスト=イースタン・ディヴァン・オーケストラのコンサートは恒例です。人種や信仰の異なる他者を柔軟に受け入れるというバレンボイムの思考は、この地の思想・風土のなかで培われたようです。バレンボイムが生まれた当時、アルゼンチンには、アメリカ、ロシアに次ぐ世界第3の規模のユダヤ人コミュニティがありました。そしてタンゴ。アルゼンチンの人々にとっては、タンゴとクラシック音楽の間に隔たりはなく、「クラシック」でも「タンゴ」でもない、「音楽」がそこにあるだけなのです。番組では、2014年に同地で、同郷の幼馴染マルタ・アルゲリッチとコンサートを行なった際に、かつて二人が遊んだブエノスアイレスのアパートを「アポなし訪問」する、貴重なオフショットも紹介しています。
音楽ですべての暴力や争いが解決することはないでしょう。しかし音楽は音楽のためだけにあるのではありません。パレスチナ系の故エドワード・サイードがユダヤ人のバレンボイムと対話し盟友となったのも、そこに音楽が媒介していたからこそです。音楽は無力ではありません。現実から目を背けず、不合理な暴力に毅然と立ち向かってこそ、音楽の力が露わとなることを、バレンボイムが教えてくれます。
[出演]ダニエル・バレンボイム(指揮者、ピアニスト)エドワード・サイード(文学研究家)マリアム・サイード(サイード未亡人)エレーナ・バシュキロワ(ピアニスト/バレンボイム夫人)マイケル・バレンボイム(ヴァイオリニスト/次男)デイヴィッド・バレンボイム(音楽プロデューサー/長男)マルタ・アルゲリッチ(ピアニスト)ヴァルトラウト・マイアー(メゾ・ソプラノ)ズービン・メータ(指揮者)マリス・ヤンソンス(指揮者)ティメ・クレイフィ(ヴァイオリン奏者)ナシブ・アマディエ(チェロ奏者)アロン・ストーラー(トロンボーン奏者)キアン・ソルタニ(チェロ奏者)マティアス・グランダー(クラリネット奏者)マティアス・シュルツ(ベルリン州立歌劇場次期芸術監督)ヴィム・ヴェンダース(映画監督)[脚本&監督]ザビーネ・シャルナグル[制作]2017年
■字幕/1時間40分(番組枠)
(c)Daniel Barenboim private archive/Sarah Segner/www.danielbarenboim.com
放送日時 | 開始時刻 | 放送時間 |
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2019年2月3日(日) | 21:00 | 100 分 |
2019年2月4日(月) | 22:15 | 100 分 |
2019年2月5日(火) | 17:55 | 100 分 |
2019年2月6日(水) | 14:50 | 100 分 |
2019年2月7日(木) | 10:45 | 100 分 |
2019年2月8日(金) | 07:15 | 100 分 |
2019年2月9日(土) | 19:20 | 100 分 |
2019年2月17日(日) | 19:20 | 100 分 |